●TIME LIMIT〜恋人編〜 7●
20歳になった進藤の収入は……きっと僕より断然多い。
それが天才と秀才の違いなんだって…改めて思い知らされた。
16の時、既に僕と同等の棋力を持っていた彼。
同等だったけど……結局は僕より先にタイトルを取った。
僕より先に緒方先生にも倉田先生にも公式戦で勝った。
そして先日のアジアカップではついに宿敵の永夏にも…。
年明けに公開される賞金ランキングで、常にトップ3に入ってる彼はきっと一般の女性からも人気がある。
おまけにあの容姿だし……女性達が放っておくはずがないんだ。
たとえ僕のことが好きでも、僕と関係が持てるのは一年にたった一回だから……他の時間を他の女性と過ごすキミは間違ってない…と思う。
…嫌だけど。
…気に入らないけど。
間違ってはないんだ…。
それが4年前に…僕が選んでしまった道の結果なんだから…――
今年彼が僕と過ごす為に選んでくれたのは、彼のお気に入りのホテルブランド。
米系ラグジュアリー。
100平方メートル以上の広さを誇るスイート。
スタンダードルームでも一泊7、8万はするホテルなのに…一体この部屋は何十万したんだろう…。
それなのに部屋自体にはちっとも興味を示さず…じっと僕の方ばかり見て来る。
終いにはまだお昼の3時を回ったばかりなのに、早くも僕を抱きたいとせがんでくる…。
「…いいよ」
と承諾すると、直ぐさま手を引っ張ってベッドルームに連れていかれた。
少し乱暴にベッドに押しつけられて…僕に跨がりながらキスの雨を降らせてくる。
一年ぶりのこの行為。
あんまり余裕がなさそうなのに、それでも手慣れた手付きで丁寧に服を脱がしていき…優しく僕に触れてくる。
「塔矢…好きだ」
という最高の台詞を何度も囁きながら―。
「……ぁ…―」
たくさんの愛撫をされて…僕は肉体的にも精神的にも満たされていく。
あと残すは本当の意味で繋がりを持つ行為だけ。
「…いい?」
と優しく促してくる彼に向かって…僕は首を縦に振った。
「や…っ、…ぁ…っ―」
「塔矢…っ」
中に押し込められた彼の欲望を感じながら、僕は気持ちを絶頂へと導かれる。
「あぁっ…ぁん…―」
「…っ…―」
お互いに達した後すぐに彼は抜いてくれて、僕を引き寄せれるだけ引き寄せて…ぎゅっと抱き締めてくれた。
僕の下半身は達した後の満足感と…彼の存在がなくなったことによる喪失感だけ。
優しい彼は僕が言わずともきちんと避妊をしてくれるから、不快感はゼロだ。
「塔矢…好きだ…大好き…」
「…ありがとう」
「オマエは…?オレのこと好き…?」
「……」
「好きって言ってよ…。今日一日はオレの恋人だろ?嘘でもいいから……」
「うん…好きだよ」
「……ありがと」
少し悲しそうに笑った進藤はまた僕の顔中…体中にキスしてきた。
真実が50%、嘘が50%のその言葉に満足したように――
「…塔矢、お腹空かねぇ?」
「ん…まだ大丈夫」
「オレ喉乾いたから何かルームサービス取るな」
「うん…。僕はちょっと一眠りするよ…」
「ああ」
――午後6:30
結局3時間体を貪られた後、ようやく彼が体を離してくれた。
きっとご飯を食べて…少し休憩して…お風呂に入ったら…また再開するんだろうけど。
毎年同じパターンだから分かる。
たぶん今夜は寝かせてくれない。
一晩中僕を抱きまくって…もう完全に勃たなくなるまで僕の中に挿れてくる。
まるで一年分の思いを一気に僕に注ぐように…―
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