●TIME LIMIT〜恋人編〜 6●
「よしっ!オレの勝ち〜♪」
「くそっ!」
昼食を食べ終わった後、迷惑ながらもテーブルの端で腕相撲をしてみた。
女とはいえ、さすがは握力40…。
正直ヤバかった…。
でもここで負けたら男の面子丸潰れだし、ネバってネバって……結局は何とかオレの持久勝ちだ。
「あと少しだったのに…」
残念そうに首を傾げる塔矢は少し息遣いが荒く、またしてもウッとなる。
少し遅めに昼食をとったので、時計を見ると既に2時半だ。
「そろそろ行く?」
「そうだね」
一度駐車場に戻って目的のホテルまで走り出した。
「お台場のホテルじゃなかったんだね」
「うん。でも近くだからあと10分もあれば着くかな」
「ふーん」
せっかく塔矢と過ごせるんだから、静かで眺めのいい極上の所にしないとな。
その辺のスーペリアやデラックス・クラスはパス。
台場のホテルは今までに他の奴と何度も泊まったことあるから……絶対にパスだ。
10分後――その目的のホテルの駐車場に着くと、塔矢が納得したように頷いた。
「キミってこの系列好きだね…」
「うん、一番好きかも。名古屋でも大阪でもたいてい決まってこの系列に泊まるし。…まぁスターウッド系やハイアットも好きだけどな」
「ふーん…」
シオサイトに聳え建つ、その系列の中でも最高級ラグジュアリー・ブランド。
オレの誕生日を祝うというよりは、塔矢と一夜を過ごすのにピッタリのホテルだと思わねぇ?
チェックインを終えて部屋に着くと、塔矢が驚いたように目を見開いた。
ベルボーイが帰った後、思いっきり溜め息を吐いてくる。
「この広さ絶対に無駄だな…。どうせベッドしか使わないくせに」
「はは、よく分かってんじゃん」
早速肩に手を回して、頬に優しくキスをした―。
「…んじゃ夕飯まで軽く運動しよっか」
「食後の運動は禁物だよ。少しはこの部屋を堪能させてくれ」
「ちぇっ…」
回していた手を解かれ、塔矢は一部屋ずつ見始めた。
「わっ、バスルームから海が見えるよ。素敵〜」
「夜になったら一緒に入ろうぜ」
「一緒に…?」
「うん」
たちまち塔矢の顔が赤くなる。
こっちは何かな…と慌てて会話の内容を変えようとするコイツはすげぇ可愛い。
早く抱きたいな…。
もう明日の朝まで抱いて抱いて抱きまくりたい。
せっかくの塔矢との一日。
セックスだけで終わらすのは惜しいようにも思うけど……オレは塔矢と繋ってる瞬間が一番好きなんだ。
オレの腕の中に大人しく収まってくれてるコイツを見ると…本当に手に入れれた気分になるし…。
誕生日くらいオレに都合のいいように思い込んでもいいよな…?
今日だけはオレの恋人なんだし…。
今日だけは…―
「……はぁ」
無性に辛くなってリビングのソファに寝そべった。
「進藤?大丈夫か…?」
「全然…」
辛気くさく倒れてるオレの顔を、塔矢が心配そうに覗き込んで来た。
すぐに手を伸ばして引き寄せ――キスしてみる。
「―ん…っ…」
塔矢…好きだよ。
大好きだ。
今日だけと言わずずっとオレのものになって…―
「…ベッド行こうぜ…。オレもう限界…早く抱きたい…」
「……いいよ」
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