●You are me, I am you 3●





ありえないありえないありえない……
どうして僕が進藤に…!!





「どこ行くんだ?」
「どこって……トイレだけど?」


いやあぁぁ!!


「行くな!やめて!エッチ!」
すぐさま僕は進藤の腕を引っ張り、それを阻止した。
「はぁ?行かないと漏れるし」
「だって…」
「心配しなくても女の体なんて見飽きてるから。今更何とも思わねーよ」
「でも…」
僕の手を振りきって、進藤はトイレに入ってしまった。

うう…
まだ誰にも…彼氏にも見せたことのない体なのに…どうして進藤なんかに……
羞恥プレイもいいところだ!



「あ〜スッキリした〜」
「進藤っ!僕はそんなはしたないことは言わない!言葉遣いに気をつけろ!」
「いいじゃん、オレらしかいないんだし」
「僕の姿で言われると気になるんだ!」
「へいへい」

僕はそんな適当な返事もしない!…とも言ってやりたかったが、何とか堪えた。
はぁ…このままだと明日からかなり不安だ。
しかも明日は緒方さんとの対局。
下手したらバレるだろう。
…いや、この際正直に周りに話してしまった方が楽なんじゃないのか?


―――彼氏にも?



「おーい、塔矢。携帯鳴ってるぞー」
「え?ああ…すまない」

慌ててソファー横に置いたバッグから携帯を取り出した。
着信……彼からだ。

「出ねぇの?」
「…出れるわけないだろう。今はキミの声なんだから…」
「ふーん。じゃあオレが出てやるよ」
「は?」
ひょいっと進藤に携帯を奪われた。
取り返す間もなく、ピッと通話ボタンを押されてしまう。
進藤?!

「もしもし?アキラでーす」
ちょ、僕はそんなブリブリ声じゃないぞ?!
『アキラちゃん?直弥だけど』
「直弥さん?」
『この前さ、遊園地に行ったことないって確か言ってたよね?同僚の人が余ってるパスを2枚くれたんだ。今度の休み一緒に行かない?』
「…嘘くせー」
「進藤!!」
『あれ?誰か横にいる?』
「あ、うん。今まだ碁会所だから。でもごめんなさーい、ちょっと忙しくてしばらく会えそうにないの。じゃあね」

ピッ

な…なななな
あまりの失礼さに愕然となってしまった。

「進藤…っ!信じられない!せっかくの直弥さんからの誘いを…!」
「バーカ。その格好で会うつもりかよ。言っとくけど、オレが代わりに野郎とデートなんか絶っ対に御免だからな!」
「断るにしても、もう少し言い方があるだろう!」
「あんまり話してるとボロがでるじゃん」
「だからって……」

床に脱力してしまった。
はぁ…やっぱり本当のことを話すべきなのだろうか…。
いや、忙しい直弥さんに余計な心配はかけたくない。
他の女の子と入れ代わったのならまだしも、男と入れ代わっただなんて…絶対に言えない……



ピンポーン

続いてチャイムが鳴った。

「塔矢、誰か来たぜ」
「…キミの部屋だろう?」
「今の進藤ヒカルはオ・マ・エ」
「…もう!」

面倒くさい!!

ドタドタと玄関に向かった僕は、怒りにまかせて玄関のドアをバンッと乱暴に開けた。

「はい?どちら様…」

ドアの向こうに立ってたのは20歳そこそこの可愛い女の子だった。
……誰?

「遊びに来ちゃった。入ってもいい?」
「え…」

て言われても…どうすればいいんだ?
進藤の友達なのかな…?

「ヒカル?」
「ちょ、ちょっと待ってて」

慌てて進藤のところに戻った。

「進藤!何か女の子が来たんだけど、どうしよう」
「女?誰?」
「知らないよ。キミの知り合いだろう?とにかく来てよ」
「えー?面倒くせぇ…」
「本当はキミのお客さんだろう!」
「はいはい」

ごねる進藤を引っ張って玄関に戻ると、進藤とその子は同時に目を見開いた――

「げ…愛李」

愛李って誰?
あ、もしかして彼女か?

「ヒカル、誰よこの女!」

って僕に言われても…

「えっと…同僚」

と、とりあえず答えてみる。

「嘘つき!どうせ浮気してたんでしょ!最っ低っ!」

パンッと僕の頬を思いっきり叩いて、彼女は去って行った。


な…ななななんで僕がこんな目に…


「もう!どうして僕が叩かれなくちゃならないんだ!」
「はは…大丈夫か?」

笑ってくる彼を睨んだ。

「キミの彼女だろう?!いいのか?追い掛けなくて!」
「あー…いいよ。別れるつもりだったし。手間が省けた」
「なにそれ…」
「何か疲れたな。もう風呂入って寝ようかな」
「やめてーーっ!!!」


このままじゃ僕の人生めちゃくちゃだ!!

誰か助けて〜〜〜っ!!










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