●THORN PRINCESS 23●
結局…本能に流されるかのように……塔矢を抱いてしまった。
でも、満足げにオレの胸に抱き付いてきてる彼女の顔をみると……すげぇ嬉しい。
オレの方も抱き締め返して、彼女の顔に何度も何度もキスをした――
「好きだよアキラ…」
「ふふ…」
耳元で囁くと、塔矢は嬉しそうにクスクス笑ってきた。
「キミにそう言われるの…すごく好き」
「オレのことも好きになってよ」
「どうしようかな〜」
「好きって言うまで離さねぇから」
更にぎゅっと抱き締めると、塔矢も更にクスクス笑ってきた。
「進藤、苦しいって」
「離して欲しかったら言えよ」
「じゃあ嫌だ。離して欲しくないし」
塔矢の方も更にオレに抱き付いてくる―。
「キミと結婚出来て…嬉しいよ」
「なに?今夜はやけに嬉しいこと言ってくれるじゃん…。本当に塔矢?本物?」
「失礼だなキミは!本物だ!ただ…もう意地張るのに疲れただけだよ…。キミの愛を素直に受け取って過ごす方が楽だ…」
「ふーん…意地張ってたんだ?」
「うん…」
「じゃあホントはオレのこと好きなんだ?」
「………」
「…何で黙るんだよ」
「だ、だって…」
塔矢が真っ赤な顔して上目遣いでオレを見てくる。
「まだ…分からないんだ。キミに抱かれるのは確かに誰より気持ちいいし…心地いいけど…。でも、キミに嫉妬して…憎んでた時期が長すぎて……」
「そっか…」
「ごめん…。この子を産むのも…最初はキミへの復讐のつもりだった…」
「オレに父親の権利を与えないことで…?」
「うん…ごめん」
「いいよ…今は違うんだろ?結婚したってことは…これからオマエが産む子は皆オレの子供になるってことだもんな。少なくとも戸籍上は」
「何それ…。キミ…僕を信用してない?僕はもう…キミ以外の人と寝るつもりはないよ?」
「……マジ?」
「うん。ただし、僕が満足するだけキミが夜の生活を頑張ってくれたら…の話だけど」
「が、頑張る!頑張るよオレ!」
たちまち必死になるオレを見て、塔矢はまたしてもクスクス笑った。
「言っておくけど…僕の性欲はその辺のお嬢さん方よりも強いよ?」
「おぅ!」
「今夜も一回程度じゃまだまだ足りない」
「え…」
塔矢がゴロンとオレを下敷きにして――上からオレの耳を甘噛みしてきた。
ぞくっと震えて…またしても下半身が反応してくるのが分かる。
「進藤…、夫婦は夢や理想だけじゃやっていけないってこと…分かってる?」
「うん…」
「現実を見定めることが何より大事だ。僕が今欲情してて…キミのこれが勃ってるのも一つの現実だよ」
「うん…でも、オマエが妊娠してるのも現実だ…」
「そうだね。だからあと一回だけ…――」
そう言いながら合わせてくる彼女の唇を――オレは受け入れた。
『あと一回だけ』
この甘い誘惑が…オレらをどん底に突き落とすことになるなんて…思いもしないで――
「…痛…い…」
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