●THORN PRINCESS 24●
「―…ん…」
朝日で目が覚めると――塔矢が着替えてる姿が見えた。
「あ、起きた?」
「ん…もう朝か…」
睡眠不足で回らない頭を押さえながら…なんとか体を起こす。
「キミはまだ寝てていいよ」
「え…?」
「朝食の準備してくる。出来たら呼びにくるから」
オレの頬にチュッとキスをして、塔矢が寝室を出ていった。
彼女の新妻っぷりに思わず目がきょとんとなる。
「なんか…新婚っぽいな…」
そうだ!
新婚っぽいじゃなくて新婚なんだ!
途端にこの状況が嬉しくなる。
塔矢が新妻。
オレの妻。
あの塔矢が。
「夢みてぇ…」
でも夢じゃない。
昨日ちゃんと婚姻届を出した覚えがある。
んでもって初夜だった昨夜――塔矢と甘い夜を過ごした覚えがある。
今も残る彼女の柔らかい感触…。
たまんねぇ…。
嬉しすぎ…。
この寝室にまで匂ってくる朝食の香りがまた何とも言えないほど…――
「………あれ?」
いい香りが段々焦げ臭くなってきた…?
そういえば塔矢が料理が出来るなんて話は聞いたことがない。
アイツは外食専門だ。
慌ててオレも着替えて寝室を出た――
「塔矢〜?大丈夫か?」
台所を覗くと僅かに黒い煙りがあがっていた。
そして……床に蹲って倒れてる彼女の姿が――
「塔矢っ??!」
慌てて駆け寄って体を起こす。
「っ…進藤…」
「大丈夫か?!」
「だ、大丈夫…。少し…お腹が痛いだけ…だから…」
「お腹が…?」
一気に血の気が引いたきがした。
その引いた血がまるで目に映ったかのように……塔矢の下半身が血でぐっしょりと濡れてる。
「塔矢…これ…」
「…痛…い……進…い…たっ…―」
「ま、待ってろ!今救急車呼ぶからっ!」
ズボンのポケットからすぐに携帯を取り出して……動転して震える手で番号を押した…。
110…じゃない。
何番だ…?
救急車だから…119か…?
199だったか…?
それとも109…?
「い…たい…」
「塔矢っ!救急車って何番だっけ??」
「…11…9…」
真っ青な顔して痛がりながらも、オレの情けない問いに答えてくれる塔矢の口元は緩んでる…。
「呼んだからな!もうすぐだからな!」
「進…藤…」
「もう喋るな!」
「もし…僕が…死んだら……この…子…よろしく…」
「何言ってんだよオマエっ!死ぬわけねーじゃん!!」
「…し……」
「…塔矢?」
「………」
「塔矢っ?!塔矢ってっ!!」
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