TIME LIMIT〜明菜編〜 4〜明菜視点〜





「明けましておめでとう、明菜ちゃん」

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします

「こちらこそよろしく」



年が明け、私と須本さんは一緒に初詣でに出かけることになった。

二人きりで。

本当は姉一家も一緒のはずだったんだけど、綾ちゃんが熱を出した為、急遽二人だけで行くことになったのだ。


拝殿に着いて、一緒にお参りする。

私の願いは一つ。


どうかどうか、須本さんがいる大学に合格しますように――

 

 


「あと2週間でいよいよ共通テストだな」

「うう…緊張します」

「大丈夫だよ。この1ヶ月で明菜ちゃん偏差値5は上がったと思う。落ち着いて臨めばきっとラインは越えるよ」

「はい…頑張ります」

「俺もしっかりさっき神頼みしておいたから。明菜ちゃんが合格しますようにって」

「ありがとうございます…」


話しながら一緒に駅まで戻り、帰路につく。

今日はお休みだという須本さん。

最後の追い込みに今日も付き合ってほしかったけど、さすがに発熱中の綾ちゃんがいる一ノ瀬家には行けない。

お正月はファミレスもセルフカフェも激混みだから、長時間の勉強は邪魔になるだろう。


「…重そうだね、そのリュック。何が入ってるの?」

「あ…、参考書とかです」

「お正月もやる気満々なんだな」

須本さんに感心される。


「じゃ、どこかで教えようか?」

「でもどこで…」

「んー…、どこも混んでるだろうから、俺の部屋でもいいなら招待するけど」

 


――え?

 


「…須本さんのおウチですか?」

「あ…ごめん。嫌なら別に…」

「いえ、行きます。お願いします」


JR
で移動すること15分。

さすがお医者様。

彼が私を連れて行ったのは真新しい高層マンションの35階だった


「わぁ…すごい。夜景とかすごそう…」


もちろんワンルームや1Kではない。

推薦で早々に進路が決まったクラスの男子が見せてくれた、一人暮らし用のチラシに載ってた間取りとは全然違う。

広いリビングに上質そうな家具が置いてあるこの部屋はまさに……大人の男性の部屋だ。


(なんか急に緊張してきた……)



「適当に座って始めてて。コーヒー入れるから」

「あ、はい」


リビングの机に早速参考書とノートを広げた。

ふと、すぐ横のチェストの上に置いてある写真立てが目に入った。

そこに写っていたのは――姉と兄の合同結婚式後に行われたガーデンパーティーでのワンショット。

千明お姉ちゃんと一ノ瀬お義兄ちゃんが並んで写っていて、姉の横に私と明良子が、そして義兄の横に写ってるこの男性は――間違いなく須本さんだ。


「……須本さんもお姉ちゃんの結婚式に来てたんですか?」

「え?ああ……うん」

「そうだったんだ…、全然知らなかった」

「…まぁ別に話したわけでもないしな」

「……」


でもどうして須本さんはこの写真を飾ってるんだろう。

そんなにこの友人の結婚式が良かったんだろうか?

2
年近く経った今でも部屋に飾るほど?


「……須本さんてもしかして、お姉ちゃんのことが好きだったんですか?」

「は?いやいやいや…、それは流石にないから」

「じゃあ何でこの写真を飾ってるんですか?」

「それは……」


コーヒーカップ2つをトレイに載せてこっちにやってきた須本さんの顔は……何だか赤い。


「……それしかないから」

「え?」

「明菜ちゃんと俺が一緒に写ってる写真が…、それしかないからだよ…」

 

 


――え?

 

 

須本さんが恥ずかしそうに向こうを向く。

耳まで赤くなってる。


……こんなの反則だ。

こんなの、告白されたようなものだ。


ここは何て答えるのが正解なんだろう。


「えっと、えっと…、じゃあ受験が終わったら…」

「え…?」

「受験が終わったら、ちゃんとしたツーショット写真を撮りに……どこか一緒に行きませんか?」


須本さんが目を見開いてくる。

そして嬉しそうに私に向かって

「うん…、約束な」

と微笑んできた。


(可愛い……)

 

 


その後は予定通り最後の追い込みに入る。

共通テストは5教科だ。

それが1次試験代わりとなり、合格発表が2月上旬。

もし合格していたらすぐに2次試験の面接があり、その合格発表も2日後というタイトスケジュール。


(落ちたらどうしよう…)

という不安はもちろんある。


でも、4月にこの大学一本で行くと決めてから私は猛勉強してきたのだ。

姉夫婦にも須本さんにもたくさんお世話になってしまったから、絶対に合格して恩返しがしたい――

 

 

 

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