●WILLFUL PRINCESS 7●
おい…
今こいつ何つった?
オレにだったら抱かれてもいい…?
オレ?
それって……オレだけって意味か?
「あー…塔矢」
「何?」
「オマエ昨日…検討と貞操だったら検討を取るって言ったよな?」
「言ったよ。今日だって同じ気持ちだ」
「それって……オレとの検討限定?」
「どういう意味だ?」
「つまり…な、例えば芦原さんとの検討と貞操だったらどっちを取る?」
「貞操に決まってる」
「じゃあ……緒方さんとの検討と貞操」
「僕は緒方さんと検討するのも好きだけど…貞操の方が大事だ」
「じゃあ永夏との検討とは?」
「永夏?うーん…検討もしたいが、貞操をなくしてもいい程では…」
「何だよ、オマエ結構身持ち固いじゃん」
「当然だ!だけどキミとの対局や検討は僕にとっては何物にも代えられないんだ!」
「つまり…オレとの場合だけ検討を取ると」
「そうだ」
嬉しいんだけど何かしっくりこないな…。
「…じゃあさ、もしオレが…検討ナシでオマエん家に行ったらどうする?」
「え?検討しないのか?じゃあ何しに来るんだ?」
「もちろん抱くためだけに―」
「……」
あれ?
困ってる?
考えてる?
「キミは……好きな人じゃなくても抱けるって言ってたな?」
「ああ」
「つまり僕も好きじゃないんだ…?」
「……」
そうなんだよ。
そこが問題なんだよ。
オレは塔矢を好きじゃない……のか?
こいつはライバルだから出来ればそういう感情は持ちたくない。
だけどライバルということを抜きにして、一人の女として見たら………
――誰よりも好きだ――
「…オレのことはどうでもいいんだよ。要はオマエがオレの対局や検討を抜きにしても、オレに抱かれてくれるのかどうかが知りたいんだ」
「打つついでにキミに抱かれるのは構わない。だってキミは僕が横で寝ていたら我慢出来ないんだろう?だけど…碁を打たないのにその為だけに来るのは……変だ。だって僕らは付き合っていない」
「それもそうだな。じゃあ質問を変えるよ。塔矢はオレのこと好き?一人の男として―」
「え…?」
塔矢の顔がたちまち真っ赤に染まっていった。
「キ、キミはライバルだ!」
「そうなんだけどさ、それを抜きにして考えてよ」
「………」
しばらく沈黙が続いた。
ここまで悩むってことは…オレのこと好きじゃねーのかもな…。
何かガックリだぜ。
だから嫌だったんだよ。
ライバルと恋愛事で悩むのは――ごめんだ。
「…もういいよ、塔矢」
「え…?」
「ごめんな、困らせて。今の質問は忘れてくれ」
「…うん」
「いいよ、オマエん家で検討しよう」
「うん」
こいつは男の部屋には行かないって約束してくれたし、他の奴だと貞操の方が大事だってさ。
それって取りあえずは他の奴とはしないってことだよな。
んでオレには碁ついでなら抱かれてもいいってさ。
じゃ、遠慮なく利用させてもらうぜ。
彼女を作るのはやめだ。
オレが彼女を作ってたのは捌け口が欲しかったからだし。
別に彼女達を愛してたわけじゃない。
実際ウザくなってきたらすぐに別れてたしな―。
だから塔矢にはそいつらの代わりをしてもらおうじゃねーの。
オレ的には万々歳。
あのくだらねぇ恋愛ごっこをしなくていいし、金もかからねぇし、オレは塔矢を好きだから気持ち的にも満たされるしな―。
「―…ん…っ…」
検討の後――風呂に入るのも後回しにして、すぐさまキスをした―。
それに答えてくれる塔矢―。
オマエ知ってる?
まだ12時にもなってないんだぜ?
電車はまだまだ動いてる。
だけどオレは帰らないからな。
――オマエを抱き終わるまで――
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