●VIEW 4●


今の声…!


恐る恐る振り返ってみた。


「お…母…さん…」


「あら、やっぱりアキラさんだったのね。進藤さんもこんばんは」

「あ、こんばんは」

一気に血の気が引いていくのが分かる。


どうしよう…!


「偶然ね。買い物はもう終わったの?」

「うん…まぁ…」

何て言い訳しよう…。

「私たちも今結婚式が終わったのよ。アキラさんはここで…夕食かしら?」

「えっと…」

「あ、オレ達今日ここに泊まることにしたんです」

「え?」

進藤?!

なに正直に答えて…!

「本当はオレん家で泊まりで打とうかと思ってたんですけど、いとこが春休みだから泊まりにきちゃって…。まだ小さいから走り回ってうるさくて集中出来ないから、どっかのホテルで打とうかってことになって…」

進藤が即席でめちゃくちゃな理由を話し始めた。

「急にすみません、塔矢には後から家に電話さすつもりだったんですけど…」

「あら、そうなの。うちに泊まって打ってくれてもいいのよ?」

「あー…でももうチェックインしちゃったんで…」

「そう…。アキラさん、あまり詰めて打たないのよ?明日から名古屋でしょう?」

「あ…、うん。1・2局打ったらちゃんと寝るよ…」

「じゃあ私からお父さんには伝えておきますから…。何号室に泊まってるの?帰る時ケーキでも持って行くわ」

「3921ですけど…お構いなく!俺たちお腹いっぱいなんで…」

「39…?ずいぶん上の階なのね…」

その言葉にカァッと一気に顔が熱くなった。

「まぁ…いいわ。じゃあお休み。進藤さんも」

「あ、お休みなさい!」

そう言ってお母さんがお父さん達の元に戻って行った。


最悪だ…。


「塔矢…?」

急いでエレベーターに乗って走って部屋に戻った。



バタン


「はぁ…はぁ…」

どうしよう…。

「塔矢…」

進藤がベッドに座って下を向いている僕の横に座った。

そして頬にキスをしてくる―。

「何とか…誤魔化せたな」

「どこが…」

更に顔を落として手で覆った。

「こんな所にいるのを見られただけで…もう終わりだ―」

たとえ今はバレてなくても…時間の問題だ。

戻ったお母さんが皆の前でお父さんに話したりしたら…少なくとも緒方さんは――気付く。

「…うん、もう限界だったのかもな…オレ達―」


え…―


「無理がありすぎだもん…、今までバレなかったのがおかしいぐらいで―」


進藤…?


「これでますます外泊しにくくなるな…」


まさか…


「でもちょうどいい機会かも―」


別れるとか…


「一緒に暮らそうか…」




え…?





進藤がぎゅっと抱き締めてくる―。

「一緒に暮らそうぜ…塔矢」

「で、でも…」

「親は…説得したらなんとかなるって―」

そう…かな…。

「もうオマエとこんな風にこそこそ会うのは…嫌だ」

更にキツく抱き締めてくる―。

「もう限界…」

「進藤…」

僕の顔を覗きこんできた―。

「嫌…?」

首を思いっきり横に強く振る。

そして進藤の胸に抱き付いた。

「―嬉しい…」

夢みたいだ。

進藤にそんなこと言ってもらえるなんて―。

「…ずっと思ってたんだ、オマエと暮らしたいなって―。会えない日が続く度にその思いが強くなって…、でもきっかけがなかったからずっと言えなかった…」

進藤が優しくキスをしてくる。


「…僕もキミに会えないのは…辛かった」




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