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●○●○● 同室  ヒカル ●○●○●



部屋割りをくじで決めることにしたのも、オレとオマエが同室になったのも、全部最初から仕組まれてたことだって知ったら……オマエは怒る?

社にバレたら殺されるかもな。

でもオレは何が何でも今夜塔矢を手に入れるつもりだ。

嫌じゃないよな?

本当に嫌なら、今そんな顔してないよな?



「へー、結構広いな」

「そうだね…」


30平米ちょっとのツインルーム。

ツインだけど、一つのベッドがダブル並の大きさ。

二人でも充分寝れる広さだ。


「顔、赤いぜ?」

「別に赤くなんか…」

「残念だったな、社と同室になれなくて。せっかく脱・処女するチャンスだったのに」

「べ、別に…構わない。初デートからそういうことするのって何か乱れてる…し。同室がキミでよかったよ」

「ふーん。そういうもんか」


顔どころか首まで真っ赤な塔矢。

そんなに意識されると勘違いしちゃうんですけど?

いや、勘違いじゃない?

少なくとも…オレは今回塔矢が社と付き合い始めるまでは、塔矢が自分のことを好きなんじゃないかって…自惚れていた。

いや…本当は実は今も自惚れている。


初めて出会った12の時から、いつも進藤進藤進藤って、恥ずかしいぐらいオレの名前ばっか連呼していたコイツ。

仕事でも、プライベートでも、オレの隣にはいつもコイツの姿があった。

でもずっと一緒にいるとさ、当たり前過ぎてドキドキもトキメキもなくなるじゃん?

どうしても女としては見れなかった。


『彼女が出来たんだ♪』

『あ………そう』


17の時――初めてオレに恋人が出来た時にオマエのした表情…今でも覚えてるよ。

ショック…だったんだろ?

動揺して、大切な絶対に落とせないその日の対局で惨敗するぐらい。

そんな自分が許せなくて、ますますオマエは囲碁一筋になっていったんだよな?

なのにオレは『恋愛ぐらいしろよ〜?』と、高みの見物。

もう23だろ?

いつまで一人でいるつもりだよ?

この前も告られたらしいじゃん?

付き合えばいいのに。

こっちまで心配になってくるじゃん。



本当に塔矢が誰かと付き合ったら困るくせに―――

初デートにまでおしかけて邪魔する気満々なくせに―――


確かに社はいい奴だよ。

絶対塔矢を大事にしてくれる。

でも、やっぱり渡せない。



―――塔矢はオレのものだ―――








ピンポーン


部屋のチャイムが鳴ったので、塔矢がドアを開けに行った。


「塔矢、夕飯までまだ時間あるし、お化け屋敷行かへん?」

「お化け屋敷?面白そうだね」

塔矢が振り返って、

「進藤も行こう」

と手招きしてきた。

お化け屋敷ねぇ…。

ちょっと楽しみ♪


部屋を出ると、社の後ろにルルもいた。

二人にはまだ言ってないけど、さっきのプールで実はもう正式に別れたオレ達。

三年も付き合ったのに、最後はものすごくあっさりだった。




「文句とかないのかよ?」

塔矢達と別れて、ルルと二人でお化け屋敷に入った時に聞いてみた。


「文句っていうか、ヒカル、よくこの状況で普通に会話出来るわねっ」

きゃーーっ!!!

と生首にビビったルルがオレに抱き着いてきた。

…だってオレ、お化けには慣れてるもん。

一応二年半取り付かれてたし?

怖いどころか、むしろ大好きだ。


「社君は私が引き止めといてあげるから、ヒカルは絶対今夜塔矢さんをモノにしちゃいなよ?」

「お前何でそんなに協力的なわけ?」

「いい元カノでしょ♪」


今度はミイラ男に驚いた彼女が、またきゃー!!とオレに抱き着いてきた。

ふくよかな胸がオレの腕に触れる…。

塔矢と社もオレらより一足先にお化け屋敷に入った。

塔矢が社に、こんな風に胸を押し付けてたらどうしよう…と、オレは不穏な気持ちで出口に急いだ―――









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