●TIME LIMIT〜恋人編〜 5●
「明日は泊まりで研究会に行ってきます」
お夕飯の途中、アキラさんがいつものように明日のスケジュールを言い出したの。
「分かったわ」
「頑張りなさい」
「はい」
私も行洋さんも何の疑いも持たずにすぐ了解したわ。
…でも変だと思ったはその晩。
12時を過ぎてもアキラさんの部屋の灯が点いていたのよ。
いつもは10時には眠ってるのに変ねぇ…と声をかけてみたの。
「アキラさん?まだ起きてらっしゃるの?」
「あ、はい」
戸を少し開けると、驚いたように何かを隠したわ。
でも箪笥が開いていたし、お洋服が散乱していたから何をしていたのかは一目瞭然。
明日の準備をしてらしたのね。
別にそんなに慌てることないのに…。
「夜更かしはお肌にも毒ですよ。準備もほどほどにして早く寝なさいね」
「はい。お休みなさい」
「お休み」
また戸を閉めた途端思わず顔が笑ってしまったわ。
だってあのアキラさんがお洋服に悩んでたのよ?!
きっと明日の研究会に気になってる男性が来るのに違いないわ!
ああ…
アキラさんもついに恋を経験したのね…。
翌日――
やっぱり私の考えは正しかったみたい。
滅多に穿かないスカート姿でいつもより格段に綺麗なアキラさん。
ずっと時計をチラチラ気にしてて本当に可愛かったわ。
待ち合わせは9時だったみたい。
8時55分頃から外に出て、門の周りをウロウロして待ってたしね。
迎えに来てくれるのね。
相手は一体誰なのかしら?!
まぁ!
来たわ!
結構いい車に乗ってるのね!
年上なのかしら?!
え?
あら?
あらら?
もしかして…進藤さん?!
アキラさんのお相手は進藤さんだったの?!
まぁ…。
まぁまぁまぁ…。
納得と言うか…やっぱりと言うか…。
おまけに車に乗ってすぐ肩に手を回されてるじゃない!
もう付き合ってらっしゃるの?!
既に恋人なのね?!
――て
きぁあ!!
アキラさんたら口付けまで始めちゃったわ!
もうこれ以上覗き見するのはプライバシーに反するわね。
いってらっしゃ〜い。
進藤さんとケンカしないようにね。
「…明子、ずいぶん今日は機嫌がいいな」
「分かります?」
ほほほと笑って行洋さんにも教えてあげたの。
「アキラさんにね、恋人が出来たみたいなのよ」
「なっ…、本当か?!」
「ええ」
「あ…相手は?!くだらん男だと私は許さないからな!」
「まぁ、あなたったら。心配しなくてもあなたもよく知ってる方よ。進藤さんみたいなの」
「ああ、進藤君か…」
行洋さんもやっぱり…って顔。
でもアキラさんには一番似合ってると思うわ!
きっと研究会なんて嘘なのよね?
本当は進藤さんと二人きりでデートなんでしょう?
親に嘘ついて外泊するアキラさんはなんて可愛いのかしら。
きっと今夜は進藤さんと素敵な一夜を過ごすのね。
でもちゃんと避妊はしてもらわなきゃダメよ?
余計なお節介かしら…。
アキラさんももうすぐハタチだし、どういう結果になっても自分で責任ぐらい取れるわよね?
にしても若いっていいわねぇ…。
あら、待って。
こういうのは年齢の問題じゃないわよね。
私もお昼から行洋さんとどこかに出かけようかしら…―
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