●TIME LIMIT〜進路編〜●
千明お姉ちゃんは、一ノ瀬お義兄ちゃんが働いている大学病院で出
両親と一緒にお見舞いに行った時、姉と義兄の他に…もう一人
「明菜ちゃんだよね?初めまして」
と何故か私の名前を知っていたイケメンなお兄さん。
「お義兄さんの同僚の須本大樹です」
「……初めまして」
同僚と言ったけど、義兄とは大学も同じで、それ以来ずっと仲がい
小児科に勤めてるという彼は、知的で優しそうで…きっと患者
白衣がすごく似合っていて、身長も高くて……とにかくカッコい
自分の頬が赤くなって、胸が異様なくらいドキドキして。
きっと私は生まれて初めて『一目惚れ』というやつを経験したんだ
「にゃー!どうしよどうしよ〜〜」
翌日、私は自室のベッドの上でゴロゴロ悶えていた。
遊びに来ていた親友の百合子に
「バカじゃないの?」
と冷たく吐き捨てられる。
「一目惚れかなんか知らないけど、相手にされるわけないじゃない
「うん…」
「てことは何歳よ?いくつ上よ?」
「30歳……12こ年上」
「30歳から見たらあんたなんて子供も子供、絶対女として見られ
ガーン……
「やっぱりそうなのかなぁ…」
「だいたいそんなイケメンな医者、絶対彼女いるでしょ。つーか結
「ゆ、指輪はしてなかったもん!」
「仕事柄出来ないだけかもよ?」
「……そっかぁ」
シュンとなる。
百合子の言うことは尤もだ。
まだ18歳の高校生の私が、男盛りの30歳の引手数多なお医者様
「でも…、じゃあこの気持ちはどうすればいいの?」
「どうしようもないんじゃない?」
「…だよね」
「それより受験勉強しましょ。あんた一応大学志望なんでしょ?今
「だ、だよね…。ごめんごめん……勉強始めよっか」
ベッドから降りて、私達は一緒に参考書を開いた――
18歳、高校3年生になった私、進藤明菜は進路に悩んでいた。
一応高校は進学クラスに進んだものの、具体的な夢も目標も何もな
裁判官になりたいから法学部に迷わず進学した姉と、小学校の時か
このままとりあえずどこか私でも入れる大学に入って、こんな私で
「進路希望の用紙、来週までに提出しろよー」
担任の先生が、ホームルームの帰り際に『進路希望調査用紙』の締
第一希望から第三希望まで書く欄があるのに、私は一つも思い浮か
(どうしよう…誰かに相談出来ないかな…)
(そうだ、千明お姉ちゃん、確か明日退院だったはず)
仕事で退院を付き添えない義兄に代わって、お父さんが迎えに行く
土曜だし、私も行こう!
行って、お姉ちゃんに相談してみようと思った。
翌日10時、退院時間の30分前に私とお父さんは病院に到着した
「お姉ちゃん、退院おめでと〜」
病室のドアをガラッと開けると、既に荷物もまとめてセレモニード
傍にはもちろん一ノ瀬お義兄ちゃんも。
「お義父さんすみません。千明と綾をよろしくお願いします」
「いいっていいって。今日は夜まで付いててやれるから、凌君も当
「ありがとうございます。助かります」
結局赤ちゃんの名前は『綾ちゃん』になったらしい。
きっとお姉ちゃんみたいな美人に成長するんだろうな。
コンコン
「一ノ瀬、退院準備終わった?」
ガラッとドアが開いて、そんな台詞を言いながら入って来たのは――須本さん!!
(ウソ…どうしよ。心の準備が…)
「あれ?明菜ちゃんも来てたんだ」
こんにちは、と私に屈折のない笑顔を向けてくれるカッコいい須本
「こ、こんにちは…」
「明菜ちゃんは高校3年生だっけ?」
「あ、そうです…」
「進路はもう決まった?」
「あ…、いえ…」
まだです…と私は小さく返事をした。
きっとこの須本さんも義兄と同じで、高校に入った時から医学部目
何の夢もない自分が恥ずかしくなる。
「もしまだ進路決まってないなら、この大学の看護学科とかどう?
と耳元で囁かれる。
――え?
「おい、須本」
ちょっとこっち来い、と義兄が須本さんを病室の端に引っ張ってい
「オマエ下心丸見えなんだよ」
「いいじゃん、明菜ちゃんが看護学科来てくれたら実習でしょっち
「オマエなぁ…」
え?
え?
それってどういう意味ーー??
「お世話になりました」
姉が担当してくれた医師と看護師さん達にお礼を言って、病院を後
お父さんの車で姉の家まで移動中、私は
「さっきの須本さんのセリフの意味…お姉ちゃん分かる?」
とドキドキしながら聞いてみる。
「あー…明菜は気にしなくていいよ」
「気になるよ!下心ってどういう意味?しょっちゅう会えるしって
「ごめんね…、明菜にしたら迷惑だよね。あんなオジサンに好かれ
「須本さんは全然オジサンじゃないもん!全然迷惑じゃないもん!
「明菜…?」
姉が目を丸くする。
「もしかして明菜…」
「ふ、不釣り合いなのは分かってるもん…。でも私…、私…」
一目惚れしちゃったんだもん……!!
――と姉に正直に打ち明けた。
「そうなんだ…」
「お姉ちゃん…笑う?」
「ううん…何だか微笑ましいなぁって。お似合いだなぁって…思って」
「……え?」
「私の口からはまだ話せないけど、明菜がそんなに須本さんのこと
「看護学科…?」
「うん。もちろん明菜が他に行きたい大学とか夢があるなら別だけ
「そんなものない。私、進路が決まらなくてずっと困ってたの…」
でも、今日決まった。
今決まった。
もし、少しでも須本さんとの未来に希望があるのなら頑張りたい。
看護学科に入って、いつか看護師になって、彼の傍にいたいと思っ
「先生、これでお願いします」
翌月曜日、私は進路希望調査用紙を担任に提出した。
第一希望 T医科大 医学部看護学科
もうこれ一本で行くつもりだ。
「百合子百合子、放課後図書室で一緒に勉強しよ」
「明菜どしたの?いきなりやる気出して」
「えへへ〜絶対受かりたい大学が出来たんだ!」
「へー」
「百合子はK大でしょ?一緒に合格目指して頑張ろうね!」
「そだねー」
どうか笑顔の春を迎えれますように。
応援しててね、須本さん――
―END―
以上、明菜ちゃんが高3になった春のお話でした〜。
千明がちょうど出産するタイミングです。
30歳になってもイケメン須本君に一目惚れしてしまった模様です(笑)
女運が無さ過ぎてだいぶ痛い男になってしまったみたいですがw(二言しか話したことがないのに結婚を考えるとかヤバいね!)
ちなみに一ノ瀬君と須本君は福岡の大学を卒業後、東京の同じ大学病院で働き始めました。
須本君は40歳くらいまではここで修行して、その後は実家の病院
もちろん看護師の妻を帯同してね