TIME LIMIT〜新婚編〜 6





メリットとデメリットを考えてみようと思う。

今すぐ結婚することのメリットは、やはり1日でも早く大好きな須本さんのお嫁さんになれることだ。

一緒に住んで、いつでもイチャイチャ出来て、想像するだけでニヤけてしまう。


デメリットはやはり31歳の彼が12歳も年下の19歳の女子大生と結婚するという外聞の悪さだ。

最悪、彼の性癖を疑われるかもしれない……



「私と結婚したことを隠してくれるなら…、今すぐ結婚してもいいかな…」

「え?」

「病院の関係者に誰と結婚したか言わないのなら…」

「つまり明菜ちゃんを妻として紹介出来ないってこと?」

コクリと頷く。

須本さんがうーん…と考え出した。


12歳差くらいよくある話だと思うんだけど…」

「そうかなぁ…」

「そりゃ同じ19歳でも、これが19のキャバ嬢と俺が結婚するなら問題大有りだと思うけど」

「それはヤバいね…」

19の親友の義妹と結婚するのは別に…よくない?」

「なるほど…、私を親友の妹と位置付けますか…」

「うん。誰と結婚したのか聞かれたら、一ノ瀬の妹って言うよ。そしたら病院関係者も別にツッコんでこなさそうだと思わない?」

「そうだね…!」


確かに。

19
歳の女子大生と結婚って表現したらアレだけど、親友の妹ってのならいいかもしれない。

本当のことだし。


「分かった。やっぱり8月に結婚するね!」

そう告げると、ホッと安心した表情になった須本さんがまた運転を再開し出した。



 

 

 




7
月下旬。

大学の前期試験が終わった後、看護学科は2週間の臨地実習に入る

そう、須本さんがいる大学病院での実習だ。


5
6人ずつ7つのグループに分かれ、それぞれ違う科で実習を行う。

私のグループは循環器内科の入院患者さんを担当することになった

患者さん達の話を聞いて回ったり、実際に看護師がケアしている場面に立ち会ったり、病院における看護の機能や役割について学んでいく。

結構忙しくて11日があっという間に時間が過ぎていった。


(須本さんにも一ノ瀬お義兄ちゃんにも意外と全然会わないな…)


入院病棟は9フロア900床以上ある。

こんなに広かったらそりゃ会わないよね……と思ってた矢先――


「須本先生、橋本さんやっぱり発作出てるので、見に来て貰ってもいいですか?」

という看護師さんの声に、私は振り返った。

声の主の隣にいたのはもちろん須本さんで、電子カルテを確認しながらその看護師さんと何か話している。


(わ〜…白衣の須本さんだvv)


仕事中の彼の姿を目撃したのは初めてで、思わずガン見してしまった。

真剣で真面目な顔にうっとりとなる。

もちろんすぐにその患者さんの病室に向ってしまったので、私には気付いてないだろうけど。



「今の、須本先生だったね」

「ねー、カッコいい。さすが御三家」


同じグループの子達も須本さんのことは知ってるみたいだった。

やっぱり有名なんだな…と思ってると、

「でも須本先生、結婚間近って聞いたよ」

と一人の子が言い出してビビる。


「うそ、ショックー。奥さんになる人どんな人なんだろうね」

「絶対美人で聡明な女性だよね。女医かもよ」

「え?私は親友の妹さんって聞いたけど」

「へー」


変な汗が出てきた。

噂って怖い。

この実習が終わって夏休みに入り次第、私達は入籍する予定だ。

今更だけど、夏休み明けに私の苗字が須本に変わって、本当に大丈夫なのか心配になってきた……


 

 



「お疲れ様〜」

「また明日ね〜」


今日も無事実習が終わり、私は皆とエレベーターホールで別れた。

このまますぐ駅に向かうか、それともちょっと買い物してから帰ろうか悩んでいると、

「明菜ちゃん!」

と背後から声をかけられる。

振り返ると「実習お疲れさま」と須本さんがこっちに向って来ていた。


「お疲れ様です…。須本さんも今帰りですか?」

「うん。送っていくよ」

「ありがとう」


私はまだ実家に住んでいる。

入籍後からは須本さんと一緒に住む予定なので、実家で暮らすのもあと数日だ。

ちょっとばかりセンチメンタルになるけど、でも新生活へのワクワク度の方が大きい。


「今日12階で会ったね」

「え?私のこと気付いてたの?」

「うん。声かけようかと思ったら呼び止められて残念だった」

「…はは」


声をかけられなくてよかった…とホッとなる。

もし須本さんと話でもしたが最後、絶対に同じグループの子達に質問攻めにあってただろう。


「あの、出来たら明日以降も声はかけないでほしいかな…」

「え?」

「須本さん…看護学生にも人気あるから…。今日だって、須本さんが結婚間近って噂が流れてるみたいでショック受けてた子もいて…」

「え?!そんな噂が?!」

どこから漏れたんだろう…と須本さんは恥ずかしそうに頬を掻いた。


「親友の妹と結婚するってことも知ってる子もいたし…」

「あー…それ絶対櫻井のせいだな。この前根掘り葉掘りしつこく聞かれてそう答えたから…」

「産科の櫻井先生?」

「うん。自分より先に俺が結婚するのが許せないらしい」

「そ、そうなんだ…」


確か須本さんと一ノ瀬お義兄ちゃんと一緒に若手御三家と呼ばれている産科の櫻井先生。

どうやらまだ独身らしい。



駐車場に着き、助手席に乗り込んだ。

すぐに発車せず、須本さんが私をじっと見つめてくる。

その瞳は少し熱を帯びてるように見えて…ドキッとなる。


「明菜ちゃん…」

彼の顔がゆっくり近付いてきて……キスされた――


「…ん……」


もうすぐ結婚する私達。

結婚したらキスも毎日するんだろうか。

エッチも?


ドキドキの新婚生活が数日後に迫っていた――

 

 

 

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