●TIME LIMIT〜学歴編〜 おまけ●

※櫻井君の弟の結婚式(愛視点)





「そういえば今度弟の結婚式があるんだけど、愛も参加してくれないかな?」

「結婚式?弟さんの?」



ある日のデート中、慎一さんが突然思い出したかのように言い出した。

弟?

そういえば慎一さんの家族構成すら知らなかった自分に驚く。


「もちろんいいよ。いつ?」

「6月10日の日曜なんだけど」

「分かった。その日はバイト入れないようにするね」

「ありがとう」


結婚式は明菜ちゃんの時以来だ。

でもあの時は食事会はご家族だけだったから、挙式しか出なかった私。

披露宴まで参加するのは、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。


「でも慎一さん、弟さんいたんだね。何歳?」

「俺より6つ下だから…、今26かな」

「へー。やっぱり弟さんもお医者さんなの?」

「うん。この春に研修医が終わって、病理医の道に進むらしいってこの前母さんが言ってたな」

「病理医なんだ。じゃあ奥さんも医療関係?」

「いや、奥さんは確かフラワーデザイナーだよ」

「フラワーデザイナー?」

「どこかのホテルで結婚式のブーケとか装飾を担当してるらしい」

「へー!」


女の子が憧れる素敵な職業だ。

でも病理医とフラワーデザイナーが仕事で接点があるとは思えない。

やっぱり出会いは大学なのかな?

それとも私達みたいに友達の紹介?

まさか合コンじゃないよね?


「どこで出会ったんだろうね」

「お互いの実家が近所で、昔からの付き合いだから」

「幼なじみってこと?」

「そうなるかな…、小学校の時から弟が奥さんに熱を上げてたのは知ってたけど。いつの間に付き合ってたんだか」


慎一さんが意味深に笑う。

意外だったらしい。


「奥さんの方が4学年上でね。例えば小6の弟と高1の女子高生じゃ、どう見ても見込みないと思わない?」

「確かに…」


中1と高2。

中3と大1。

高3と大4……この辺りまでくるとようやくイケる気がする。


「じゃあ花嫁さんは30歳ってことなんだね。研修医が終わったばかりで結婚なんて早いなぁって一瞬思ったけど、奥さんの年齢を考えればいいタイミングかも」

「だから弟も結婚に踏み切ったんじゃないかな。研修医の時は年収も低いしね」


ちなみに年上の奥さんというものに、私は全く抵抗はない。

なぜなら私の推しである進藤明人五冠も、奥様と年の差婚をしてるからだ。

明菜ちゃん情報によると、奥様は慎一さんと同い年の32歳らしい。

23
歳の進藤五冠とは9つ開いているのだ。

(だから4歳差なんて余裕の余裕、誤差の範囲だ)


「あ。ちなみにオレ、もう一人弟がいて…」

「もう一人?!3兄弟ってこと?!」

「うん、そう。下の弟とは9つ離れてるから今23歳かな」


推しと一緒!!


「まだ医大生なんだけど、コイツも結婚式に彼女連れてくるらしいから、愛も気兼ねなく参加してもらって大丈夫だよ」

「う、うん…、分かった…」


ちなみに下の弟さんは大学の後輩と交際してるらしい。

後輩って言っても大学4年らしいから……結局は私が一番年下だ。


(絶対緊張するよ〜〜)










迎えた結婚式当日。

慎一さんが車で家まで迎えに来てくれて、一緒に会場ホテルへと向かった。


「綺麗だよ」


今日はもちろんパーティードレス姿の私。

今朝早く美容室でヘアメイクもしてもらった甲斐もあってか、慎一さんが褒めてくれる。


「ありがとう。慎一さんもとってもカッコいいよ」

「ありがとう」


結婚式なのでもちろんスーツに白ネクタイの彼。

スーツ姿を見るのは明菜ちゃんの結婚式以来で、カッコよすぎてドキドキする。

ちなみに、私はまだ一度も慎一さんの白衣姿を見たことがない。


(絶対カッコいいよね…、一度でいいから見てみたい…)


今年も夏休み前に病院実習がある私達看護学科2年生。

今度は成人看護の実習が主なので、産科は全然関係ないと思うけど、一目でいいから姿が見えたりしないかなぁ〜って、密かに願ってたりする。





「兄さん」


会場ホテルに着き、親族用の控室に入ると、慎一さんに向かって手を振る男性が一人。

年齢から見て、きっと下の23歳の弟さんだろう。


「へー、兄さんの彼女?」

「うん。惣田愛さん」


慎一さんが紹介してくれたので、

「惣田愛です。今日はよろしくお願いします」

とペコリとお辞儀をした。


「弟の仁です。こっちは彼女の林谷凛」

弟さんの彼女はとっても知的な美女だった。

それもそのはず、弟さんも東大医学部在学中で、この彼女さんも医学部の後輩だからだ。


(ひいぃぃ…、私だけ絶対場違いだよぉ…)


「兄さん、愛さんていくつ?凛より若いよね?」

「19だよ」

「19?!兄さん、19歳と付き合ってるの?!正気?!」

「めちゃくちゃ正気。愛が大学卒業次第、結婚するつもりだから」

「へ、へぇ…」


弟さんが顔をちょっと引きつらせていた。

そりゃそうだ、32歳の兄が、19歳との結婚を考えてるなんて、普通はそういう反応になるだろう。


(どうしよう…、この状況なのに顔がニヤけちゃう…)


慎一さんが結婚するつもりだから、だって。

えへへ、本当にそうなったらいいなぁ♪





挙式の時間になり、私達は教会へと移動した。

まずは新郎が入場してきて、そして新婦が父親と一緒に入場してくる。


(わぁ…、素敵…)


真っ白のウェディングドレスを身に纏った新婦さんは、ものすごく綺麗だった。

もちろん初対面の人なので、明菜ちゃんの結婚式ほどの感動はない。

(あの時は新婦の父も当然ながらヒカル先生だったのでヤバかった…鼻血が出そうだった)

でも指輪交換も、誓いのキスも、羨ましくてガン見してしまう私がいた。

新郎の弟さんが、ちょっと慎一さんに顔も雰囲気も似ていたせいもあるのかもしれない。


(いいなぁいいなぁ〜、私もいつかこんな結婚式を挙げたいなぁ…)


チラリと慎一さんの方を見ると、目が合った。


「何か羨ましいね…」

「そうだな。オレも早く愛と永遠の愛を誓いたいよ」

「わ、私も…っ」


慎一さんに右手を握られる。

その手の薬指には彼から貰った指輪がしてある。

前方の新郎新婦みたいに、左手に指輪をする日が待ち遠しくなった。







披露宴での私の席は、慎一さんのご両親とも同じテーブルの、めちゃくちゃ家族席だった。


「愛さん、来てくれてありがとう」

と彼のお母さんにお礼を言われる。

「いえ!本日はおめでとうございます!」


ご両親に会うのは2度目だ。

前にお会いした時は慎一さんのお見合いをめちゃくちゃ謝られてしまって、返って恐縮してしまったものだ。


(でもお陰で推しと打てたから、アレはアレで最高の思い出になった……ふふ)



「兄さんて、愛さんとどこで出会ったの?」

慎一さんの隣に座っていた弟さんが、慎一さんに尋ねた。

「同僚の須本の紹介」

「え?!それってT医科大の小児科医の須本大樹先生?!」

「そうだけど」

弟さんは須本先生を知ってるみたいだった。

「オレ、須本先生に憧れて将来小児科医目指そうと思ってるんだよね」

「へー。いいんじゃない?」


弟さんによると、去年の11月に医師会主催で医学生と若手医師の討論会が開かれたらしい。

その若手医師の中にロールモデルとして須本先生がいて、弟さんは話す機会があったのだとか。

須本先生のことを熱く語る弟さんは、何だか慎一さんに少し似ていて微笑ましくなった。


「オレ、研修医マッチングもT医科大で希望出そうかな」

「いや、それはやめてくれ」

兄弟で同じ職場はさすがに慎一さんも嫌らしかった。


「愛さんは須本先生とどういう関係なの?」

弟さんが私に聞いてくる。

「えっと、須本先生の奥さんと友達で…」

「あ、なるほどね」


 

 




披露宴も恙なく終わり、帰りもまた家まで車で送ってもらうことになる。


「いいお式だったね。弟さん夫婦、幸せそうだったね」

「そうだな」


慎一さんの兄弟や親戚にもお会い出来た今日は、また一つ彼のことを知れたいい日になった。


「あ、私も今度、妹を紹介するね」

「愛は妹がいるんだ?」

「うん。3つ年下の高校2年生でね、最近浦高の彼氏が出来たんだって」

「へー、オレも浦高出身だよ」

「そうなの?」

「うん」



家に到着して、シートベルトを外したタイミングで、慎一さんが私の頬に触れてきた。

会うのが1週間ぶりだった私達。

今日一日ずっと我慢してたのだけど、私だって彼に触れたかった。

傾けた彼の顔が近付いてきて――甘いキスが落とされる。


「――……ん……」


こんな家の真ん前で。

誰かが通るかもしれない、誰に見られるか分からないこんな場所で、少しばかり無我夢中で口内を貪り合った。


「…は…、慎一さん…」

「愛……」

「来週はおうちデートにしようね…」

「うん…賛成だ」


最後にギュッと抱きしめ合って、私は車から降りた。


「今日はありがとう」

運転席のドア越しに改めて慎一さんからお礼を言われる。

「ううん、私も結婚式楽しかった」

「じゃ、また連絡するな」

「うん♪」


慎一さんの車が見えなくなるまで、手を振り続けた。



「ただいま」

家に入ると、

「お帰り〜。お姉ちゃん、見たよ〜〜彼氏とチューしてるとこ!」

とリビングの窓から妹にバッチリ見られてたことを知る。

「え?!///」


とりあえずお父さんが留守でよかったと思ったのでした――



 

 


―END―



 

おまけ(妹視点)

 

 


以上、櫻井君の弟の結婚式に参加する二人のお話でした〜。
櫻井君は3兄弟なのです。愛ちゃんは2人姉妹です。
ちなみに3兄弟、3人とも東大医学部よ。ちなみに櫻井父もね。

医師会に頼まれて若手医師と医学生の討論会に出た須本君。
仕事ぶりは医師会も推薦するほどの若手小児科医の中で飛び抜けた存在の須本君なので、櫻井弟以外にも憧れを持った医学生はたくさんいたらしいです(笑)
T医科大に研修医希望出す医学生、めっちゃ増えそうw
櫻井弟も兄に反対されましたが、そんなの知ったこっちゃなく普通に希望出してきそう(笑)
でもって須本君の指導を受ける弟にヤキモチ焼いてそうな櫻井君が目に浮かぶわ〜w
ローテートで産科に弟がやってきた時には、めっちゃ厳しく指導してそうな櫻井君がいそうだわ〜(笑)