●WAKE UP 3●








「あーーーくそっ。オレ早過ぎっ」





もうちょっと楽しみたかったのにー、と、塔矢が出て行った後脱がされたパジャマを元通り着直した。


いやいやいや。

いくらオレでもさすがに下をあんなに触られたら起きるから、と吹き出してみる。


というか、塔矢が

「起きなかったら悪戯しちゃうからなー」

とかほざいた辺りで起きた。

どんなイタズラしてくれるんだろ〜てタヌキ寝入りしてたわけだけどさ、まさかあの塔矢があそこまでするとは。


つーか、中で出しちゃったんですけど……


だってさ、あんなに微妙に出し入れされたら我慢出来ないって。

気持ち良すぎっていうか、塔矢のあの不慣れな感じがまた堪んない。

初めてだったのかな?

普通初めてならもっとちゃんとしたセックス夢見てねぇのかな…と思うけど、まぁ塔矢は普通じゃないからな。

寝てる隙を襲う時点で普通の女じゃない。


ま、オレはチャンスあったら今日塔矢に

「一生起こして下さい」

てプロポーズするつもりぐらいだったからさ、そんなに深く考えてねーんだけど………問題は塔矢。

アイツくそ真面目だからなー。

たぶん今頃家に帰って


「なんてことをしてしまったんだ僕は」


とか罪悪感でいっぱいなんだろうな。

変なことを考えつかないうちに、早めにフォロー入れとくか。











プルルルル

プルルルル

プルルルル

プルッ…


『…はい』

おお…すげー暗い声。

大丈夫か?


「あ、塔矢?今何時だと思ってんだよ。10時から打つ約束だろ?」

『え?あ………うん。分かった。すぐ行く……ごめん』


悪魔で気付かない振り。

何も知らない振り。

取りあえず安心させてやろう。








ピンポーン


15分後――塔矢が(再び)着いた。

普通に招いてみる。


ガチャ


「…ごめん。お待たせ…」

「おせーよ。罰としてオレが先番だからな」

「う…うん」


明らかに動揺気味の塔矢。

こんなのでまともな対局出来るのか?と思ったけど、案の定、オレの中押し勝ち。

いつもの切れも冴えも押しもない微妙な手ばっか打ちやがって。



「………塔矢」

「ごめんなさい…」

「え?」


何に対して謝ってるのか、涙をぽろぽろ零してきた。


「ごめん……進藤…ごめん」

「塔矢…」

「僕…もうキミと打つ資格ないよ」

「は?どうして…」

「だって……」


今朝のことを思い出してか、ますます止まらない涙を溢れさせてきた。


「ごめん……もう僕…明日から来ない…から」

「ええ??困るっ!オマエが迎えに来てくれないとオレ…」

「すまない…っ」


そのまま逃げ帰ろうと立ち上がった彼女の手を掴んだ。




「待てよ塔矢。オマエがそのつもりなら、オレにだって考えがある。オレ……知ってるんだぜ?」

「……え」

「オマエ…今日ちゃんと10時に来たよな?」

「………」

「寝てるオレに何した?言ってみろよ」

「進…藤…まさか…起きて……」

「当たり前だろ!あれで起きない奴いねえって!」

「ひどい…」

「どっちが!寝込み襲いやがって」

「キミが起きたって分かったら、途中でやめてたよっ」

「だろ?だから寝た振りしてたんだよ。最後までしてほしかったし」

「………は?」


オレの衝撃本音に目を丸くしてきた。


「進藤……それ、どういう意味…?」

「だーかーらー、ぶっちゃけオレ的には今朝の起こし方が嬉しいってこと」

「は?嬉しい…?」

「嬉しいに決まってんだろ。いつもの進藤進藤耳元でギャーギャー言われて胸倉掴まれたりする乱暴な起こし方よりはさ、色っぽく起きなきゃ悪戯しちゃうからってちょっとエッチな方がよっぽど目が覚めるぜ」

「キミって……」

「実際今朝なんてすげー気持ちよくてどうしようかと思った。ま、オレ的にはもっと奥まで入れて激しく動いてくれる方が希望だけど」

「………」


彼女の顔が怒りか呆れか単に恥ずかしいのか、よく分からないけどとにかく真っ赤になって下を向いてしまった。


そっとそんな彼女の体を抱きしめる――



「だからさ、今朝のことは気にしなくていいから。むしろ明日からもこの起こし方できてよ」

「絶対嫌だ…」

「はは、やっぱり?でさ〜、塔矢にお願いがあって…」

「なに?」

「うん…その、オレをな、この先ずっと…起こしてくれない?」

「ずっと…って、いつまで?」

「死ぬまで、一生」

「…は?」

「嫌だよな?面倒だよな?でもな、一緒に住んでたらそんなに苦じゃないと思うんだよな」

「進藤」

「なに?」

「もしかして……プロポーズ?」

「…うん。嫌?」


突然過ぎたかな?

固まっちまった。

でも呆れたようにフッと軽く笑った後―――オレに恥ずかしそうに笑顔を向けてくれた。


「いいよ…」

「マジで?」

「うん…」


ヤッター!と更に抱きついた衝撃で、バランスを崩し―――彼女を押し倒した形になってしまった。


「あ…ごめん。塔矢」

「…ううん」

「嫌…だよな?」

「…ううん」

「マジ?じゃ…ベッドに行ってもいい?」

「…うん」















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