●TIME LIMIT〜大3編〜 2●





翌日、私は予定通り福岡に出発した。

無事福岡空港に着いて、いつも通り地下鉄で一ノ瀬のアパートの最寄り駅まで向かう。

一ノ瀬は夏休みに入っても結構実習や授業があるらしく、今日も帰りは夕方になるらしい。

でも大丈夫。

私は合鍵を持っているので、勝手に上がり込んでいつも通り好き勝手するつもりだ。






カチャ…


「お邪魔しまーす…」


3ヶ月ぶりの一ノ瀬の部屋。

いないのは分かってるけど、一応挨拶してから中に入った。

思ったより片付いている。

きっと昨日慌てて掃除したんだろうな…と笑いながらエアコンのスイッチを入れた。


「さてと…」


まずは冷蔵庫チェックだ。

何か食材はあるのだろうか、と開けてみると、見事に何も入ってなかった。

飲み物ばかり。

お水と牛乳と炭酸飲料と……それにビール?

ちょっと意外だった。

確かに一ノ瀬ももう21だけど。

私といる時はアルコールなんて一度も飲んでなかったからだ。

我慢していたのだろうか。

それとも最近飲み始めたのか……


とりあえず冷蔵庫には何もないことが分かったので、私は買い出しに近所のスーパーに向かった。

ひとまず今夜の夕飯と明日の朝ご飯の材料を買う。

暑いから今夜は冷しゃぶにでもしよう。

夏野菜をたくさん添えて。


買い物を終えてアパートに戻った私は、食材を冷蔵庫に入れた後、ベッドで一眠りすることにした。

楽しみ過ぎて昨日はあんまり眠れなかったのだ。

そして今夜もきっと眠れない。

一ノ瀬のベッドは彼の香りがして、まるで彼に包まれてるような気になる。

目を閉じるとあっという間に夢の世界に行ってしまった。

一ノ瀬の夢が見れたらいいなぁ…なんて……zzz













「進藤」


私を呼ぶ声が聞こえる。


「おーい、進藤」


これは……一ノ瀬の声……


「起きないとこのまま襲っちゃうけどいい?」


一気に目が覚めて、私はガバッと起きた。

しまった、完全に寝落ちしてしまった…!!


「おはよ」

「一ノ瀬…」


お帰りなさい……と小さく呟く。


「ただいま。あんまり昨日寝れなかった?」

相変わらずだな、と一ノ瀬が笑う。


「ごめん、すぐご飯作るね…」

「いや、後でいいよ」

「……え?」


ベッドから降りようとすると阻止されて、そのまま体重をかけられて倒された。

股がって、組敷かれる。


「先に進藤を食べたい気分だから」


かあぁ…と私の顔はもちろん直ぐ様真っ赤になる。


「一ノ瀬……」

「3ヶ月ぶりだな。会いたかった…」

「私も…」


お互い目を閉じながらゆっくり顔を近付けて――キスをして。

それをスイッチに私達はお互いを体で激しく求めあった。


「…ぁ…っ、一ノ…瀬…」

「…は……進…藤…」


生まれたままの姿で抱き合って。

一番大事な場所で彼を受け入れて、一番深いところで彼と繋がって、会えなかった寂しさを埋めていった。


「一ノ瀬…大好き…」

「オレもだよ…進藤。好きだ……大好きだ」

「一ノ瀬…」


達した後も、しばらく抱き締めあって余韻に浸る。

3ヶ月ぶりのこの行為はものすごく気持ち良くて…心地よくて。

これから10日間…出来るだけしたいなぁと思ったのだった。









「大学はどう?」


7時を回ってようやく体を離した私達。

夕飯の準備をしながら私は一ノ瀬に尋ねた。


「忙しいよ。でも去年よりはマシかな」

「そうなの?」

「去年はまだバイトもしてたし、何せ解剖解剖で精神的にもキツかった」

「げ…」


今日の夕飯は冷しゃぶだ。

お肉を扱ってる時に解剖とかいう単語は聞きたくなかった。


「試験の結果が悪かったら容赦なく留年だしな。結構落ちた奴もいたよ」

「へぇ…。でも確か来年また大きい試験あるんでしょ?」

「共通テストな。だから3年はまだ楽な方だよ」

「そうなんだ。じゃあ今年は頻繁に一ノ瀬に会いに来ても邪魔にはならなさそうだね…」

「は?邪魔なわけないだろ?」


直ぐ様台所にやってきた彼は、後ろから私を抱き締めてきた。

うなじにチュッとキスされる。


「オレが忙しくても絶対に来てくれよな。今の間隔でもオレ結構ギリなんだからな…」

「うん…私も3ヶ月が限界。それ以上開いたら発狂しちゃうかも…」

「オレも…」


彼にあっという間に唇を奪われて、私達は台所でしばらくの間キスをした。

沸騰したお湯が吹き出すまで――











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