●You are me, I am you 5●







ゲッソリ。
そんな感じだ。
進藤と一緒にお風呂に入ったせいで、とんでもない目にあってしまった。
もう裸なんてどうでもよくなってきた。
明日からは絶対に一人で入ってもらおう。


「塔矢〜髪乾かしてくれよ。長すぎて疲れた」

進藤がドライヤーを持って、ソファーにゲッソリと凭れ掛かっていた僕の元にやってきた。

「じゃあ座って」
「おう」

自分の大事な髪だし、仕方なく乾かしてあげた。

「何で髪伸ばしたんだよ?昔のオカッパぐらいならオレにだって簡単に乾かせたのに」
「外見ぐらい女の子っぽくした方がいいと思ったから…」
「それなら髪よりまず、その『僕』を直した方がいいんじゃねー?」
「直らないんだ…なかなか。『私』なんて言ってる自分が気持ち悪い」
「はは。ま、オマエは『僕』でいいか。そっちの方が塔矢らしいし」
「……」



髪を乾かし終えると、既に10時を回っていた。
なのに全然眠くないのは進藤の体だから?
反対に進藤は眠そうだ。

「うー…まだ10時なのに何でこんなに眠いんだ?」
「僕の体は10時就寝6時起床に慣れてるから」
「6時??ありえねー」

よろよろと寝室に向かっていったので、僕も付いていった。

「居候はソファーで寝ろよ」
「嫌だよ。硬くて寝れないし、風邪ひいたら困るのはキミの体だよ?」
「はぁ…分かったって」

結局進藤が右、僕が左で寝ることになった。
久しぶりのベッドだからちょっと嬉しい。

「もう電気消すな。お休みぃー…」
「ああ。お休み」

さすが僕の体だ。
進藤は横になって10秒で寝息が聞こえてきた。
でも僕は目が冴えて全然寝れそうにないんですけど…。

…あ、いけない。
家に連絡してない。
ま…いいか。
もう両親も寝てるはずだし、明日ちゃんと話しに帰ろう。
服や着替えも必要だしね。









「塔矢〜塔矢ぁ〜、起きろよ〜」
「……ん?進藤…?」
「マジで6時に目が覚めちまったんだけど。責任取ってオマエも起きろよ」
「……眠い。全く、キミはいつも何時に起きてるんだ?」
「手合いのない日は9時とか。10時かも」
「……そう」

次の日になっても、やっぱり入れ替わったまま。
はぁ…と溜め息を吐きながら、まだ眠い体を何とか起こし、進藤と顔を洗いに行った。


「今日、手合い終わったら一緒に僕の家に行こう。着替えも持ってきたいし、両親にも説明しなきゃいけないし」
「何て説明すんだよ?付き合いだしたから、一緒に住むって?何かそれ後々面倒なことになりそうだから、もう正直に入れ代わりましたって言っちゃった方がよくねぇ?」
「うん…そうかもしれないね」

それより問題は今日の対局だ。
緒方さん相手にどう乗り切ろう。
僕も進藤も、今まで公式戦でもプライベートでも数え切れないぐらい緒方さんとは打った。
当然まともに打てば、打ち方ですぐに中身が進藤だってバレるだろう。
緒方さんにも話した方がいいのだろうか。
あんまり広めたくはないんだが…。

「昨日言った通り、今日はちゃんと僕の打ち方で打ってね?」
「任せとけって。オマエのクセとか好みは一応熟知してるつもりだし」
「…そう」
「ま、切羽詰ってきたら、形振り構っていられなくなりそうだけどな。やっぱ負けるのは悔しいじゃん。バレたらゴメン」
「その時はその時だ。仕方ないよ」
「それより服!どうするんだよ〜。まさか昨日着てたこのワンピースで打てと?」
「あ…そうか。じゃあ先に帰った方がいいかな」

タイトル戦はいつもスーツの僕。
仕方なく予定変更して、先に実家に帰ることにした――











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