●WEDDING NIGHT 1●
結婚式前日までは実家で暮らしていた塔矢だけど、式が終わった今日からオレのマンションで一緒に住むことになった。
「一人で住むには広過ぎたから調度よかったんだけど…ま、今の棋聖リーグが終わって落ち着いてきたらまた引っ越ししようぜ」
「そうだね。せっかくだから碁を打つ専用の和室が欲しいな」
「じゃあオマエの部屋も合わせて、和室が二部屋ある物件を探すか」
新婚なのに夫婦別室?って気もするが、お互い一人で勉強する場所も必要だからな。
今のこのマンションは2LDKなので、取りあえずオレの部屋と塔矢の部屋、としてみた。
「進藤、今日はその…いわゆる初夜だけど、結婚式で疲れちゃったから…別々に寝ていい?」
「塔矢〜、オレらは囲碁婚したわけじゃないんだぜ?しばらくは一緒に寝るのに決まってんじゃん」
「明日からはちゃんと寝るから…」
「ダメ〜。こういうのは最初が肝心だからな。でないとオマエずるずる逃げそうだし」
「……」
――そう
実はオレらはまだ一度も体の関係を持っていなかったりする。
婚約してからずっと結婚式の準備に追われていたせいだ。
今夜は本当の意味での初夜。
そして塔矢は男性経験さえ一度もないみたいで、隠しているがかなり緊張して強張ってる様子。
だからここで決めなかったら、ずっと逃げられそうな気がする。
囲碁婚になることだけは避けたい―。
「今日はオレの部屋で寝てくれよな…?」
「……分かったよ」
溜め息を吐きながらも、なんとか了解してくれた。
早速手を引っ張って部屋に向ってみる。
ドアを開けて部屋に招くと、強張るどころか血の気が少しひいてる塔矢の顔が伺えた。
…大丈夫か?
「えっと…、そんなに緊張しなくてもさ、そんな酷いことはしないから」
「……痛くない?」
「んー…どうかな。最初はちょっと痛いかも?」
「じゃあ嫌だ」
Uターンして帰ろうとした塔矢の手を掴んだ。
「ちょっ…待てって!痛くしないように気をつけるから!優しくするからさ!」
「本当に…?」
「うん、出来るだけ頑張る」
「……」
そう言うと少し体を戻してくれたので、逃がさないように即座に抱き締めてみた―。
「…つーか塔矢さ、お前オレの子供産んでくれるって言ったよな…?この程度のことを恐がってたら、とてもじゃないけど出産なんて出来ないぜ…?」
「だって…」
真っ赤になって目を潤ましてくる。
「泣くなって!ったく、碁を打ってる時のあの強気はどこにいっちまったんだよ!」
「…ごめん」
はぁ…。
これじゃあ今からオレが強姦するみたいじゃん。
セックスごときでこんなに躊躇する女初めてみたぜ。
ちょっと新鮮で楽しいけど……そう呑気に浮かれてもいられない。
なんせその当人が自分の妻なんだからな。
結婚したということはもう一生コイツしか抱けないってことだ。
離婚したり浮気したりしない限りは。
だからもしここで失敗して塔矢がセックス嫌いになっちまったら………お先真っ暗ってことだ。
あれはあくまで共同作業。
片方だけが盛り上がってもたいした結果は得られない。
お互いが満足してこそ初めて本当の快楽が得られるんだ―。
「…塔矢、セックスも囲碁と同じなんだぜ」
「え…?」
「囲碁も一人で棋譜並べとかすると確かに勉強にはなるけど、誰かと実際に打ってみるのが一番上達への早道だろ?セックスも同じ」
「実戦あるのみってことか…?」
「そ。だからさー…」
抱き締めたまま塔矢の体をゆっくりベッドに押しつけた―。
「…ん…っ―」
唇をキスでふさいで、角度を変えながら何度もついばんでいく―。
「…ぁ…はぁ…―」
口を離すと、恥ずかしそうに顔を横に背けてしまった。
「…塔矢―」
続けて頬から滑るように首へとずらしながら唇を押しつけていった―。
「進…藤…」
不安そうにオレのパジャマの端を掴んでくる。
「…大丈夫、怖くないから…。取りあえず流れを掴み取ってて?」
「…うん」
これも碁と同じ。
まずは全体の流れを掴んでくれたら―。
「…ん……」
首筋に吸い付いたまま、パジャマの上から胸を揉み始めた。
と同時に左手で丁寧にボタンを外していき、暴かれてきた肌に合わせて唇もずらしていく―。
そして上のパジャマを脱がし終わった後、直に胸に触れながら舌でも刺激を与え始めた―。
「…ぁ……」
全く触られたことのないコイツの乳首は、淡い色をしていてすごく可愛い…。
少し摘んで刺激を与えると、すぐに固くなって…口からも甘い吐息が出てきた。
「―や…っ…」
吸い始めるとやはり気持ち悪いのか、オレの体を押して離しにかかり始めてくる。
「塔矢〜、これも慣れとかないと…。子供が生まれたら吸わせなきゃなんねぇんだし」
「その時慣らすからいい!何でキミが吸うんだ!」
「何でって言われても……」
吸いたいから吸うし、触りたいから触るんだけど…。
もう一度乳首を舐めてから口を離した。
「まっ待って!」
「え?」
オレの方も脱ごうとパジャマのボタンに手をかけると、その手首を掴まれた。
「キミは脱ぐなっ!」
「……何で?」
「その…、恥ずかしいから…」
かぁぁと一気に真っ赤になった顔が…すげー可愛い。
「塔矢〜、これも慣れだから。オレとしてはオマエの方から脱がしてくれるぐらい積極的なのが希望なんだけどな〜」
「ぜっ絶対無理だっ!」
首を勢いよく横に振ったコイツを抱き締めて、顔を胸板に押し当てた―。
「んじゃ練習してみよっか」
「え…?」
耳元で囁くと、目を大きく見開いてオレの方に顔を向けてきた―。
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