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●○●○● 初デート  アキラ ●○●○●



「わ、塔矢さんの水着可愛いね!」

「轟さんこそ…」



今日は社との初デート。

でも進藤達も一緒のWデートだから、そんなに緊張しなくてもよさそうだ。よかった。


この春にオープンしたばかりのこのマリンランドは、その名の通り、まるで海だと勘違いしてもおかしくないほどの巨大なプールが売りだ。

今日の為に僕が新調した水着はもちろんワンピースだけど、轟さんは当然のようにビキニだった。

さすが碁界の広告塔。

スタイル抜群で、胸もグラビアアイドル並。

進藤は…やっぱり胸は大きい方が好きなんだろうか……

自分の貧乳が恥ずかしくて、僕は隠す為に上着を羽織ることにした。





「ヒカル!お待たせ!」

「お、今年は白なんだ。可愛いじゃん」

「そう?ありがと」


更衣室を出ると、進藤と社がボールやら浮輪を膨らましていた。売店で買ってきたらしい。

早速いちゃつき出す進藤達を尻目に、僕は怖ず怖ずと社に近付いていく…。


「塔矢はイルカさんな」

「あ…ありがとう」

社からイルカ型の浮輪を渡されたので、体を隠すようにギュッとそれを抱きしめてみた。

「はは、イルカが羨ましいわぁ〜」

「え?」

「塔矢とプール来るん初めてやな」

「うん…僕はプール自体久しぶり。中学の授業以来かも」

「そうなん?ほなスクール水着以外を着るんも実は初めて?」

「うん…」

何だか恥ずかしくて、イルカで胸のあたりを完全に覆うと、社が笑ってきた。

「そない隠さんでも似合っとうって。ポニーテールも可愛いし」

「…ありがとう」

「ほな、行こか」


社に右手を取られ、プールに引っ張っていかれる。

男の人と手を繋ぐなんて初めてだ…。

温かくてドキドキする。





「おー!すっげーデカい!」

「すごーい!」


僕らのすぐ横でプールの広さに驚いてる進藤と轟さんも、もう当たり前のように自然に手を繋いでいた。

この二人…確かもう三年も付き合ってるんだよね。

進藤はもう轟さんに決めちゃったのかな…?

彼から『結婚』の二文字を聞かされる日も遠くないのかもしれない……

はぁ……落ち込む……



「ぅわっ…!?」

進藤達の行く末を想像して落ち込んでると、突然バシャッと水をかけられた。

「な〜に陰気な顔してんだよ。先週オレに負けた名人リーグでも思い出したか?」

犯人は進藤だった。

「な…、何をするんだ!」

「暗い顔してるからだって。せっかくの初デートなんだろ?全部忘れて今日は楽しめよ!」

「そんなことキミに言われなくても…」

「んじゃアレ行っときますか♪」

「は?」


進藤が指差した『アレ』。

全長300メートル。

ありえないぐらいにぐるぐるぐると、永遠に続いているこのプールイチ押しのウォータースライダー『スネイク』。



え……本当に?




「きゃああああーー!!!」


と久々に僕は本気で大声をあげてしまった。

(いや、こんなに大きな声を出したのは生まれて初めてかも)





「ほい、塔矢」

「あ…ありがとう、社」

「進藤達は?」

「もう一回あのスネイクに行ってくるって…」

「はは、元気やなぁ」


あまりの回転数とスピードに当然のように酔ってしまった僕は、プールサイドのベンチで少し休憩することにした。

社が買ってきてくれたポカリに口づける。


「ここ、夜は花火もあがるんやって。楽しみやな」

「そうだね」

「部屋から見るんもいいけど、一番のオススメは観覧車かららしいで?」

「観覧車?そうなんだ…」

「一緒に乗ろな」

「…うん」


進藤達がスネイクから帰ってくるまで、僕と社は少し深いプールで遊ぶことにした。

足が着かないプールは少し怖かったけど、イルカの浮輪に掴まってれば平気。

もしくは、社に掴まっていれば。

男の人の背中ってこんなに広いんだ…と少しドキドキしてしまった。

それに、堅い。すごく筋肉質。

感心して触ってると、

「くすぐったい」

と笑われた。

「お返しや!」

と社が僕の弱い部分を攻撃してくる。


きゃーーー





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