●TIME LIMIT〜恋人編〜 1●
もし1日だけ願いを叶えてくれるなら――塔矢と恋人になりたい
「オレさ、塔矢のこと好きなんだ」
「………ごめん」
15の時――オレは塔矢に告白して…見事玉砕した―。
進藤をそういう目で見れない。
キッパリハッキリそう言われてしまった。
オレにとって塔矢は初恋だったんだ。
好きで好きで気になって仕方なくて、アイツのことを考えると夜も眠れなかった。
そして抑えきれなくなったその気持ちを打ち明けた結果が……これだ。
初恋は実らないってよく言うけど……ホントだよな…。
やってらんねぇ…―
フラれた相手をいつまでも未練がましく思い続けてるのも情けないし、その後ちょうど告ってきた院生の女の子と付き合うことにした。
でも結局2ヶ月もしないうちに破局―。
以来ずっとそうだ。
告られて、付き合って、別れて…を1年のうちに何回も繰り返してる。
原因は…やっぱりオレの気持ちが彼女達に向いてないからかな?
「もう耐えられない!」
っていつもフラれる。
オレだって耐えられねぇよ…。
何でこんなに塔矢が好きなんだろ…。
何で他の奴じゃダメなんだろ…。
オレは一体いつまでアイツのことが好きなんだろ…。
もしかして一生…?
じゃあこの思いはどこにぶつければいいんだ…?
「あれ?ヒカル君の誕生日って今月なんだ?」
机の前に掛けてあるカレンダーの書き込みを見て、彼女が言った。
「うん。20日」
「お祝いしてあげる!何か欲しいものある?」
「欲しいものはないかな。別れてくれたらそれでいいから」
「………は?」
オレの突然のセリフに彼女が固まった。
「今…なんて…?」
「ん?聞こえなかった?別れてって言ったんだよ」
「ど…どうして…?私…何かした?私に飽きちゃった…?それとも他に好きな子が出来たとか…?」
震えながら信じられないという顔をした彼女に、オレは期待通りの偽りの言葉を投げ付ける。
「うん、飽きた。ウザいからもう別れてよ」
「何よそれ…。ヒカル君て最っ低っ!!」
思いっきり平手で叩かれ、彼女は部屋から出て行った―。
オレは毎年誕生日前になると、精算するためにその時付き合ってる彼女をフる。
オレが見つけた唯一の気持ちのぶつけ所には…邪魔な存在だから。
そして彼女達をフった後、オレは深呼吸して塔矢んとこの碁会所へ向かう。
もちろん塔矢と打つために。
そして――
「…あのさ、もうすぐオレの誕生日なんだ」
「ああ、もうそんな時期だっけ?」
「祝って…くれる?」
「もちろん」
「じゃあ…去年と同じやつ…お願いしていい?」
「……」
一瞬眉を傾けた塔矢は困ったように溜め息を吐いてきた。
「…いいよ。キミが望むのなら…―」
「ありがと…。すげー楽しみにしてる」
こんなプレゼント…自分でもバカやってるなって分かってる。
だけど今でも忘れることの出来ないこの気持ちを満たす為には……この方法しかないんだ。
毎年9月20日――オレの誕生日にたった1日だけ与えられるご褒美。
これがあるから1年をまた頑張れる気がする。
「じゃあ朝の9時頃にオマエん家に迎えに行くから」
「分かった。1日立派に恋人を演じさせてもらうよ」
16の誕生日からずっと続いてる塔矢からのバースデープレゼント。
それが
『恋人』
だ―。
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