●TIME LIMIT〜恋人編〜 4●
僕が初めて男の人と体を合わせたのは15の時。
もちろん相手は進藤だ。
彼のデートスタイルには当然のように最後にセックスが含まれていて、初めての時はカルチャーショックをずいぶん受けたものだ。
『キミの望むデートスタイルで構わないよ』
と言ってしまった手前、断ることも出来なかったし…そのまま…―。
たった1日だけとはいえ、その間は本当の恋人なんだなってあの時は改めて思い知らされた。
でもこのプレゼントをあげて以来、進藤は告白以前の明るさを取り戻してくれたから…結果的には良かったと思う。
でも4年経った今でもそのプレゼントを求めてくるのは…まだキミが僕のことを思ってくれてる証拠かな?
嬉しいような…哀しいような…複雑な気分だ。
でも迷惑ではない。
どんな邪な気持ちが入ってるにせよ、キミに気にしてもらえてることには変わりないわけだし。
…でも、僕は一つだけ気に入らないことがある。
なぜキミは僕が好きなのに他の女の子と付き合うんだ?
キミの気持ちは僕のものなのに、キミの体は他人の所にあるということがすごく気に入らない。
きっと彼女とはデートの度に、あんなこともこんなこともしてるんだ!
本命の僕とは年に一度なのに、彼女とはきっと週に何度も!
考えただけでムカムカする!
僕が好きならキミも僕とだけヤってればいいんだ!
「…塔矢?なに一人百面相してんだよ?」
助手席で一人ムカムカしていたら、信号待ちになった進藤が僕の顔を覗きこんできた。
その距離15cm。
途端に顔が赤くなる。
「べ、別に!」
「ふぅん…。あ、もうすぐ着くぜ」
駐車場に車を止めて、僕らは適当に歩き出した。
もちろん手を繋いで…―
「オマエもしかしてお台場初めてだったりする?」
「うん。キミは?」
「んー…何回目だったかな。2ケタは余裕でいってると思うけど…」
「…彼女と?」
「ああ」
「……」
「…塔矢、痛いんだけど…」
「え?あ、ごめん」
無意識のうちに進藤の手をぎゅっと握りしめていたみたいで、慌てて手を離した。
「オマエってめちゃくちゃ非力そうに見えんのに、結構握力あるよなー」
「べ、別に普通だよ。40ぐらいだ」
「マジ?!全然普通じゃねぇし!」
「そうなのか…?毎日あの重い碁盤を運んでるせいかな…」
「な、後で腕相撲やろうぜ」
「いいよ」
進藤がもう一度僕の手を取って軽く握ってくれた。
その温さや感触に少し胸がきゅんとなる―。
「…そういや、塔矢先生帰って来てるんだって?」
「うん。10月に入ったらまた北京に戻るとか言ってたけどね」
「よく外泊許してくれたな」
「碁の研究会って言ってきたから」
「え?!」
進藤があちゃ〜…っと額に手を当てた。
「…オマエさー、その格好で研究会ってありえねぇって」
「そ、そう?変かな…?」
「ううん、すげぇ可愛い。女の子っぽいし、色も秋っぽいし、塔矢によく似合ってる」
「ありがとう」
うーん…でも、そうだね…。
確かに言われてみると研究会の服装ではないかな。
スカートだし…。
ちょっと深めのカットソーだし…。
でも進藤と泊まりで出かけるなんて言ったら…絶対に許してもらえなかっただろうし…。
「家出る時、不思議がられなかった?」
「うん、特には…」
「なら大丈夫かな?オマエ元々信用されてそうだしな」
「…うん」
大丈夫…だよね?
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