TIME LIMIT〜新婚編〜 12





次の日曜日。

家から車で15分くらいのところにあるシティホテルのブライダルフェアに大樹さんと行ってみた。


「わぁ…すごい」


専用コンシェルジュがまずはチャペルを案内してくれる。

自然光と緑溢れる木漏れ日感漂うチャペルは、厳かだけど温かみもあって見とれてしまった。

次に7つある披露宴会場を順番に案内してくれる。

実際に今日行われる結婚式の、開始前のセッティングされた状態も見せて貰えたり。

どの部屋もヨーロピアンクラシカルで素敵だ。

試食会では実際に披露宴で出されているというメイン料理までいただけたり。

最後にドレスも実際に着てみて模擬披露宴を行い、イメージを膨らませてみることになった。


(わぁ…すっごく綺麗)


「とてもお似合いですよ」

とヘアメイクを担当してくれたスタッフさんに褒められた。

確かに鏡に映った自分のドレス姿は私じゃないみたいだ。

少しばかりウットリしてると、鏡越しにタキシードに着替えた大樹さんが部屋に入ってくるのが見えた。


(ひぃ!めっちゃイケメンが来たーー)


その場にいた女性スタッフ全員が顔を赤らめていた。


私のドレス姿を見て、

「これはちょっと…」

と口籠る大樹さん。


「へ、変かな…?似合わない?」

「いや…、逆。最高だなって、思って」

「そう?えへへ…、大樹さんもすっごく似合ってるよ。モデルみたい…」

「ありがとう」


模擬披露宴中も記念に写真撮影をたくさんしてくれて、データまで貰ってしまった。

えへへ…、嬉しい。


 

 



「どうだった?初めてのブライダルフェアは」


車で帰路につきながら、大樹さんに感想を聞かれる。


「うん、楽しかった。あすこで式挙げてもいいくらい」

「そうだな」

「でも…、やっぱり大々的なのはしたくないかな。大樹さんの方はやっぱり病院の上司とか同僚とか呼ばないとマズい感じ…?」

「いや、そうでもないよ。一ノ瀬だって、病院関係者で結婚式に呼んでたのは俺と櫻井ぐらいだったし」

「そうなんだ…。じゃあ家族だけでもいい…?」

「いいよ」

「それだったらあすこで挙げてもいいかな…」

「他の式場も見なくてもいい?」

「うん、別にいい。すごく雰囲気よかったし、料理も美味しかったし、スタッフも優しかったから」

「そうだな。じゃあ進めていこうか」

「うん♪」



結局結婚式は大学が冬休み入った年末に挙げることになった。

家族しか呼ばない小さなお式だけど、ドレス、料理、装花、引出物…と決めることはたくさんあって、なかなか大変だった。

でも、大樹さんと一緒に準備出来たからすごく楽しかったし、何より安心感が半端ない。


姉と兄の合同結婚式ぐらいしか結婚式に参加したことのない私。

でも大樹さんはさすが結婚適齢期な年齢だけあって、お友達の結婚式にも結構頻繁に呼ばれている。

だからその時の体験談を元にアイデアやアドバイスもたくさん出してくれて、すごく頼もしかった。

人生経験の豊富さは、年上と結婚した場合の一番のメリットかもしれない。

だからって別に押し付けるでもなく、私の意見を一番に尊重してくれる優しい旦那さまに、幸せだな〜って思う。


「なに?」

パソコンで席次表を作ってくれてる頼もしい旦那さまに、私は後ろからぎゅーっと抱き着いた。

「ううん…、大樹さんと結婚出来て幸せだなぁって…、改めて思って」

「それは俺もだよ。明菜と結婚出来て、今までの人生で一番幸せを感じてる」

「ホント?」

「うん」

「国家試験受かった時より?」

「もちろん」

「…初めて彼女が出来た時より?」


そう言うと大樹さんはちょっとだけビックリしたような顔になって

そしてすぐに、くすりと笑って

「そんなの、比べものにならないよ…」

と彼はキスしてくれたのだった――


 

 

 

 



クリスマスも終わって大学も冬休みに入った年末。

私は朝からホテルでヘアメイクに追われていた。

いよいよ今日が結婚式当日だからだ。


準備が整った頃、大樹さんが私の控え室に入ってきた。

私のウェディングドレス姿を見て、また絶句している。


しばらく間が開いた後、

「すごく綺麗だよ…明菜」

と褒めてくれた。

「えへへ…ありがとう。大樹さんもすっごく素敵。めっちゃカッコいい…」

「ありがとう」


うん、これはマジで。

お世辞抜きで。

普通にウェディングプロモーションのモデルに使われそうなレベルだ。




コンコン

控え室に誰かやってきた。


「明菜、須本さん、結婚おめでとう!」

と千明お姉ちゃんファミリーだった。

もちろん18ヶ月の綾ちゃんもドレスアップして来てくれて、一ノ瀬お義兄ちゃんに抱っこされていた。


「綾ちゃん今日は一段と可愛いね〜v」

ニコニコ笑顔を向けてくれる綾ちゃんは私の天使だ。


「おめでとう須本」

「ありがとう」


私が綾ちゃんにメロメロになってる間、大樹さんは義兄とずっと話していた。

大学時代からの親友の二人は今や義兄弟だ。



コンコン


「明菜ちゃん大樹さんおめでと〜!」

続いて入ってきたのが明人お兄ちゃんファミリー。


「明菜ちゃんめっちゃキレ〜イ!若さが眩しいわね〜」

と美鈴お義姉ちゃん。

「おめでとう明菜」

と明人お兄ちゃん。

ちなみに大樹さんと兄は初対面だ。


「初めまして、進藤明人です。この度はおめでとうございます」

「初めまして、須本大樹です。ありがとうございます。進藤五冠にお会いできるなんて光栄です」

春に十段を奪取して五冠になった兄に、元囲碁部の大樹さんは普通に興奮していた。


ちなみに兄は今日はベビーカー持参だ。

ベビーカーの中を大樹さんと一緒に覗くと、まだ生後半年の姪っ子、鈴音ちゃんがスヤスヤ眠っていた。

6
月に生まれたばかりの兄の第2子だ。


「可愛いな」

「うん、すっごく…」

大樹さんが赤ちゃんを見て微笑んでいる。

さすが小児科医なだけあって、子供好きなんだろうなって思う。

順調にいけば私が24歳になったら子供を作ろうと言ってくれてる大樹さんだけど…、正直そこまで待たせてしまってちょっと申し訳なく思う。

だって、もしもっと歳の近いお嫁さんを貰っていたら、きっとすぐにでも子供が作れたからだ。


「大樹さん…、本当はもっと早く子供が欲しいんじゃない?」

「え?」

24歳まで待つの…嫌じゃない?」


ドキドキしながら私が尋ねると、大樹さんはくすりと笑ってくる。


「嫌じゃないよ。楽しみは後に取っておきたいタイプだから」

「本当に?無理してない?」

「うん。それまでは俺が明菜を独り占め出来るしな」

「大樹さん…」


キュンとなる。

私の旦那さまはなんて素敵な人なんだろう。

この人の子供を早く産みたい。

たくさん遺伝子を残してあげたいと、本能的に私はそう思ったのだった――


 

 

 

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