TIME LIMIT〜学歴編〜 おまけ

愛の高校時代の囲碁友達、奈々緒ちゃん視点です(名前初登場はこちらから)





「うわ、惣田のやつまたアップしてるわ」



高校の時の友達2人と久しぶりの女子会にやって来た。

1
人が愛のSNSアカウントの更新を知って、声を上げる。

私も携帯で確認してみると、確かに5分前にアップされていた。

今回は『Wデートでヌン活』らしい。



「惣田さんって誰だっけ?」

もう1人が首を傾げた。

「ほら、2年の時同じクラスだったじゃん。囲碁ばっか打ってた地味女だよ」

「あー…いた気がする。確か全国優勝とかしてたよね」

「そうそう。友達の友達からアカウントが回って来たんだけど、惣田の奴、大学入って彼氏出来たみたいなんだよね」

「へー。それをSNSにアップしてるんだ」

どれどれ…とその子も愛のアカウントを教えて貰って見始めた。


「タイトルがウケるね。『恋人が出来たらしてみたかったことリスト』ってw」

「初カレに舞い上がってる感満載でしょ」

「あ、でも普通に美味しそうこのアフタヌーンティー。どこのだろ…」


今の時代、調べればすぐに特定出来る。

このイチゴがふんだんに使われた可愛くてオシャレなアフタヌーンティーは、赤坂のシティホテルのものだった。


「はぁ?!土日9000円もするんだけど!高くない?」

「高いね…、私の彼だったら絶対一緒に行ってくれないよ…」

「だよねー。9000円あったら違うことに使うわ」

「惣田さんの彼氏って社会人なのかな?」


過去の投稿を見ると、所々で彼氏も登場してるが、どれも体の一部分しか写ってないのだ。

直近の『相合傘』でも、傘で上半身は隠れてしまっていた。


「奈々緒って惣田と仲いいよね?囲碁部だったし」

「まぁね…。でも今はほとんど会ってないよ」


7
月に彼氏が出来た私。

休みの日は基本彼と過ごすことになってしまった為、愛と打つこともほとんどなくなってしまった。

更に愛に彼氏が出来てからは、まだ一度も会っていなかった。


「ね、惣田の彼氏がどんなのか見てきてよ」

「え?」

「私達ともWデートしよって誘えば会えるんじゃない?」

「んー…どうだろ。聞いてみようか?」


早速愛にメッセージアプリを送ってみた。

するとすぐに

『奈々緒ちゃん久しぶり!いいよー!彼に予定聞いてみるね!』

と純真な返信が送られてきて、良心が痛む。


「どんな彼氏だったか報告してよね!」

何なら写真の1枚でも撮ってきて、と言われこの会話は終了した――


 

 

 



W
デートということは私の方も彼氏を連れて行かなければならない。


その晩、彼にその旨を電話で伝えると、

Wデート?面倒くせ…』

と言われてしまう。


「お願い♪私、ずっとしたいな〜って思ってて、ようやく友達にも彼氏が出来たみたいなんだよね」

『はぁ…、分かったよ』

「ありがとう、湊君」


私の初めての彼氏である石川湊君は、私と同い年で、この4月から大学2年生だ。

しかもK大の薬学部で、将来の夢はもちろん薬剤師という私には勿体ないくらい頭もよくてカッコいい自慢の彼氏だ。

大学の友達の紹介で出会ったわけだけど、もうこれだけで今の大学に進学してよかったと思ったものだ。

愛の彼氏はどんな人なんだろう?

ま、私の彼氏の方が絶対100倍いいに決まってるけどね!


 

 

 

 



W
デート当日。

結局ランチデートにして、ひたすらお喋りすることにした私達。

待ち合わせ場所のカフェに行くと、半年ぶりに会う親友の姿が。


「愛♪お待たせ〜」

「奈々緒ちゃん久しぶり!」


お互いキャアキャアと手を取り合ってしまった。

チラリと愛の横に座る彼氏を見た。


(え…っ!めっちゃイケメンなんだけど…!!)


ちょっとビックリして声を失う。

どこで見つけて来たの??てぐらい芸能人ばりのカッコよさ。

立ち上がって「初めまして」と軽くお辞儀されて、その身長の高さにも驚く。

(絶対180あるよね?!)

そしてめちゃくちゃ大人っぽい。

というか……大人だ。

(さすがあの9000円のアフタヌーンティーに行くだけのことはある…)



ひとまずランチを注文し終えた後で自己紹介に入る。


「えっと、紹介するね。彼氏の櫻井さん」

「初めまして、櫻井です」

「初めまして…、愛の友達の守野奈々緒です。こっちは彼氏の石川君」

「初めまして。石川です」


とりあえず気になったことを聞いてみる。


「櫻井さんって…、おいくつなんですか?」

32です」


32
?!マジで?!全然見えん!20代でも全然いける!

じゃなくて……愛が一回り以上も年上の人と付き合ってることに驚く。

(話とか合うのかな…)


「お仕事は何をされてるんですか?」

「……医療関係ですね」

「あ、もしかして愛の大学で出会ったとか?」


愛は看護師志望で、医科大学に通っている。

大学病院で実習もあるみたいだから、そこで出会ったんだろうか?


「まぁ…そうなるのかな。出会いは同僚の紹介だったけど」

「へぇ…」


こちらの紹介もする。

「私達は愛と同じ大学2年生で、私はM大に通ってて、湊君はK生です」

K大だって、すごいね慎一さん」

素直な愛が純粋な感想を述べて、彼氏に振る。

「…まぁな」


彼氏の方は微妙な反応だ。

全然すごいと思ってなさそうだった。

その反応には湊君も気付いたみたいだった。


「俺も将来医療の道に進もうと思ってるんですよ。薬学部なんです

「そうなんだ。2年からは専門科目が始まって、実験とかレポートとか大変になってくるけど頑張って」

「…櫻井さんも薬学部出なんですか?」

「違うけど」

「でも何か詳しそうですよね」

「まぁ薬剤師とは毎日のように話すからね。処方提案や代替薬の依頼もしょっちゅうだし」

お互い薬の専門家として患者にとって最適な治療を行う為には協力不可欠だよな、と……


「櫻井さんって……もしかして医者なんですか?」

「…まぁね」

「え、すげ…、俺も本当は医学部目指してたんです…」




―――え?




湊君からそんなこと一言も聞いてなかった私は、寝耳に水だった。


「でも学力がちょっと足りなくて…、薬学部にシフトした口です」

K大薬学部受かるなら、ワンチャン私立の医学部狙えたんじゃない?」

「いやでも…、学費が」


地方の国立医学部ももちろん受けたけど、それは推薦も前期も後期も全落ちしたらしい。

浪人する余裕はなく、仕方なく薬学部にシフトしたらしかった。


(全然知らなかった…)



「櫻井さんは大学はどこ出てるんですか?」

「…東大」

「「はぁ??!」」


ビックリしすぎて思わず湊君とハモってしまった。

(そりゃK大で微妙な反応するわけだわ…)


「すご…、何かもう人生イージーモードでしょ」

「いや…、そうでもないよ。一緒に学びたかった奴が九大行っちゃって、やっぱり後期で受けた方がよかったかもって…いまだに後悔してるし」

「いやいや、前期で東大受かってるのに後期で九大受けるとか意味不明ですよ…」

愛もそのことは知ってたみたいで、「今一緒に仕事できてるんだからいいじゃない」と慰めていた。





注文してたランチセットが運ばれてきて、皆でいただくことにする

湊君は櫻井さんが産科医だと聞いて、興味津々そうに不妊治療の新薬の処方について聞きまくっていた。


帰り際も

「俺、医学部諦めたことずっと引っかかってたんですけど、櫻井さんと話せて薬学の道に前向きになれました」

ありがとうございました、とお礼を言っていた。

私の方も愛にお礼を言う。


「今日はWデートしてくれてありがとう。愛が元気そうでよかった」

「奈々緒ちゃんも。今度は二人で遊ぼ♪」

「そうだね、久しぶりに打とうか」

そう告げると愛の顔がぱあっと明るくなった。


(相変わらず可愛い子だ…)


昔から顔も性格もものすごく可愛かった愛。

まさか一回り以上も年上の医者と交際してるなんて思わなかったけど。


でもお会計の時、愛は自分の分を自分で払っていて驚いた。

バイトしてるとは聞いていたけど、私なら絶対医者の彼氏に奢ってもらうと思うからだ。

きっと愛は医者だから櫻井さんと付き合ってるんじゃないんだろう

きっと彼がどんな職業だったとしても、彼を選んだんだろうと推測する。

そんな彼女だからきっと選ばれたのだ。


(私はどうだろう…)


湊君がK大じゃなくても彼に惹かれただろうか。


(うん…、きっと惹かれた)


学歴ももちろん大事だけど。

それよりも挫折を乗り越えて、未来に向かって頑張ろうとしてる今の前向きな彼が眩しいからだ。

傍でずっと応援したくなった――


 

 

 

 



後日、前の女子会のメンバーでまた集まることになった。


「惣田の彼氏、どんな奴だった?」

と聞かれた私は正直に答えた。


「ヤバかったよ〜」

「どんな風に?」

「超イケメンで、高学歴高身長な医者だった!」

「「マジで?!」」


2
人が羨ましがって、愛のことを見直したのは言うまでもない話だ――

 

 

 


END



 

 


愛ちゃんは絶対に奢らせてくれない女なので、櫻井君ももう諦めてるのです。

「でもその代わり、オレが予約したレストランやホテル代はオレに出させてくれる?」
「う、うん…///(ホテル?!)」


K大で微妙な反応をする櫻井君。
なぜならK大医学部は櫻井君が滑り止めで受かってた大学だからです。ちなみに須本君も受かってます。
受験会場で実はすれ違ってる二人なのでした!(笑)
ちなみに一ノ瀬君が昔、千明と一緒の大学に行きたかったけど「K大医学部はさすがに無理」と言ってたので、滑り止めで受かってる須本君・櫻井君がいかにヤバいか分かるね!