TIME LIMIT〜大3編〜 5●





大学近くの碁会所に移動したオレら。


「「お願いします」」

と挨拶して、進藤と須本が一局打ち出した。

囲碁のルールすらよく分からない俺は、横でとりあえず観戦してみる。

どっちが勝ってるのかもサッパリ分からないけど、二人の表情を見ればどんな形勢なのかは一目瞭然だった。

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手も打てば須本は真っ青になっていたからだ。

高校の全国大会で優勝したというコイツと、プロ試験も受かると豪語した進藤との差は…きっと見る人が見れば歴然なんだろう。

事実、俺らの後ろで観戦していた碁会所の他のおじいさん達が、「この姉ちゃん強かね」と感心していた。

 


「……負けました」


須本が100手も打たずに投了した。

「久しぶりに打ったけど、鈍ってなくてよかった」

と進藤がホッとしていた。


「いやいや、進藤さん強すぎでしょ」

「須本さんも。大学でも囲碁部なんですか?」

「いや…、部活は入ってないよ。授業だけで精一杯」

「ふぅん…、一ノ瀬と一緒だね」


オレも須本も部活動には入っていない。

オレは12年の頃はバイトで忙しかったし、3年に入ってからは勉強だけで手一杯だからだ。

医学部は成績が悪ければ容赦なく留年となり、6年のストレートで卒業出来るのは毎年7割くらいしかいないと聞く。

そのうち医師国家試験に合格するのが9割だとしたら、入学から卒業まで6年で医者になれるのはたった6割の厳しい世界だ。

オレは絶対にその6割に入りたい。


「でもさすがに夏休みまで毎日こう勉強勉強だと息詰まるかな…。一ノ瀬みたいに彼女でもいればいいんだけど…」

須本が溜め息を吐いた。

「須本さんならすぐ見つけれそうですけど…」

「うーん…、どうかな…」


前の彼女とは遠距離が原因とはいえ、浮気されて別れてしまった須本。

高校の3年間ずっと付き合ってたらしいから、その分ショックも大きかったみたいで、別れてからもう8ヶ月も経つのに未だに次の恋愛に進もうとしていない。

気持ちは分かる。

オレだってもし進藤に浮気されて捨てられたら、1年は寝込むだろう。

いや、2年は立ち直れない気がする。

本気の相手であったならあっただけダメージは大きいからだ。


「まぁ…しばらく彼女はいいです。いざとなったら進藤さん、妹さんを紹介して下さい…」

「まだ8歳だけどね…」

10年あれば俺も立ち直れるかも…」

オレと進藤は顔を見合わせた。


とりあえず

10年後にまた考えようか…、須本」

ということで話は終わる。

 


「じゃ、一ノ瀬また月曜に」

「ああ」


須本と別れて、オレと進藤はスーパーに寄ってからマンションに帰った。

一緒に夕飯を作りながら、

「本当に明菜を紹介することになったらどうしようかな」

と進藤が笑ってきた。


「さすがにその頃には須本も彼女いるだろ。それどころか結婚してるかもしれないし…」

「そうだよね…、10年後がどうなってるかなんて誰にも分からないもんね…」

「オレは分かるよ。10年後も絶対進藤と一緒にいるって」

「一ノ瀬…」


ありがとう――と彼女が抱き着いて来た。

もちろんオレも直ぐさま抱き締め返す。


「私達…結婚してるかな?」

「たぶんな。子供も1人くらいいるかもな…」

「ふふ…そうだね」


夕飯の準備を一時中断し、オレらはベッドに移動することにした。

彼女の体を押し倒し、キスしながら触れていく。


「ん…、ん……」

オレらは今夜も何度も激しく絡み合うこととなった。

 

 

 

 


翌土曜日は進藤と一緒にデートに出かけた。

映画を観て、ランチして、買い物して、お茶して、そして夕飯の材料を買って同じ家に帰る。

毎回思うけど、進藤が福岡に滞在中はまるで新婚生活で、一緒に住んでるみたいだ。

もちろん新婚生活には欠かせないエッチなこともたくさんしまくる……ということで、翌日曜は朝から晩まで部屋でイチャイチャしてみた。


平日は相変わらず夏休みのくせに実習やら講義が入ってるので大学に行かなくちゃならないんだけど……

「ただいま」

「お帰り」

このたった二言の会話が異様に嬉しくて堪らなかった。

 


でも10日というのは長いようであっという間だ。

一緒に東京に帰る荷造りをしながら…少しばかりセンチメンタルになる。

東京には2泊だけ滞在するつもりだけど、お盆なのでオレはそのほとんどを実家で過ごす予定だ。

つまり向こうではほぼ進藤に会えない。

つまりずっと一緒にいられるのは今夜で最後だ。

そしたらまた…しばらく会えないのだ。


「進藤…」

荷造りする彼女を後ろから抱き締めて…髪に顔を埋めた。


「毎回思うけど…、遠距離ってこの時間が一番辛いよね…」

「うん…」

「早く一緒に住みたいね…」

「うん…」


早く東京に帰りたい。

遠距離を終わらせたい。

だからオレは絶対に6年で卒業するつもりだ、何がなんでも――

 

 


「ぁ…っ、ぁ…んっ、あぁ…っん」

「は…っ、は……進…ど…」


最後の最後は少しばかり避妊を外して、直に繋がってみた。

最近の別れ際のセックスはいつもそうだ。

もちろ中には出さず、ある程度満足したところで付けて、再び続きをする。


「ぁ……もう……」

「は…進…藤、…一緒にいこうか…」

「ん…、…あぁ…っ」

「……く……」


脱力した後はひたすらキスをして口内を貪り合う。

もちろん

「好きだ…進藤」

と愛を伝えることも忘れない。


好きだ。

愛してる。

早く結婚しような。


「うん……その日が楽しみ」

「オレも…」

 

こうして進藤の10日間の福岡滞在が終わった――

 

 



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