●TIME LIMIT〜恋人編〜 3●


1日だけってのは結構不便なもので…まず遠出は出来ない。

でも正直言ってオレは塔矢と過ごせたら別にどこでもいいんだ。


16の誕生日の時は恵比寿とか表参道あたりをぶらぶらしてた。

17ん時は後楽園のあたり。

18ん時は上野とか浅草だったな。

そして去年は舞浜だ。


今年はどこに行こうかな〜…






「おはよ、塔矢」

「おはよう」


約束の9月20日、朝9時。

時間通りに車で塔矢ん家に迎えに行くと、門の前で既に待っててくれた。

さすが『棋院一、時間に正確な女』だ。


助手席に乗り込んでくれた塔矢の肩に早速手を回してみる。

「…キスしてもいい?」

「いいよ。『恋人』だからね」

「んじゃ遠慮なく…―」

少し顔を傾けて、塔矢の唇にそっと触れた―。

「―…ん…っ」


でも優しく触れるのは最初だけ。

すぐに唇を割って舌を忍ばせ、塔矢のものと絡めながら濃厚なキスをした―。

「んっ…、…ん…」


1年ぶりの塔矢とのキス。

すげぇ嬉しい…。

心臓がドキドキ鳴ってるのが分かる…―


「ぁ…はぁ…は…ぁ…―」

口を離すとお互いの唾液が糸をひき、塔矢の口から甘い吐息が出た。

塔矢に対する免疫が少ないオレは、それだけでもウッとなって理性が飛びそうになる。

た、耐えろっ!

まだ今日は始まったばっかりだ!


「…えーと、んじゃ取りあえず出発しますか」

「うん…」

まだ少し顔の赤い塔矢がシートベルトをしめ、オレの方に視線を向けてきた。

「キミの車に乗るの久しぶり」

「そういやそうだな。3ヶ月ぶりくらい?」

「うん」

「オマエって緒方先生の車には頻繁に乗ってるくせに、オレのには全然乗ってくれねぇもんな〜」

嫌味っぽく言ってやると、塔矢の目が少し鋭くなった。

「だって…彼女が勘違いすると悪いしね」

「………」

「今年も…フったのか?」

「ああ」

「何もそこまでしなくてもいいのに…。僕とはたった1日だけのことだろう?」

「………」


たった1日…か。

されど1日だ。

オレにとっては1年で一番大切な日。

そんな重要な日を誰かと付き合ったままで迎えるなんて御免だぜ…―


「そんなに無茶苦茶やって、いつか酷い目にあっても知らないから」

「はは、フった彼女に刺されたりしてな〜。ま、そん時は葬式には来てくれよな♪」

「…ふざけるな」

厳しい視線を向けてくる塔矢に、オレは苦し紛れの笑顔を向けた。


でもな、塔矢…。

オレは死ぬなら誕生日がいいって本気で思ってる。

オマエと恋人の間に死にたい。

オマエだってこんなプレゼント…いつまでもオレにくれるわけじゃないだろ?

タイムリミットはオマエが結婚する時か…婚約する時か……もしくは真面目なオマエのことだから彼氏が出来た時点で終わりかな?

オレはオマエが誰かのものになる所なんて見たくない。

見るぐらいなら…いっそ幸せ絶頂の今…死にたい。

腹上死とか超理想。



「…どこか行きたいとことかある?」

「別に」

「んじゃ今年は無難にお台場とか行ってみますか♪」

「ふーん…今年は臨海あたりのホテルなんだ?」

「そ。でもチェックインまでまだまだ時間あるから、それまで遊ぼうぜ」




本当のお楽しみは15時を過ぎてから――















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