TIME LIMIT〜新婚編〜 10






「明菜ー!結婚おめでとー!」

「ありがとう百合子!」



今日は高校時代の親友、百合子と久々にカフェで会うことになった

メッセージアプリでは結婚報告して祝って貰ってたけど、改めて祝福される。


「でも早すぎでしょ。付き合ってまだ半年くらいでしょ?一体どんな展開よ」

「えへへ…、私も驚いてる」


とりあえずおめでとう、とご祝儀袋と紙袋をくれる。

紙袋の中身はペアのマグカップだった。


「わぁ…、ありがとう。嬉しい♪大事に使わせてもらうね」

「お幸せにね」

「…ありがとう」


百合子は毒舌でキツい言い方をすることが多いけど、中身はすごくいい子だ。

だから高校3年間ずっと仲が良かった。

何だかんだ言いながらも、私の定期テストの面倒を見てくれたのも彼女だ。


「私、今家庭教師のバイトしてるんだけど、これまた頭悪い中学生が生徒でさー」

「へぇ…」

「でも明菜に教えてたから慣れてるっていうか、今生きてるよ。ありがとね」

「う、うん…、それは良かった」

(お礼を言われて喜んでいいところなのか微妙だけど…)


「明菜はバイトしないの?夏休みヒマでしょ?」

「うーん…、した方がいいのかなぁ?でも家事もあるしな…」


夏休みの残り一ヶ月、家事の合間にちょこっちょこ働いても34万くらいにしかならないと思う。

ぶっちゃけそれは大樹さんが1日で稼ぐ金額より少ないわけで…。

何かあんまり意味がない気がした。

それよりも家事を頑張って美味しいご飯を作って、笑顔で帰りを出迎えてあげた方がいいような気がする。


「旦那の給料はあくまで旦那のものだからね。アンタが自由に使えるわけじゃないんだから、お小遣いくらいは自分で稼いだ方が手っ取り早いと私は思うけどね」

「うん…、そうだよね。もうちょっと今の生活に慣れて来たら考えてみる」

「結婚したんだから保険にもちゃんと入っときなよ?」

「…保険?私が?」

「妊娠して切迫入院にでもなったら大変らしいよ。私の従姉なんて結局生まれるまで半年も入院してたし。個室なんか入ったら詰むよ?」

「な、なるほど…」


まだしばらく子供を作る予定はないけど、こればっかりは授かりものだから…もしかしたらということもある。

妊娠以外にも事故とか病気とか、リスクはたくさんあるんだから備えておきなよ、と百合子にビシッと言われる。

さすが経済学部。

将来金融系に進みたい百合子は今から考えもしっかりしている。


「旦那にもちゃんと入っといて貰いなよ?アンタ医者と結婚して油断してたら、旦那が死んだら速攻人生詰むよ」

「そ、そうだよね…」


新婚の私にいきなり死んだらとか脅してくる彼女はどうかと思うけど、言ってることは至極真っ当だ。

ちゃんと大樹さんと話してみようと思った。


その後も色々百合子に教わって、夕方バイバイした。

また夕飯の材料を買ってマンションに戻る。


今日も日勤の大樹さん。

「ただいま」

といつも通り18時半くらいに帰ってきた。

「お帰りなさい」



一緒に夕飯を食べながら、今日百合子に教わったことを大樹さんに伝えてみる。


「保険?あ、そうだな。今度受取人を明菜に変更しておくよ」

「大樹さんもう入ってるの?」

「仕事柄、常に病気も死も身近な存在だからね…。自分が特別だとは思ってないよ…、誰だっていつそうなるか分からないからね」

「…そうだよね。私も入った方がいいかなぁ?」

「医療保険ぐらいは入っておいてもいいかもね。俺の担当に話しておくよ」

「ホント?ありがとう♪」


あと、バイトのことも聞いてみた。

ちょっと眉を傾げられたけど…。


「まぁ明菜がしたいなら反対はしないけど…」

「大樹さんは大学生の時、ちょっとはしてた?」

「いや、してないよ」

「仕送りだけで生活出来てたってこと?」

「うん」

「そっかぁ…」


さすが開業医の息子だ。

国立大とはいえ、一人暮らしだと生活費はかなりの額になると思う

やっぱり根っからのお坊ちゃまなんだろうな…、こんな部屋に住む選択をするくらいだし、と私は部屋を見渡した。

職場の西新宿まで車で10分の距離にあるこの高層マンション。

3LDK
だし家賃めちゃくちゃ高そうだけど…、一体いくらなんだろう…。


「ねぇ大樹さん。この部屋って月いくら?」

「管理費と修繕積立金は月5万くらいかな」

「え?賃貸じゃないってこと?」

「うん、叔父が投資用に買って余ってる家だから。綺麗に住むなら諸費用だけ払ってくれたらいいよって住まわせてもらってる」

「投資用…?」

「このあたりのマンションは年々高騰してるから。例えば10年前に1億で買ったマンションが今売れば15000万で売れるってこと。そういう意味の投資」

「ほへー…、なるほど」


持つべき物はお金持ちな親戚ということか…。

お金持ちがどんどんお金持ちになる理由が分かった気がした。


「だから住居費がほとんどかからない分、生活には余裕がある方だと思うから、明菜がバイトで稼ぐつもりくらいのお小遣いはあげれると思うよ」

「そっか…、じゃあ無理にしなくてもいいか」

「俺が学生の時もいたけど、バイトしまくったせいで成績落ちて留年でもしたら本末転倒だからね。目先の利益より、明菜はまずはしっかり勉強して4年で大学を卒業すること。いい?」

「…ハイ」

「お義父さんとも約束したしね、後期も頑張ろうな」

「そうだね…」


親から貰った学費を無駄にしないためにも、まずは勉強を頑張ろうと思う。

「それに…」と大樹さんが続けてくる。


「俺の中では明菜が24歳になったら子作り始めるって決めてるから。延びるのはちょっと勘弁してほしいかな」

「あ…ハイ///


4
年で卒業して、就職して1 年経ったら私は24歳になる。

彼が我慢出来なくて暴走しない為にも、勉強を頑張ろうと誓った新3日目の夜でした。

 

 

 

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