TIME LIMIT〜明菜編〜 1〜明菜視点〜





C判定かぁ…」



大学受験模試の結果が出た。

第一志望の大学がC判定、つまり合格率が50%でボーダーラインにいることを示している。


「明菜どうだった?」

親友の百合子が聞いてくる。

「うーん…C判定。もっと頑張らないと…」

「まぁね。それだと滑り止めも受けとかないと怖いもんね」

「そんなの意味ないから」


私は須本さんがいるT医科大学しか受けるつもりはない。

彼のいない他の大学じゃ意味がないからだ。



「明菜、今日は塾の日だった?」

「ううん、家庭教師の日。じゃ、また明日ね」

「うん」


百合子にバイバイして、私はとある場所に向った。

その場所とはもちろん――お姉ちゃんの家だ。

 

 

 


ピンポーン


「明菜ちゃん、いらっしゃい」

「お義兄ちゃんお邪魔します♪」


姉の家に到着すると、一ノ瀬お義兄ちゃんが出迎えてくれた。

その腕にはもう8ヶ月になる姪っ子の姿が。


「綾ちゃん元気〜?今日も可愛いねvv」

ヨシヨシしてあげるとニコッと笑ってくれた。

天使だvv


ちなみに姉はもう職場復帰している。

今は義兄が育休中で、春の保育園入園まで休みを申請しているらしい。

姉も義兄も大学生の頃は家庭教師のバイトをしていたので、教えるのはめちゃくちゃ上手い。

もちろん私も最初は2人に教えて貰ってたんだけど、今は違う人に教えて貰っている。

それが誰かというと……



「明菜ちゃん、お帰り」


リビングに行くと、コーヒーを飲みながら携帯を弄っていた須本さんが、顔を上げてきた。

「た、ただいま…。今日もよろしくお願いします」

ペコリと先生に挨拶する。


そう――私は今、須本さんに家庭教師をしてもらっているのだ。


「この前の模試の結果出た?」

「あ、はい」

さっき学校で渡された例のC判定の結果をカバンから取り出して須本さんに渡した。


Cか…、数1Aと英語がまだ弱いな。今日はそれメインでいこうか」

「は、はい…」


一ノ瀬家のリビングの机を借りて、今日も私達は家庭教師をスタートさせた。

メガネをかけだした須本さん。


(カッコいい…)


白衣の彼ももちろんめちゃくちゃカッコよかったんだけど、私服にメガネな彼もめちゃくちゃイイ。

家庭教師のバイトの経験はないはずなのに、教えるのもとっても上手くて、最初E判定だった私の成績もC判定まで上がった。

あと少しだ。





1
時間くらい数学をした後、

「そろそろ休憩したら?」

と義兄が私の大好きなカフェラテを入れてくれた。

須本さんにはブラックコーヒーを。


「ありがとう、お義兄ちゃん」


姉と義兄が交際を始めたのは今の私と同じ18歳らしい。

10年の交際の後、29歳で結婚した二人は私の憧れだ。

そんな二人と同い年の須本さん。

もちろんイケメンでお医者様な彼は、義兄曰く同僚の看護師さん達からもモテモテらしいが、今は恋人はいないらしい。

というか……私は何故かこの須本さんにその恋人候補として狙われてるらしい……


(なぜ…?)


もちろん、初めて会った日に彼に一目惚れした私としては万々歳だ

むしろどんどん狙ってほしい。



「明菜ちゃん、クリスマスの予定は?」

「あ…特に。今年は受験だし、いつも通り勉強するだけかな…。…須本さんは?」

ドキドキしながら聞き返してみる。

「イブからずっと当直。家庭持ち、恋人持ちの奴らが休みの希望出してくるから、独り身はまぁまず押し付けられるよな…」

「そうなんですね…、大変ですね」

「だから……今日先にプレゼント渡してもいい?」

 



――え?

 


私の背後に回る須本さん。

ピンクゴールドのチェーンの先に、小ぶりなお花の形をしたダイヤが付いたネックレスを胸元に付けられる。


すっごく綺麗……


「い…、いいんですか?こんなの貰っちゃって…」

「毎日勉強頑張ってる明菜ちゃんへのご褒美だよ。そんな高くないやつだから遠慮なく受け取って?」

「あ…、ありがとうございます……すごく嬉しいです」

「どういたしまして」


今まで彼氏なんかいたことのない私だから、もちろん異性からこんなプレゼントを貰うのは初めてだ。

受験生が勉強を頑張るのは当たり前の話なのに、本当にこんなものを家庭教師の先生から頂いてしまっていいのだろうか……


というかというか、私の前に戻って来た須本さんの頬が……ちょっと赤い。

何気なくを装ってるけど、このプレゼントが特別な意味を持つことに私はすぐに気付いた。

きっとこれは単なる教え子にあげるプレゼントじゃない。

きっと適当に選んだやつじゃないってことも。


(……嬉しい……)


「大事にしますね…ずっと」

「ありがとう…」



休憩の後は英語の授業に入った。

私は胸元にネックレスをしたままで――

 

 

 

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