●WANT TO MARRY 10●


撮影が進んで、塔矢のドレス姿をいっぱい見ているうちに――気持ちが抑え切れなくなった。



『結婚しよう』



本物をしよう?

ずっと一緒にいよう?

夫婦になろう?


ついに言ってしまったプロポーズ。

言いたくて仕方がなかった。

もう我慢が出来ない。


結婚しよう、塔矢――








「と、塔矢っ?!」


突然ポロポロと涙を零してきた彼女。

慌ててハンカチを取り出す――


「大丈夫か…?」

「やっと……言ってくれたね」

「え…?」

「ずっと待ってた…」

「塔矢…」

「もう一生してくれないんじゃないかって…不安だった…」

「ごめんな…」


塔矢が椅子から立ち上がって――オレに抱き着いてきた


「今…すごく嬉しいよ」

「オレも…」


塔矢の髪に優しくキスをして…上げてくれた顔の頬にもキスをして…――


「――…ん…」


最後に口にもキスをした――

さっきまでの撮影用・人前用の軽いやつじゃなくて、どんどん交ざっていく深いキス。

もしこれが撮影終了後だったら間違いなく最後までしたかもしれない。

でもこの雰囲気のまま及んだナイト・ウェディングは、今日の中で一番の出来。

ずっと見つめ合って…手も握りあって…幸せを演出することが一番の目的のプロモーションビデオ作りは大成功に終わった。











「わ、広ーい」


撮影の後に案内されたこのホテルで一番広い客室・ロイヤルスイート。

今夜も明日の夜もここでずっと塔矢と一緒だと思うと胸が踊る。


「こんなに二人でゆっくり過ごすの、何ヶ月ぶりだと思う?」

「んー…」


思い出そうと思っても思い出せないオレに、塔矢はいつもの口調で正確に述べてきた。


「1年と5ヶ月ぶりだよ。ほら、去年の夏に偶然休みが合った時があっただろう?その時以来だ」

「そんなになるのか…」

「うん…長かった――」


前にも聞いたことのある台詞を繰り返しながら――オレらはベッドで見つめ合う。


「まさか26になるまでキミがプロポーズしてくれないなんて思ってもなかったよ」

「だってオマエが結婚したくないって言うからさー」

「16の僕に聞く方が悪いんだ」

「じゃあいつ聞けばよかったんだよ?」

「ハタチ…かな」

「マジ?!うわー、オレ6年も損したー」

くすっと笑った塔矢が、オレの肩に頭を凭れかけてきた。


「でも…おかげで碁に集中できたよ」

「え…?」

「でも、そろそろ変化がほしいかな」

「変化?」

「うん。そろそろ家に帰るとキミがいる生活を送ってみたい」

「うん…オレも」

「子供がいてもいいな」

「塔矢っ!!」

「ぅわっ」


おもいっきり抱き着くと、勢いあまって彼女を押し倒す形になってしまった。

下から優しくオレの頬に手を添えてくる――


「今から作ってみる?」

「うん――」



即答したオレは、付き合って10年目にして初めて付けないでコトに及ぶことになる。


ずっと夢見てた塔矢との結婚生活。




ようやくオレらの関係は一歩前進する――

















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