●THORN PRINCESS 15●


塔矢家に行くことを拒んだオレを、無理やり車に乗せて連行した緒方先生。

だけどやっぱり玄関先でオレの足は止まってしまった――



「進藤?」

「やっぱり…やめときます」

「アキラ君に会いたくないのか?」

「………」


会いたいよ…?

オレは会いたいけど……きっと塔矢の方が会いたくない。

どうせまた嫌な顔をされるんだ。

どうせまた…ケンカになるだけだ。


「…お前の携帯番号教えろ」

「…は?」

「アキラ君が会いたそうにしてたら電話してやる。ここで待ってろ」

「………」


そんなの……100%ない。


そう思いながらも、オレは緒方先生に自分の番号を教えた。

その後すぐに塔矢ん家に入っていった先生。

オレは取りあえず助手席に戻って……携帯を握り締めた。


かかってくるかな…?

こないよな…。

絶対にない。




でも…




もしかしたら…――







プルルルル





耳を疑った着信音。

目を疑った着信のマーク。

ドキドキしながら電話に出ると、期待通りの言葉を言ってくれた。

しかもすぐに玄関から出て来た緒方先生が、信じられない言葉を耳元で囁いて帰っていく――


「良かったな、進藤」

「え…?」

「アキラ君の腹の子、お前の子供みたいだぞ」







え…?







驚いてる暇もなく、先生が車を出した後――すぐに塔矢が玄関から出て来た。

「塔矢…」

「…進藤、キミ…早過ぎ…」

何も知らない彼女がオレを見た途端…驚いたように目を見開いた。

直ぐさまUターンして家の中に戻ろうとした塔矢の腕を――掴んだ。

「塔矢っ!待って!」

「………」

「緒方先生から……聞いたよ」

「……何を?」


本当かな…。

本当なのかな…?


「オレ…の…子供…なんだって…?」

「………」

「塔矢…、本当のこと…言って」

「………」


決して首を縦に振らない塔矢。

だけど…横にも振ってこない。

この沈黙は…本当だからか…?



「…塔矢…」

オレに背を向けたままの塔矢を、後ろから抱き締めた―。

少し体重をかけて…髪に唇を押し当ててキスをする―。

「…重い」

「塔矢…愛してる」

「離して…」

「やだ…。好きだよ塔矢…、大好き…」

「煩い…」

「オレの子供…産んでくれるんだ?」

「まだ11週目だ。いつでもおろせる…」

「嘘つき。産休届けまで出して…産む気満々なくせに」

「弱い男の子供なんて産みたくない…」

「オレが負けて清々しなかった?」

「全然。ずっとイライラしてた…。僕はこんなふざけた事をする奴に敵わないのか…って」

「…そっか。じゃあもうやめるな。もう負けないよ。絶対に」

「絶対?」

「うん、絶対」














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