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●○●○● 部屋割り  アキラ ●○●○●



「おもろかったな〜塔矢」

「そうだね」


昼食後は進藤達と別れて、社と二人だけでプールを楽しんでみた。

進藤の言う通り、社と付き合うことにしたのは正解だったのかもしれない。

そう思うのは社がすごく大人に成長していたからだ。

初めて会った15歳の時は、まだ社会経験が少なくて、正直言って僕より進藤よりオドオドしていた気がした。

いつの間にこんな風に女性をエスコート出来る術を身につけたのだろうか。一緒にいてすごく落ち着けて、安心出来た。

でもやっぱり中身は昔の社のままで、面白いことを言ってふざけて、僕を楽しませてくれる。

初デートだっていう緊張も忘れるぐらいに……






「ごめん、お待たせ」


あっという間に4時になってしまったので、僕は急いでシャワーを浴びて、水着から今朝の服に着替えた。

他の三人は更衣室前で待っていてくれた。


「塔矢、荷物重いやろ?持ったるわ」

「え?ありがとう…」

そんな僕らを見た進藤が、

「あんまり甘やかしてると一生こき使われるぜ?」

と毒舌を吐いて笑ってきた。


一生……?

それはつまり、一生社と一緒にいるってことか?

それはつまり……

想像すると、嫌ではないけど………やっぱりまだちょっと戸惑ってる自分がいた。

進藤とだったら……どんなに先でも想像出来るのに。

進藤とだったら……はぁ。







「いらっしゃいませ」


今夜泊まるマリンランド併設のこのホテルには、5分足らずで着いた。

進藤が代表でチェックインしている間、僕ら三人はロビーで待つことに。


「一応ツインを二部屋予約してあるの。どういう組み合わせでいく?」

「二部屋?」


それって、どういう組み合わせとか考えるまでもないんじゃ…?



――嫌だな…――



直感的にそう思った。

だって悪魔で今日は初デートだ。

本当に社でいいのか、まだ半分検討中なのに。

僕らはもういい歳だ。

異性と同室なんかになったら…絶対……

考えるだけで免疫のない僕は赤面してしまう。


「公平にくじ引きで決めちゃおっか♪」

「え…?」


轟さんの提案に、僕は耳を疑った。

くじ…引き?


「だっていつもヒカルと一緒じゃつまんないもん。塔矢さんと同室になって女の子同士の話もしたいし、社君と同室になって関西の若手ナンバーワンと一晩中打つのも楽しそうだし♪どう?面白そうじゃない?」

「どう…って」

僕は社に視線を流した。

「ん〜、そやなぁ。そういうのも有りかもなぁ」


え?

有りなんだ?

本当に?


「何の話してんだよ」

進藤がフロントから帰ってきた。

手にはカードキーが四枚。

轟さんのくじ引き案を話すと、当然のように進藤が目を丸くしてきた。


「はぁ?何考えてんだよお前」

「いいじゃん、たまには♪社君も賛成してくれたし?」

「え、マジ?」

進藤が僕の方をチラッと見てくる。

「塔矢は?いいのか?」

「う…ん、皆がいいなら別にいい…かな?一晩くらい…」

「えー?んー、じゃあそうするか?」


進藤がカードキーをトランプみたいに切り出した。

社と同室になる確率は三分の一。

轟さんも三分の一。

進藤とも三分の一。


「「「せーの」」」

で一斉にひいた。


恐る恐る部屋番号を見ると、『1102』と書かれてあった。


「僕…1102号室みたい」

「……オレもだ」



――え…?



進藤が気まずそうにルームキーの番号を見せてきた。

確かに僕と同じ『1102』と書いてある。

嘘。

進藤と?

同じ部屋??


「私は社君とかぁ。ま、よろしく」

「こちらこそ」


え?

轟さんも社も本当にこれでいいの?


「ヒカル、浮気したらバレバレだからね〜?」

「分かってるって」


え?

バレバレ?

何で?


「俺ら1101号室やねん。何かあったらすぐ飛んでくから安心しいや、塔矢」

「あ…隣なんだね。じゃあ安心だ」


とか口では言いながらも、僕の鼓動は異様な速さだった。

だって、進藤と同室なんだよ?

一晩中彼と一緒。二人きり。

こんなチャンス…もうないかもしれない。

社と付き合いだしたとはいえ、やっぱり今もずっと進藤のことが好きだ。

進藤には轟さんがいることぐらい、もちろん分かってる。

でも、一回ぐらい…なら、とか、考えちゃってる僕って…おかしいのかな……








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