TIME LIMIT〜明菜編〜 2〜明菜視点〜





「送って下さってありがとうございました」

「いえいえ。じゃ、また来週」

「はい、お休みなさい」

「お休み」



家庭教師の後はいつも車で自宅まで送り届けてくれる須本さん。

貴重なお休みの日を毎週私の為に使ってくれて。

プレゼントまでくれて。


(どうしよう……どんどん好きになる……)


まだ胸元に光るネックレスに、私はそっと優しく触れた――

 

 



「ただいま」

「お帰り。夕飯は食べてきたのか?」


玄関で靴を脱いでると父がやって来た。


「うん。一ノ瀬お義兄ちゃんが作ってくれたの食べてきた。今日は親子丼だったよ」

「へー…、何か申し訳ないな」


姉は毎日帰ってくるのが夜10時近いので、家庭教師の日は私と義兄と須本さんの3人で夕飯を食べている。

父は育休中の義兄が私の分までご飯を作ってくれてることも、須本さんが無償で私の家庭教師を引き受けてくれてることも申し訳なく思ってるらしい。

父はもちろん以前そのことについて二人と話したらしいが、

「ご飯作ってる間は明菜ちゃんが綾を見てくれてるので、むしろ助かってます」

と一ノ瀬お義兄ちゃんに言われ。

「明菜ちゃんがうちの大学受けるのは俺が勧めたことなので、最後まで責任持ちますよ」

と須本さんにも言われたらしい。


「明菜オマエ……そのネックレスどうしたんだ?」

父があざとく見つけ、聞いてくる。

「あ…、クリスマスプレゼントって、須本さんがくれた」

「……へぇ。クリスマスプレゼント…ね」

「なに?」

「オマエさ…、もっと同級生の男とか…興味持ったら?」

「私が誰を好きになろうが勝手でしょ」

「いやでも、流石に一回り年上はどうかと思うぞ…?」

「お父さん…反対するんだ?」

「いや、須本君はさすが凌君の親友だけあってめちゃめちゃいい奴だけどさ…。だからこそ理解出来ないっていうか…、あんな好物件がわざわざ明菜を選ぶ意味が分からん」

「そんなこと…、私だって分かってるから…!!」


父に指摘されたことは御尤もで、私は逃げるように自分の部屋に急いだ。

須本さんから貰ったネックレスを外して、してはいけないんだろうけど、Googleレンズにかける。

この検索機能は優秀で、貰ったこのネックレスがどこのブランドでいくらするのかもすぐに教えてくれる。


『高くないやつだから遠慮なく』

と彼は言ったけど……

2万もするじゃん…」


私達高校生にとって2万は大金だ。

大人だって、クリスマスプレゼントにこれだけかける人が一体何%いるんだろう。

まずただの教え子にあげる金額ではないと思う。

須本さんが私に好意を抱いてくれてるのは一目瞭然なのだ。


「なんで私なんだろう…」


あんなにカッコよくて、優しくて、頭もよくて、身長も高くて。

おまけに医者だ。

婚活パーティーなんか参加しようものなら、きっと大勢の女性に囲まれるのが目に見えてるほどの、誰がどうみても彼は好物件なのだ。

そんな人がただの何の特技も夢もなかった平凡な高校生の私を好きになる理由が分からない。

しかも彼は姉の病室で初めて出会ったその瞬間から、既に私に興味を持ってくれていたのだ。

一度も会ったことなかったはずなのに……

2
度目に会った時なんて、私の進路に自分が勤める病院を勧めてくる始末だ。


「もしかして何か裏があるのかな…」


実はめっちゃロリコンとか。

(いや、それなら私よりもっと年下を狙うはず…。18歳は育ちすぎてる…)

両親の遺産目当てとか。

(いや、彼自身も開業医の息子でお金持ちだから違うか…)

それか実はめっちゃ亭主関白だとか。

結婚して私が逆らえないようモラハラする気か。

(いや、それなら看護学科なんか勧めないか…。看護師なんて手に職を付けた女性は迷わず離婚するだろうから)


考えれば考えるほど分からない。


「……勉強しよ」


埒が明かない私は、ひとまず受験勉強を再開することにした。

今日須本さんから教えて貰った受験対策用のポイントを忘れないうちに復習していく。

今日もすごく分かりやすかった。

しかも私が理解できるまで根気強く何度も繰り返し教えてくれた。

彼の優しさに胸が熱くなる。

彼を信じたい気持ちと、疑う気持ちが交差する。


ただ一つ分かるのは――私が彼を好きだということだ。

一目惚れから入ったこの気持ちだけど、今は彼の全てが好きだ。

見た目だけじゃなくて、中身も大好きだ。


もし彼に交際を求められたら……私は迷わずイエスと答えるだろう

結婚を申し込まれても……迷わずイエスと答えるだろう。



「大好き…」



この気持ちを打ち明けたら彼はどんな顔をするんだろう――

 

 

 

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