●YOUR HOUSE, YOUR ROOM 3●


「ただいま〜」

進藤の家に着いた時には既に8時半を回っていたのに、家の中は真っ暗だった。

「進藤…家の人は?」

「父さんはいつも遅くてさ、帰ってくるのは10時過ぎるんだ」

「……」

「母さんは同窓会。もうすぐ帰ってくると思うけど―」

「…そう」


「オレの部屋2階だから」

「……」


「塔矢、早くこいよ」

「…あぁ」


僕が部屋に入ると進藤が鍵をかける音がした。

「何して…」

「ん?対局途中に邪魔されたら嫌だしさ」

「……」

「じゃ、打とうぜ」

「…あぁ」

部屋の真ん中に置いてある碁盤の前にそうっと座った。

碁笥を手元に下ろして、蓋を開けようとしたら――久々に手から蓋が滑り落ちた。

手が震えてる…。

「2年4ヶ月ぶり…」

「…え?」

「オマエがそれするの見たの」

一気に顔が真っ赤になってしまった。

「緊張してる?」

「……」

「そうだよなぁ…これから朝まで男と二人っきりだもんな〜」

「……でも、キミは何もしないって言ったよね…?」

「んー?そうだっけ?」

「…進藤っ!」

進藤は碁盤の前ではなく、ベッドにゆっくり腰掛けた。

「これがあかりだったらさ、空気みたいなもんだし、何もしない可能性はあるかもな」

「……」

「でもオマエにとって幸か不幸かは知らねぇけど、オレは好きな奴を目の前にして何もしないほどヤボじゃねーし、我慢出来るほど人間も出来てない」

「……」

「そりゃ本気でオマエが嫌なら考るけどさ、塔矢は…本当はオレのことどう思ってんの?」

「…それは―」

「オレとあかりの会話盗み聞きしてさ、一体どこにいたんだか」

「……」

「んで、アイツに嫉妬かよ」


嫉妬…?


そうか…、僕は彼女に嫉妬してたのかもしれない…。

だからあんなにムキになって――

「本当はアイツと付き合ってほしくなんかねぇんだろ?」

「………うん」

小さく返事をすると、進藤がほっとしたように顔を少し緩めた。

「キミが他の女の子と付き合うのは嫌だ…。部屋に招くのも嫌―」

「もうオマエ以外誰も入れねぇよ…」

「下の名前で呼ぶのも…嫌だ」

何て我が儘言ってるんだろう…。

僕の存在があってもなくても、キミと彼女の関係は変わらないのに―

「…じゃ、今度からアイツのことも名字で呼ぶよ」

「いや!いいんだ…別にそこまでしてほしくない―。…ただキミが藤崎さんのことをあかりあかりって連呼するから―」

いや、彼女のことを話題に出してるのは僕の方なのに…何を言ってるんだ―。

「じゃあ…オマエのことも名前で呼ぶことにするよ…」

いつの間にか僕の背後に回っていた進藤は、そうっと後ろから抱き締めて――耳元でそう囁いた。

「アキラ…キスしてもいい?」

アキラと名前で呼ばれたことに反応したのか、それともキスしようと言われたことに驚いたのか…僕の顔は首から耳まで真っ赤になってしまった。

進藤の顔がゆっくり近付いてくる――

「アキラ…」

「―…ん……」

唇が優しく重なった。

気になって仕方なかったキミとの…大好きなキミとの――初めてのキス。

そっと触れただけの唇はすぐに離れて…、再び重なった唇は何度もついばんで…徐々に深く交わっていった―。

彼の舌が入ってきて…口内を探られて――舌をからめられる。

「…ふ…、…ん―」

進藤の手が僕を抱き締めて来て…体がますます熱くなっていったのが分かった―。


「…は…ぁ…はぁ…―」

長いキスに、唇が離れた途端、息があがってしまう。

彼の息もうっすら僕に触れている。

「アキラ…好きだよ」

「…うん」

そう言いながら更にぎゅっと抱き締めてきた。

「オマエは…?オレのこと、どう思ってる?」

「…ん、好き…だよ」


大好き―。


「…ぁ…―」

進藤の唇が僕の首に吸い付いてきた。

そのまま首筋を舌でなぞられて……手が僕の胸に触れてきた―。

「…ん…―」

優しく揉まれて…服の上から煽られていく―。

「アキラ…」

彼の体が僕から離れて、右手を引っ張られ…ベッドに上がるよう促された。

大人しくそれに従い、ベッドに上がった途端――再び深いキスが落とされた。

「…ん…っ―」

同時に制服の上着を脱がされて、ベストのボタンに―リボンも解かれていく―。


進藤…本当にするつもりなんだ…。

僕も覚悟を決めよう…。

だけど――


「…ね、電気消してもらっていい…?」

「ん?あぁ、いいぜ…」

一旦体を離され、彼が電気の紐に手をかけた。

一度目で少し暗く、二度目で豆電球に。

「これでいい…?真っ暗にしちまったら全く見えねぇし―」

「う…うん。ありがとう」

進藤がまたベッドに乗って――僕の手に触れた。

指に優しくキスをされる―。

「アキラ…、緊張してる…?」

「…うん」

「オレも…」

へへっとニッコリ可愛く笑われた。

「でもすげぇ嬉しい…」

もう一度軽く唇にキスをされて、脱がしかけの制服に再び触れてきた。

腕と頭を通して上服を脱がされ、続けてキャミソールも同じように頭を通される―。

スカートのホックも外されて…脚を通され、身に着けてるものが下着だけになったところで、進藤の方もシャツを脱ぎ捨てた。

彼の胸板を目の当たりにして、つい目をそらしてしまった。

何だかものすごく恥ずかしい…。

「アキラ…―」

ぎゅっと抱きつかれ――そのままゆっくりと体を倒された――。










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