TIME LIMIT〜帰省編〜 2〜明人視点〜





今年もお盆は美鈴ちゃんの実家に帰省したオレら家族。

 

年末年始以来、7ヶ月分ぶりだ。

 

 

 

 

 

 

「あ、起きた?」

 

公園に子供達を連れて遊びに行った後、うっかり一緒に寝てしまったオレ。

 

ダイニングに行くと、美鈴ちゃんとお義母さんが一緒に夕飯の準備をしていた。

 

 

「ゴメン、寝ちゃってた…。オレも手伝うよ」


「大丈夫だよ。明人君はゆっくりしてて」

 

「…じゃあちょっとネット碁しててもいい?」


「うん。もちろん」

 

 

美鈴ちゃんがお義母さんに、

 

「ネット碁は世界中の人と打てるんだよ」

 

と説明してくれる。

 

「帰ったらすぐ防衛戦だからね。何日も囲碁から離れると感覚が鈍るみたい」

 

「あら、大変なのねぇ」

 


帰省は毎回34日だ。

 

美鈴ちゃんの実家は、ノンストップで高速で5時間かかる距離にある。

 

子供達が小さい為、サービスエリアの度に休憩する事になるので、8時に出発しても到着はいつも15時を過ぎてしまう。

 

実質実家にいられるのは丸2日しかない。

 

本当はもっと長く滞在してあげたいけど、棋戦のスケジュール的に中々難しい。

 

 

(申し訳ないな…と思う)

 

 

2日制のタイトル戦だと移動日も含めると毎回4日間も美鈴ちゃんにワンオペさせてしまっている。

 

国際棋戦ともなると1週間近く留守にすることも多い。

 

美鈴ちゃんは「全然大丈夫だよ」といつも言ってくれるけど、絶対に大丈夫じゃないと思う。

 

 

(あの一ノ瀬義兄さんですら、ワンオペは参ってたくらいだしな…)

 

 

実は姉夫婦が離婚危機だったと美鈴ちゃんから聞いた時、他人事ではない気がした。

 

オレだって、家事も育児もいつも美鈴ちゃんに任せきりで、頼ってばかりだからだ。

 

だからオレが家にいる時くらいはちょっとでも休んでほしい。

 

だから女子会なんて大大大歓迎だ。

 

友達に愚痴りまくって、存分に息抜きしてきてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

 

夕食の時間になり、息子が手を合わせて食べ始めた。

 

来年の春から幼稚園に通うことになってる息子は、もう大人と同じものが食べられる。

 

オレが息子の食事の手伝いをして、美鈴ちゃんが娘に離乳食をあげる様子を、義両親はニコニコしながら見ていた。

 

 

「遠いのに、顔を見せに帰って来てくれてありがとう」と言われる

 

「裕斗なんて、もう3年は帰って来てないのよ」と。

 

 

裕斗さんは美鈴ちゃんのお兄さんの名前だ。

 

美鈴ちゃんより4歳年上で、確か今は茨城かどこかに住んでるらしい。

 

ちなみにまだ独身らしかった。

 

 

「お兄ちゃんて結婚しないの?」

 

「さぁねぇ…、なんせ帰って来ないし連絡も来ないからさっぱり分からなくて。こっちから電話してもなかなか出てくれないし」

 

「ふぅん…。まぁ元気にしてるならいいけど」

 

「そうよねぇ…、生存報告くらい欲しいものだわ」

 

 

 

 

 

 


夕飯の後は子供達をお風呂に入れて、寝る準備に入る。

 

でも普段と違う場所なので興奮して目が冴えてるのか、リビングを走り回って元気いっぱいだ。

 

何とかドライヤーもハミガキも終わらせて、布団の準備をしてくれている和室に引っ張っていく。

 

今から家から持ってきたお気に入りの絵本で朗読タイムだ。

 

30分くらい読んでやると、ウトウトしだし、やがて二人とも眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

「やっと寝たね〜」

 

と美鈴ちゃんがオレのすぐ横に移動してきて、体を密着させてきた

 

ドキッとなる。

 

「ねぇ明人君…、しよっか」


「え?!で、でも…、さすがにお義父さんお義母さんもいるのに…」


「大丈夫。子供達を寝かしつけてるこの部屋に、二人が入ってくることはもうないから…」


「で、でも…、声とか…」


「出さないように我慢するから。ね?」

「……」

 

 

美鈴ちゃんに誘われて、オレが断れるわけがない。

 

何せ昨日まで防衛戦で、3日も留守にしていたのだ。

 

美鈴ちゃんに触れるのは4日ぶりなのだ。

 

ガバっと起きて、直ぐさまカバンからゴムの箱を取り出したオレを見て、美鈴ちゃんがクスッと笑ってくる。

 

 

「ふーん…、持ってきてるってことは明人君も期待してたんだ?

 

「…一応」

 


もしかしたらという期待も込めて持参したオレに、

 

「明人君可愛すぎ。もう大好き!」

 

と彼女が抱き着いて、布団に押し倒してきた。

 

 

「オレも大好きだよ…」


「明人君…」

 


ゆっくりと顔を近付けて…キスしたオレら。


それから数時間、4日ぶりの逢瀬を楽しんだのは言うまでもない――

 

 

 


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