●TIME LIMIT〜帰省編〜 2●〜明人視点〜
今年もお盆は美鈴ちゃんの実家に帰省したオレら家族。
年末年始以来、7ヶ月分ぶりだ。
「あ、起きた?」
公園に子供達を連れて遊びに行った後、うっかり一緒に寝てしまっ
ダイニングに行くと、美鈴ちゃんとお義母さんが一緒に夕飯の準備
「ゴメン、寝ちゃってた…。オレも手伝うよ」
「大丈夫だよ。明人君はゆっくりしてて」
「…じゃあちょっとネット碁しててもいい?」
「うん。もちろん」
美鈴ちゃんがお義母さんに、
「ネット碁は世界中の人と打てるんだよ」
と説明してくれる。
「帰ったらすぐ防衛戦だからね。何日も囲碁から離れると感覚が鈍
「あら、大変なのねぇ」
帰省は毎回3泊4日だ。
美鈴ちゃんの実家は、ノンストップで高速で5時間かかる距離にあ
子供達が小さい為、サービスエリアの度に休憩する事になるので、
実質実家にいられるのは丸2日しかない。
本当はもっと長く滞在してあげたいけど、棋戦のスケジュール的に
(申し訳ないな…と思う)
2日制のタイトル戦だと移動日も含めると毎回4日間も美鈴ちゃん
国際棋戦ともなると1週間近く留守にすることも多い。
美鈴ちゃんは「全然大丈夫だよ」といつも言ってくれるけど、絶対
(あの一ノ瀬義兄さんですら、ワンオペは参ってたくらいだしな…)
実は姉夫婦が離婚危機だったと美鈴ちゃんから聞いた時、他人事で
オレだって、家事も育児もいつも美鈴ちゃんに任せきりで、頼って
だからオレが家にいる時くらいはちょっとでも休んでほしい。
だから女子会なんて大大大歓迎だ。
友達に愚痴りまくって、存分に息抜きしてきてほしい。
「いただきます」
夕食の時間になり、息子が手を合わせて食べ始めた。
来年の春から幼稚園に通うことになってる息子は、もう大人と同じ
オレが息子の食事の手伝いをして、美鈴ちゃんが娘に離乳食をあげ
「遠いのに、顔を見せに帰って来てくれてありがとう」と言われる
「裕斗なんて、もう3年は帰って来てないのよ」と。
裕斗さんは美鈴ちゃんのお兄さんの名前だ。
美鈴ちゃんより4歳年上で、確か今は茨城かどこかに住んでるらし
ちなみにまだ独身らしかった。
「お兄ちゃんて結婚しないの?」
「さぁねぇ…、なんせ帰って来ないし連絡も来ないからさっぱり分
「ふぅん…。まぁ元気にしてるならいいけど」
「そうよねぇ…、生存報告くらい欲しいものだわ」
夕飯の後は子供達をお風呂に入れて、寝る準備に入る。
でも普段と違う場所なので興奮して目が冴えてるのか、リビングを
何とかドライヤーもハミガキも終わらせて、布団の準備をしてくれ
今から家から持ってきたお気に入りの絵本で朗読タイムだ。
30分くらい読んでやると、ウトウトしだし、やがて二人とも眠り
「やっと寝たね〜」
と美鈴ちゃんがオレのすぐ横に移動してきて、体を密着させてきた
ドキッとなる。
「ねぇ明人君…、しよっか」
「え?!で、でも…、さすがにお義父さんお義母さんもいるのに…」
「大丈夫。子供達を寝かしつけてるこの部屋に、二人が入ってくる
「で、でも…、声とか…」
「出さないように我慢するから。ね?」
「……」
美鈴ちゃんに誘われて、オレが断れるわけがない。
何せ昨日まで防衛戦で、3日も留守にしていたのだ。
美鈴ちゃんに触れるのは4日ぶりなのだ。
ガバっと起きて、直ぐさまカバンからゴムの箱を取り出したオレを
「ふーん…、持ってきてるってことは明人君も期待してたんだ?
「…一応」
もしかしたらという期待も込めて持参したオレに、
「明人君可愛すぎ。もう大好き!」
と彼女が抱き着いて、布団に押し倒してきた。
「オレも大好きだよ…」
「明人君…」
ゆっくりと顔を近付けて…キスしたオレら。
それから数時間、4日ぶりの逢瀬を楽しんだのは言うまでもない――