TIME LIMIT〜新婚編〜 9





「…ん……」



カーテンの隙間の朝日で目が覚めた。

目の前には大好きな旦那さまがまだ眠っていた。

私は起こさないようそうっとベッドを下りて、寝室を後にした。

自分の部屋で着替えた後、キッチンに立って朝食を作り始めた。


結婚が決まってから、私は時間を見つけては両親に料理含む家事一式を習っていた。

元々お菓子作りが大好きだったせいもあって、要領を掴むのが早かった私は、今では一通りのメニューは作れるつもりだ。

昨日大樹さんが希望した洋食の朝食も、たぶん問題なく作れると思う。

ただこの家の台所にまだ慣れてないので、菜箸一つ、油一つ探すのにも手間取ってしまった。



「ふー…何とか出来た」


30
分後、ようやく完成したので旦那さまを起こしに行く。

おはようのキスでもして起こそうと思ったのに、ドアを開けると大樹さんは既に起きていて、ちょうど着替え終えたところみたいだった。

ちょっとガッカリ。


「おはよう」

と笑顔で挨拶される。

「おはよう…、朝ご飯出来たよ」

「ありがとう。いい匂いがして目が覚めたよ」

「そうなの?」


出来上がった朝食を見て、

「美味しそう」

と見た目は合格点をくれた。

一緒に「「いただきます」」と食べ始めた。


「うん、すごく美味しいよ」

と味も合格点をくれる。

「ホント?夏休み中は毎日作るね♪新学期始まったらちょっと自信ないけど」

「じゃあ新学期が始まったら交代で作ろうか」

と提案してくれる。

おお、大樹さんて家事は分担派なのか。

共働きの妻に家事も全部押し付けてくる旦那じゃなくてよかったとホッとなる。


「帰りは何時くらいになりそう?」

「今日は日勤だから6時半くらいかな」

「分かった。じゃあそれに合わせて夕飯作るね」

「ありがとう」


私は今日は1日手続きに走り回る予定だ。

まずは区役所に行って住民票とかゲットして、マイナンバーカードの改姓手続きをしようと思う。

あと銀行も行って、大学にも行くつもりだ。



「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


新婚らしく玄関でキスもして、彼は出勤して行った。

当然のように左手薬指に結婚指輪をして……

(大丈夫かな…)


区役所が開くまでの間に家事を終わらせてしまおう。

洗濯と掃除機と……

(きゃーー大樹さんの服洗うのドキドキするーー)


 

 


午前中に区役所と銀行に行った後、午後から大学の学務課に向かった。


「すみません、改姓の手続きをしたいんですが…」

「あ、はーい」

今の学生証と取得したばかりの戸籍謄本を事務員さんに渡した。


「じゃあこちらに記入お願いします」

と改姓届を渡される。

「旧姓そのまま名乗ることも出来ますけど、どうされます?」

「え…?」


あ、そうなんだ。

進藤のままでも大丈夫なんだ。

もし今が大学4年生とかなら卒業まであと少しだし、それでもいいかもしれない。

でも私はまだ1年生で先は長い。

それに戸籍と違うことで今後不便が出てきても嫌なので、ここは改姓を選ぼうと思う。


「いえ、新姓を名乗ります」

「分かりました。じゃあ学生証も『須本』に変更しておきますね………あれ?」


戸籍謄本を見た事務員さんの動きが止まる。

戸籍謄本はもちろん大樹さんが世帯主だ。

おそらくその名前を見てこの事務員さんは固まったのだろう。


「あの、この世帯主の方って…、もしかして小児科の須本先生ですか?」

とストレートに聞かれる。


「……ハイ」

「ええー…」

マジかぁ…、いいなぁ〜、羨まし…、と本音が漏れていた。


「え?じゃああなたがウワサの親友の妹さん?」

「……ハイ。親友の(奥さんの)妹です」


(こんなところまで噂が広がってるのーー??)


「あ、すみません。じゃあ大学病院の事務の方にも連携しておきますね。奥さん学生だと扶養に入るでしょうし」

「扶養…」

「はい、扶養」

「私…、大樹さんに扶養されちゃうんですか…?」

「されちゃうんですよ〜」


何だか本当に家族になったんだって実感が湧いてドキドキする。

新しい学生証は一週間ほどで出来上がるらしい。

また来週取りに行くことになった。


帰りに近所のスーパーに寄って帰る。

もちろん夕飯と明日の朝食の材料を買う為だ。

今朝、大樹さんから食材代として5万貰ったので、これで今月の残り2 週間をやりくりしてみようと思う。

つまり1日あたりに使えるのは3500円くらいだ。

とりあえず普通に2食分の材料だけを購入してみたら2500円くらいだった。

まぁ…これなら何とかなりそうか。


 




「ただいま…」


18
時半過ぎに予定通り大樹さんが帰って来た。

「お帰りなさい」

「ただいま…明菜」

ちょっとお疲れなのか、私にぎゅっと抱き着いて来る。


「えらい目にあった…」

「お仕事忙しかったの?」

「いや…、結婚指輪していったら会う人会う人に驚かれて叫ばれて泣かれて……何か1日大変だった」

「へ、へぇ…、それはそれは」

「一ノ瀬にその様子見られて爆笑されるし…」

「ふふ」

「あ、事務の子が声かけてくれて扶養の手続きもして来たよ。明菜も大学で手続きして来たんだって?」

「あ、うん。そうそう」

「明菜が扶養家族か〜何か嬉しいな」

「ね、嬉しいよね」

「うん…――」



キスを落とされる。

まだ結婚して2日目の私達。

今日も一晩中イチャイチャしようと思った――

 

 

 

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