TIME LIMIT〜明菜編〜 9〜明菜視点〜





昨日の一部始終を思い出して、私はまだ顔が赤いまま教室へ戻った


(結局夕方近くまでベッドの中にいたんだよね…)


何回もシてしまった。

お互い止まらなかった。

だから彼はさっき『体大丈夫?』と心配してくれたんだろう。

全然大丈夫だ。

しようと思えば今日だって出来るだろう。

もちろんそれは冗談だけど、近いうちにまた機会があればいいな〜と思った。


ちなみに私の左手には昨日須本さんから貰った腕時計がしてある。

「えへへ…嬉しい」

貰った時は色んな感情が渦巻いていたけど、今は純粋に嬉しいと思う。

一生大事にしよう。


 

 

 


「じゃあまずは一人ずつ自己紹介しましょうか」


看護学科は80名で40名ずつの2クラスに分かれていた。

私は1組で、さすが看護学科だけあって、ほぼ女子で女子高みたいだった。

男子はたった2人だけ。


「じゃあ次、進藤さん」

「あ、はい」

私の番になって自己紹介を始める。


「進藤明菜です。東京出身です。えーと、得意科目は日本史で、趣味はお菓子作りで、囲碁もちょっとだけ打てます。よろしくお願いします」


パチパチパチと拍手される。

続いて隣に座っていた子が自己紹介する。


「惣田愛です。埼玉出身です。得意科目は数学で、趣味は私も囲碁です。高校は囲碁部でした。よろしくお願いします」


囲碁のキーワードに、私はチラリとその子の顔を見た。

目が合って「よろしくね」とにこっと挨拶される。

(可愛い子だなぁ…)



ホームルームが終わると今日はもう解散となった。

でもいくつかもうグループが早速出来ていて、早くも「カラオケ行かない?」とか「どっかカフェ寄らない?」とか親睦を深め合っていた。

ど、どうしよう…私、出遅れた?と思ってると――


「進藤さんも一緒に行かない?」

とさっきの囲碁部の惣田さんに声をかけられる。

「あ、うん。どこに行くの?」

「大学病院の方のキャンパス見学。先輩が案内してくれるんだって

「あ…、うん。ぜひ」


何人かと一緒に2キロ先のもう一つのキャンパス見学に行くことになった。

地下鉄まで歩いて移動中、惣田さんが

「ねぇねぇ、進藤さんってもしかして囲碁一家の進藤さん?」

と聞いてくる。

囲碁一家?


「えっと、確かに両親も兄もプロ棋士だよ。お父さんは引退しちゃったけど…」

「わ、やっぱり!進藤明人四冠の妹さんなんだ」

すごーい!と拍手してくる。


「進藤四冠、今すごい勢いだよね。今戦ってる十段も奪取したら五冠だし」

「そうだね…」

「でも結婚してて残念〜。まだ22歳なのにー」

「はは…」


兄は結婚してから絶好調の戦績を収めている。

もちろん、父が引退したこともあるんだろうけど、それでもすごい勢いだ。

やっぱり守るものが出来たからなんだろうか。

それとも美鈴お義姉ちゃんが勝利の女神なんだろうか。


「進藤さんも少し打てるんだよね?さっき自己紹介で…」

「あ、うん。でもたぶんアマ四段くらいの実力しかないかな…」

「へー!」

「惣田さんはどれくらい?」

「私は六段くらいかなぁ」

「え、すごい」

「一応高校の3年間、全国大会で優勝してますから」

えっへんと彼女が得意げに腕組みする。


「進藤ヒカル先生は元気?」

「うん。今は保育園の送り迎えに命かけてる」

「え?!何それ!」


今月から一ノ瀬お義兄ちゃんが仕事に復帰したので、忙しい姉夫婦に代わり父が保育園の送り迎えを担当している。

今の父の生きがいだ。


そうこう話してるうちにもう一つのキャンパスに到着した。

こっちはほぼ医学科が使っているらしいが、大学病院に併設されてるので、実習の時に私達も来る機会が多いのだとか。

最後に大学病院のカフェで皆でお喋りすることになった。


「岡山出身なんだー」

「へー!お姉さんも同じ大学なんだね」

「え!山梨から通ってるの?!片道何時間?」


新しいクラスメートとお話するのは新鮮でとっても楽しかった。

30
分くらい経った頃……


「わ、一ノ瀬先生と須本先生だ」

ラッキーと先輩が黄色い声をあげた。

 


―――え?

 


振り返ると、確かにカウンターで飲み物を注文している二人の姿が


「有名なんですか?」

と新入生の一人が先輩に尋ねる。

「うん、形成外科の一ノ瀬先生と小児科の須本先生と産科の櫻井先生は若手御三家って呼ばれてて、超人気あるんだよ〜。3人ともめっちゃカッコよくて優しいしね〜」

「へ〜確かにイケメンだ…」

皆が二人に注目しだして、私はとりあえず見つからないよう下を向いた。


「既婚なんですか?」

「一ノ瀬先生はね。先月まで育休だったんだけど、今月から復活したみたい。須本先生はまだ独身だよ」

「へー!」

「でも最近彼女が出来たとかいう噂が…」

「えー!」


ヤバい……

何か変な汗が出てきた……


(早く、早く二人ともどこか行って…!)


その願いが通じたのか、飲み物を買い終えた二人はそのままカフェを後にした。

ホッと胸を撫で下ろした。

と思ったら、メッセージアプリに通知が届く。

送り主は――須本さん?!


『もうすぐ仕事終わるんだけど、一緒に帰らない?そのままカフェで待っててくれる?』

と――


(めっちゃバレてたーー!!)

 

 

 

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