●TIME LIMIT〜新婚編〜 13●
コンコン
「大樹、明菜ちゃん、おめでとう!」
次に入ってきたのは、初対面の大樹さんのお姉さんファミリーだっ
お義姉さんは精神科医、お義兄さんは薬剤師らしい。
「明菜ちゃん、大樹でストレスが溜まったらいつでも相談に来てね
「あ、はい…」
お義姉さんには子供が二人。
4歳と2歳の男の子だ。
お義母さんといいお義姉さんといい、バリバリ働く女性をずっと傍
(もしお義母さんが専業主婦だったらああはなってないだろう)
コンコン
「大樹、明菜ちゃん、結婚おめでとう」
噂をすれば何とやら。
次に入ってきたのは大樹さんのご両親だった。
大樹さんとお義父さんが並んで、ふとあることに気付く。
(身長が同じだ…)
そういえば顔もどことなく似てるので、大樹さんは父親似なんだろ
ということは60代になった大樹さんはきっとこんな感じ……
(え、めっちゃイイかも///)
「明菜ちゃん、大樹で困ってることはない?」
とお義母さんが聞いてくる。
「はい、全然ないです。私には勿体ないくらいの旦那さまです」
そう答えると、お義母さんは
「何ていい子…、大樹には勿体ないくらいのお嫁さんだわ」
と涙ぐんでいた。
コンコン
「大樹、お招きありがとう」
次に入ってきたのは大樹さんの叔父さんらしい。
今住んでるマンションの持ち主ということで、私の方からも
「貸していただいてありがとうございます」
とお礼を言った。
「いやいや、家は誰かが住んでてくれた方が傷まなくていいからね
大樹が出ていくタイミングで売りに出すから気兼ねなく、とも言わ
それはきっと大樹さんが40になって実家の病院を継ぐタイミング
大樹さんが40歳になったら私は28歳だ。
24歳になったら子作りする予定なので、28歳だと2人くらい子
(えへへ…楽しみ)
コンコン
「明菜、大樹君、おめでとう」
最後にやって来たのは私の両親と妹の明良子だ。
「お姉ちゃんキレ〜イ」
「えへへ…ありがとう。明良子もプロ試験合格おめでとう」
「ありがと」
妹の明良子は先月まで行われていた囲碁のプロ試験に無事合格した
しかも女流枠でなく正棋士だ。
さすがあの両親の娘、五冠である兄の妹だ。
「でも一敗しちゃったんだよね。五十嵐に最終戦で敗けちゃった。
明良子が燃えていた。
五十嵐君は同い年の院生仲間の男の子で、明良子にとって絶対負け
(なんか両親を見てるみたいで微笑ましい…)
「まもなく開始時間になりますのでご移動お願いします」
スタッフの合図で参列者は教会の方に移動する。
私と大樹さんと私の両親の4人だけになった。
花嫁にベールを掛けるのは母親の役目だからだ。
「明菜…、大樹さんと一緒にいい家庭を築いてね。本当におめでと
と言いながらお母さんが掛けてくれる。
「うん…、ありがとうお母さん。今まで大事に育ててくれて…あ
お母さんが涙ぐむ私の肩を優しく撫でて…微笑んでくれた。
「大樹さん、明菜をよろしくお願いします」
「はい、大切に預からせていただきます」
時間になり、お母さんと大樹さんも先に教会へと向かった。
私とお父さんだけが最後に残る。
「まさか明菜が19で結婚してしまうなんてなぁ…」
「結婚するの…許してくれてありがとう。本当に嬉しかった…」
「相手が同級生の野郎なら絶対許してないけどな。大樹君は明菜に
「うん…、私もそう思う。でも、いつまでもそうは言ってられない
「ん…、頑張れよ」
教会の扉前に移動した私達。
ついに扉が開いて、音楽が鳴り出した。
お父さんと一緒に、壇上までの真っ直ぐなバージンロードをゆっく
皆がこっちを見ていて緊張する。
とっても恥ずかしかったけど、壇上前にいる彼の姿が見えると、不
(大樹さん……)
むしろ走り出したくなってしまった――彼の元へ。
去年の今頃はまだ受験でいっぱいいっぱいだった私。
まだ高校生で、彼と付き合ってもいなかった。
告白された2月。
初めて体を合わせた4月。
プロポーズされた6月。
入籍して一緒に住み始めた8月。
そして結婚式を挙げた12月の今日も、私達の大事な思い出として
壇上前に着き、お父さんから大樹さんへと渡された私。
音楽が切り替わり、結婚式がスタートした。
まずは讃美歌を斉唱して。
牧師さまが聖書の中の結婚式にふさわしい「愛の教え」を朗読し、
そしてお決まりの結婚の誓約を行う。
その健やかなるときも、病めるときも
喜びのときも、悲しみのときも
富めるときも、貧しいときも
これを愛し、これを敬い
これを慰め、これを助け
その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか――
私と大樹さんは順番に「誓います」と宣言した。