TIME LIMIT〜大3編〜 4●





「一ノ瀬……」

「進藤……」



風呂から出た後も、直ぐ様ベッドで進藤と絡み合った。

もちろんきちんと避妊をした上でだ。

確かにもう21だし、最悪デキてしまっても何とかなるのかもしれないけど。

でも、進藤の提案のようにわざわざリスクを上げる必要はないと思う。

成人してるとはいえ、オレらはまだ親の保護下に置かれている無収入な学生だ……



「……ぁ……もう……」

「は……オレ…も……」


巧みに腰を打ち付けて、お互いクライマックスに近付いていく。

眼を開けると、涙を目尻に溜めたままぎゅっと眼を閉じて官能に浸っている彼女の姿があった。

その涙を舌で掬ってやる。


「ん……一ノ…瀬…」

「進藤……めちゃくちゃ可愛い…」

「だって……」


途端に恥じらう彼女がまた可愛くて。

止まらなくなる。

更に激しく突き上げて、そしてお互い登り詰めた。


「はぁ…は……一ノ瀬……」

「進藤……」


お互い汗ばんだ体でぎゅっと抱き締め合った。

再会の喜びを改めて肌で感じ会う。


「進藤……好きだ」

「私も……」



3
ヶ月ぶりの彼女。

もちろんお互いまだまだ満足出来ず、少し休憩した後にまた再開したことは言うまでもない――




 

 

 

 


「一ノ瀬…今日何か機嫌いいな」

「あ、分かる?実はさ〜」


翌日、オレは一限だけ講義を受けに大学に来た。

昨日はGW以来、3ヶ月ぶりに進藤が福岡にやってきた。

その隠しきれない喜びが顔に出ていたみたいで、教室に着くなり友達に突っ込まれる。


「え?マジで?例の遠距離の彼女が?」

「うん」

「まだ続いてたんだな…」

「そりゃそうだろ」

「へぇ…」


その友達、須本の顔が少しだけ暗くなる。

須本は千葉出身で、俺と同じく大学から福岡だ。

コイツにも高校の時から付き合っていて向こうに残してきた遠距離の彼女がいたが、去年のクリスマス前に突然フラれたらしい。

「あと4年以上も遠距離は無理!」

と彼女は自分の進学した大学で新しい恋人を作ってしまったらしいのだ。


「一ノ瀬はすごいよ……ちゃんと続いてて」

「……須本もそろそろ新しい彼女考えたら?」

「無理。こっちで彼女作ったところで、卒業したら俺地元に帰るつもりだし。また遠距離になるだけじゃん…」

「じゃあ同じ千葉県民な人を探してみるとか。首都圏まで範囲広げたら、この大学にもそれなりにいるだろ」

「……まぁなぁ」


いまいち気乗りしないらしい。

まぁコイツなら作ろうと思えばすぐに作れるだろうから、別に急ぐ必要は全然ないと思うけど。

(
何せ顔よし、頭よし、性格も悪くない、身長も高い。おまけに親は開業医で金持ち。最強だろ)


「…一ノ瀬の彼女ってどんなの?」

「え?」

「今来てるなら紹介してよ。俺の将来の彼女の参考にしたいし。ダメ?」

「いや…別にいいよ。進藤もオレの友達に会ってみたいとか言ってたし」

「じゃあ決まりな!今日の昼メシ誘ってみてよ」

「分かった」


早速携帯を取り出して進藤に連絡してみる。

するとすぐにOKの返事が来たので、俺らは大学近くのセルフカフェで合流することになった。

 

 


「進藤、こっち!」


約束の時間ちょうどに進藤がカフェに入って来たので、俺は手を挙げて合図した。


「一ノ瀬お待たせ。この人がお友達?」

「うん」

「初めまして、進藤千明です」

進藤がニコリと挨拶すると、いつもは自信たっぷりな須本が途端にテンパり出した。

「あ、えっと、初めまして…、須本大樹です…」


でもって俺は何故か須本に頭をゴツンと殴られる。

「一ノ瀬…、オマエの彼女がこんな美人なんて聞いてないんだけど!羨ましすぎだろこの野郎」と。

そして須本は

「進藤さん、お姉さんか妹さんはいらっしゃらないんですか?」

と聞いていた。

(おいおいおい…)


「あ、妹はいます」

「マジですか!ぜひ紹介して下さい!」

「あ…、でも妹はまだ8歳と1歳なんです。すみません…」

8歳…。はは…、じゃあ10年後にでもご縁があればよろしくお願いします…」


シュンとしていた。

とりあえず挨拶が一旦済んだので、進藤は自分の飲み物を注文しにカウンターへ。

須本は腕組みして何か考えてる。


「うーん…俺どこかで進藤さんみたいな人に会ったことあるんだよな…」

デジャブ…と唸っている。

「ふーん?どこで?」

「あ、思い出した。日本棋院だ。囲碁の塔矢アキラに似てるな、進藤さん」

 



―――え?

 


「正解…、すげぇなオマエ。進藤は塔矢アキラ女流五冠の娘だよ」

「え?マジで?ビンゴ?てことは進藤ヒカル六冠の娘ってこと?進藤ってその進藤?」

「うん。てか…驚いた。須本、日本棋院なんか何の用で行ったんだよ?」

「大会に決まってんじゃん。俺、中高と囲碁部だぜ?」

「あ、そうなんだ?」

「全国大会は毎年棋院で行われててさ、高3の時なんか個人戦で優勝してるからな俺」

「え、すげ」

「で、その時俺にメダルをかけてくれたのが審判してた塔矢先生だったってわけ」

「へぇ…」


進藤が注文したアイスカフェラテを手に席に戻って来た。

「何の話してるの?」

と聞かれたので、一部始終を伝える。


「あ、そうなんだ。お母さんからメダルをね…」

「進藤さんも囲碁は打てるんですか?確か弟君は今年入段してましたよね?」

「うん。私が打てるかって?」


くすりと進藤が笑う。


「一局手合わせしてみる?」

「ぜひぜひ」


大学に入ったばかりの頃、オレも進藤に同じ質問をしたことがある。

その時彼女はオレにこう言った。


『たぶん今受けたらプロ試験だって受かるよ』と――


(…須本…ご愁傷さま…)





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