TIME LIMIT〜明菜編〜 7〜明菜視点〜





31日――高校卒業式の日がやって来た。



「久しぶり〜元気にしてた?」

「合格おめでとう!」


仮卒に入ってからほとんど会わなくなったクラスメートと久しぶりの再会の日だ。

そして全員が揃う最後の日。


「明菜!合格おめでと」

「百合子もおめでとう!」


親友の百合子に会うのも一ヶ月ぶりで、お互い第一志望合格を祝い合った


「明菜本当に合格しちゃうんだもん、すごいよ。だってアンタ高2の時まで成績クラスで最下層だったのに」

「えへへ…、愛のパワーかも…」

「は?」

「実はね…」と私は須本さんと交際を始めたことを百合子に打ち明けた。


「はあ?!あの30歳の医者と付き合い始めたぁ?!」

「うん…、合格発表の日に告白されちゃった」

「ありえん…、嘘でしょ…、絶対周りにもっといい女いるだろうに何で明菜みたいなお子ちゃまと…」

「ね、本当にそう思うよね…」


今でも夢みたいだ。

何で私なんかを好きになってくれたんだろうって思う。

何か裏があるんじゃ…と怪しんだこともあった。


でもこの半月間交際しただけでも感じた彼からの愛は、本物だと思った。

私のことを一人の女性として本当に好きでいてくれてるんだって…、ひしひしと伝わってきた。

だからもう彼を信じることにする。

疑うのはやめた。



「そっかぁ…、明菜はもう彼氏持ちかぁ〜いいなぁ」

「百合子だって、大学で素敵な出会いがたくさんあるよきっと」

「だよね。楽しみ」

「私も楽しみ」



卒業式が始まった。

保護者席には両親が来てくれている。

もう引退して暇なお父さんはともかく、手合で忙しいお母さんも参列してくれるなんて、すっごく嬉しい。


卒業式が終わった後、ホームルームで担任の先生から一人一人に渡される卒業証書。

私も受け取って、大事に筒の中にしまった。


「明菜、先に帰っちゃっていいのか?」

「うん。お父さん達は先に帰って。私、皆と写真撮ってから帰るから」

「分かった」


クラスメートと、先生との最後の写真大会。

百合子と撮った写真を須本さんにも送ってみた。

休憩中だったのだろうか、すぐに既読になって

『卒業おめでとう』

というメッセージが帰って来た。

『ありがとう』のスタンプを返した――

 

 

 

 

 



4
3日――大学入学式の日がやってきた。



桜が綺麗に舞う大学の記念会館で、厳かだけど華やかな雰囲気の中で行われた入学式。

国歌斉唱の後、約200名の新入生の名前が点呼される。

「進藤明菜」と呼ばれ、私も元気に「はい」と返事をした。


学長からの式辞と理事長からの祝辞を終えた後、新入生代表が宣誓する。

「実習や学業で困難に直面することもあるかと存じますが、仲間と励まし合い、支え合いながら、夢の実現に向けて全力を尽くすことを誓います」

と看護学科代表の女の子が教授と保護者の前で誓う。


おそらく高校の3年間とはまた全然違う4年間となるだろう。

私も看護師になるという夢の実現に向けて全力を尽くしたいと思う。


閉会式後の大学紹介でキャンパスをあちこち案内された。

私がこれから学ぶこの新宿のキャンパスと、須本さんや一ノ瀬お義兄ちゃんが勤める西新宿の大学病院までは2キロくらい距離がある。

でも2年生の後半から3年生にかけては、病院での実習もたくさんあるみたいで楽しみだ。

卒業後はもちろん大学病院に勤務出来たらな〜って思ってる。


休み時間に、卒業式の時と同じように、今度は入学式の立て看板の横で撮った写真を須本さんに送ってみた。

『入学おめでとう』

と直ぐさま返ってくる。


それともう一文。

『体大丈夫?』

と……


思い出してカーッと一気に顔が赤くなった。

昨日は私の19歳の誕生日だった。

朝から彼の部屋にお邪魔して祝って貰ったのだけど。

その流れで実は昨日…私達はついに結ばれてしまったのだ……


とりあえず

『大丈夫だよ』

と返事をしておく。

体はもちろん大丈夫だ。

初めての私を気遣って、ものすごく優しく抱いてくれたし。

ものすごく恥ずかしかったけど……でもものすごく幸せな時間だった。

私はその時の記憶を思い返してみた―――

 

 

 

 

***************

 

 

 




「お誕生日おめでとう」

「ありがとうございます!お邪魔します!」


今日は私の19歳の誕生日だ。

須本さんの部屋にお呼ばれした私。

平静を装ってるけど、実は心臓がバクバクだ。

それはもちろん…今日ここで過ごしたいと申し出た時、同時に私は彼に伝えたからだ。

「準備、出来たから」と――


バレンタインデーの時、私は彼に一線を越えるのは

「もうちょっと待ってね、まだ心の準備が出来てないから」

とお願いしていた。


あれから一ヶ月半が経ち、私はようやく決心したのだ。

よし、19歳の誕生日にエッチをしよう――と。



「えっと…、先にケーキ食べようか」

と一緒にダイニングに向かう。

その時見えた彼の横顔もどことなく赤かった。


(慣れてるはずなのに…)


チクリと胸が少し痛んだ。

先月誕生日を迎えて31歳になった須本さん。

もちろん今までたくさんの女性と交際経験があるんだろうと推測する。


初体験は一体何歳で?

経験人数は一体何人?

私は一体何人目の恋人なの?


…と、気になるけど聞けないことばかりが頭に浮かんでくる。

高校の卒業式の日から姉とずっと付き合ってる義兄なら簡単に答えは出るのに。

きっと義兄は初体験は18歳で、経験人数も姉1人だろう。

でも須本さんはきっと違う……


(聞いたら教えてくれるのかな…)


でもショックを受ける自分が目に見えてるから…、やっぱり聞かないでおこう。

今は私だけの彼なんだし。






「わ、美味しそう」


彼が私の為に用意してくれたのは4号サイズのホールケーキ。

二人で食べきるのにちょうどいい、イチゴやベリーがあしらわれた上品そうだけど可愛いケーキだった。

入れてくれた紅茶と早速一緒にいただくことにする。


「あとこれ…」

と小さな紙袋も渡される。


「誕生日プレゼント」

「わぁ…ありがとう。開けてもいい?」

「うん…」


紙袋の中に入っていた包みを取り出して、包装を解いていく。

中に入ってたのは――腕時計だった。


「わぁ…素敵。ありがとう」

「どういたしまして」


早速着けてみる。

ブランド物できっとまた数万はしそうな腕時計。

嬉しいことは嬉しいんだけど……須本さんが何だか女性にプレゼントをし慣れてるようにも感じて、ちょっとだけブルーになる。

どうせ今までの彼女にもたくさんあげてたんでしょ、と勘ぐってしまう自分が嫌だ。


しかも私は今日これから…彼と一線を越えるのだ。

19
歳の私が31歳の彼と…プレゼントを貰った後に……


(何か気分はパパ活だ…)



「明菜ちゃん…?」


気付いたら私の瞳から涙が滲んでいた。

どうして私達はこんなにも歳が離れているんだろう……

あと10年早く生まれていたら、絶対にこんな惨めな気持ちにならなかったのに……


21
歳の彼と交際したかった。

そしたらきっとまだ女性慣れしていない彼と、一緒に大人になれたのに―――

 

 

 

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