●7 DAYS LOVERS 11●


「…ん…―」

強引に唇を挟んでついばんでくる。

―嫌だ…。

こんな無理やり…。

絶対に応えてやるもんか…!

ぎゅっと唇をつむったまま眼も閉ざした。

それなのに舌でこじあけてきたので、首を振って顔を反らす。

「いや…だっ!離せ…!」

そう言いながら少し視線を進藤の方に向けると――

さっきよりもすごい形相で僕を睨んでいた。

思わずビクリと肩が震える。



…進藤…?



「はぁ…」

ため息をつかれ、進藤が立ち上がった。

机の上に置いてあった先ほどのコンビニの袋から何かを取り出している。

やめてくれるのだろうか…?

そう思って体を起こそうとした瞬間―

戻ってきた進藤の手がパジャマにかかり、抗う隙もなく乱暴に剥がされていった。

「えっ…?ちょ…っ…」

横たわっていた腰の下に腕が回って持ち上げられ、ズボンも下着もうざったそうに引き下ろされた。

「…っ」

あまりに突然のことで唖然として何も言えないまま、両足から引き抜かれて全裸の体を晒される。

あわてて隠そうと体を横にしようとしたけれど、両腕を頭の横に押さえつけられて、またのし掛かられた―。




――え?




いきなり両脚の間に手を差し込まれ、そこにぬるりとした感触を塗り込まれる―。


何、これ…?


驚いてる僕の顔をチラっと見て、手に持っていたものを布団の外に置いた。

ハンドクリーム…?

これはさっき進藤がコンビニで買っていたものだ。

こんなことに使うために…?

「―…んっ…!」

冷たく濡れた感触とともに、指が奥まで入ってきた。

そこを強引に掻き回されて、体が強張る…。

…怖い…。

怖いのは前も同じだったけど、今は…別の怖さだ。

「し…ん…どう…?」

恐る恐る見上げると―

押さえつけられて、噛み付くようなキスをされた。

思わず肩がビクリと揺れる。

「――…!」

唇が離れたかと思うと―左膝を掴まれた。

もう片方の膝を外側に追いやられ、進藤の体が両脚の間に分け入ってくる。

「―…っ…」

ろくに慣らされていないのにいきなり押し入れられて…唇を噛みしめた―。

痛…い…。

きつくて入り口のあたりでもう無理だと思うのに…抱きかかえた腰を引き寄せながら揺らして、中へと突き入れられていく―。

あまりの痛さに涙で視界が滲んだ。

体を進められる度に鈍い痛みが這い上がってきて―

耐えられない…。

「…う…っ…」

無理やり根元まで全部押し込まれて、身動きが出来なかった…。

涙の中で進藤と眼があって、すぐに目を逸らす。

「塔矢…オレのこと好き…?」

この状況で何を言うんだ…!

嫌いだ!

君の何もかもが大嫌いだ!!

口は動かなかったけど、首を横に振った。

進藤が唇を噛み締める。

「好きだって…言えよ」

絶対言わない…!

僕の方もぎゅっと唇を噛み締めて、進藤を睨み付けた。

「…言って、くれ…」

だんだん縋るような声で…僕の胸に顔を埋めた。



進藤…?



そのまましばらく動かないと思ったら、いきなり起き上がって―腰を動かし始めた。

「―…い…っ…」

強引に何度も上下に擦られて、激痛が走る。

激しく体が揺らされて、息がつまり―意識が朦朧としてきた…。

塗り付けられたものが、中で湿った音を立てているのが聞こえた。

いつもは慣らされた後にされる行為が―


―いかに進藤を追い詰めているのかが分かる。



―でも

そうさせているのは僕自身だ…。




しばらく動かれ続けて、熱が中で溢れるのを感じた。

進藤が荒い呼吸のまま…抜くこともなく―そのままの状態で下を向いている。


「何やってんだ…オレ…」

消え入りそうな声で言ったのがかすかに聞こえた。

髪で眼は隠れて見えないが…頬に涙が垂れている。

「進藤…?」

その頬に手を伸ばすと、その手を取られてぎゅっと握りしめられ…キスされた。

「塔矢…好きだ…」

「…うん」

「オマエのこと…一番大事にしなきゃ…いけなかった…のに…」

手に口付けしている瞳が、苦しげに閉じられていて―後悔の涙が溢れている…。

「―…ごめん…」

そう謝られた瞬間、心のなかにあったもやもやが…怒りが…すべて消えてしまった気がした―。

「―…僕も…ごめん…」

意地になってた…。

進藤の目がちょっと驚いたように見開いて…優しく笑ってくれた。

―そして

顔を近付けて来て、唇が落ちてきた―。

「…塔矢―」

好きだと伝えたくてたまらないように、何度もついばんで触れてくる。

頬にも唇の横にも、口付けがされて―。

「ん…」

僕の方からもキスを返すと、また深く塞がれ…お互い舌をからめあった。

すごく幸せな気分だ…。



―ただ…



進藤が抱き締め直す度に、繋がったままのそこから疼きが走る。

ずっとそのままの状態でいたから、自然となじんできてしまい、痛みも遠のいて進藤の動きに敏感になっている。

「―…あ…っ…」

キスの間に漏れる喘ぎ声に気付いた進藤は、ゆっくり動き始めてくれた―。

これ以上僕の体を傷つけないように、快楽に導くことだけに集中して―。

「―…塔矢…」

この甘い声で呼ばれるのが大好きだ…。

「…んっ…、あ…」

僕の反応を見ながらゆっくりと体を動かして…探り当てたそこを集中的に押し当てられる。

「んっ…ん―」

小刻みに体が震えて―熱がようやく外に出た。





「…塔矢、本当にごめんな…」

お互い横になって、進藤が僕の髪をいじりながら口を開いた。

「オレ…独占欲強すぎんのかも…。オマエが他の奴の話するだけでもイライラして…」

「……」

「いつも自分の立場忘れちまう…。オマエは別にオレのもんじゃないのにな…。ちょっとオマエが触らせてくれたからって…いい気になって…」

その言葉に正直…、複雑な気分になる…。

僕だってキミを…独占したいから…。

でも果たしてそれがキミの囲碁なのか…キミ自身なのか…分からない―。

「オレ…お前のことが本当に好き…。それだけは覚えといて…」

そう言うと軽く唇を合わせてきて、眠ってしまった―。

やっぱり君の寝顔は可愛いな…。

無性にキスしたくなる。



「……」



そっと唇を合わせてみた。

「僕もキミが好きだよ…」









ガバっと体を起こした。

僕…


今…


なんて…

「ん…?塔矢ー…?」

進藤が起きかける。

「キミは寝ていろ!」

あわててバサッと上布団を進藤の頭までかけて、僕は布団を出た。

僕、今なんて言った…?

顔がたちまち赤くなっていく。

嘘だ!

別に僕は進藤のことなんか…!

僕は彼の碁が好きなだけだ!

彼…?

その言葉にますます赤くなっていく。

進藤は…僕が望めば付き合ってくれるのだろうか…。

いや、僕はそんなこと別に望んでないけど!

でも…。


色々考えているうちに、進藤の眠っている布団には戻れなくなった。

今日は…客間で寝よう…。

移動している間もさっきのことがどうしても頭をよぎってしまった。


僕は…


進藤のことが好きなんだろうか…。



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