●WAKE UP+ 2●






「おめでとうございます。12週目に入ってますよ」

「………は?」



しばらく生理がないことに心配になって婦人科を訪れた僕は、医師からトンチンカンな診断を受けた。


は?

12週目?

何が?

赤ちゃんが?

この僕のお腹に?

はは…ありえないよ。


だって僕は―――まだ処女だもの




「つわりはありませんか?」

「はぁ…?」

「順調ですよ。見てください」

「はぁ…」


子宮の写真を見せられても、信じられなかった。

何がなんだか意味が分からない。

子供とは男と女がセックスをして初めて出来るものなんじゃないのか?

僕の知識は間違ってる?













「すまない。病院が思ったより混んでて遅れた」

「…病院?」


病院を出た後囲碁サロンに直行すると、進藤が棋譜並べをしながら待っていてくれた。


「…どこか悪いのか?」

「はは…とんだヤブ医者だったよ。僕が妊娠してるって言うんだから」

「は?!」


驚いた彼が思わず碁笥を床に落としてしまい、床一面に石が散らばった。

それを拾い集めながら話を続ける。


「でもお腹の赤ちゃんの写真を見せられた。一体どういうことなんだろう…」

「み…身に覚えねぇの?逆算してみて…」

「逆算もなにも、僕はまだ一度も経験がないんだ。それなのに子供だなんて…理解不能だよ」

「…やっぱり処女だったんだ…」

「え?」

「あ、いや、何でもない…」


碁石を拾い終え、改めて打つことにした。

でも…いまいち打つ気になれない。

妊娠した理由がハッキリしないからモヤモヤする。

気持ち悪い。

もしかしてこれが悪阻というやつか?



「……で、あの…産むのか?それとも…下ろすのか?」

「そんなのまだ考えてない。父親もいないから相談も出来ないし…」

「そ…そっか。そうだよな…」

「でももう12週目みたいだし、産む確率の方が高いかな。どこから来たのか知らないけど、せっかくの新しい命だし。進藤はどっちがいいと思う?」

「オレ?オレは……………どうしたらいいんだろ…」


産むか下ろすか聞いてるのに、真っ青になって俯いてしまった。

何だか様子がおかしい。


「…もしかしてショックなのか?僕に赤ちゃんが出来て」

「え…?」

「心配しなくても、僕は出産しても打つよ?」

「そ…そんなことじゃねぇよ…」

「じゃあ何でそんなに動揺してるんだ?」


碁石を持った指がずっと震えてる。

いつかの対局の時みたいに―――



「……ちょっと考えさせてくれ…」

「え?」


素早く碁石を片付けて、進藤はひとり碁会所を出ていってしまった。

変なの。

考えさせてくれって…まるで父親の男が言うセリフみたいでおかしい。

本当にキミの子供なら最高なんだけどな―――














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