●SAVING TABOO 6●



あの日からちょうど一ヶ月後――塔矢から電話があった。


呼び出された赤坂のホテルは、モダンであってクラシック。

エレガントだとかシックだとか、そういう言葉が似合う外資系ホテルだった。

つまり、塔矢にピッタリのホテルってことだ。

そんなどうでもいいことを考えながら、オレは20のボタンを押してエレベーターに乗り込んだ。




…わざわざこんな所にまで呼び出す程の話ってなんだろ…



ていうか何でホテルなんだろ。

部屋までとって…

そこまでして人に聞かれたくない話って一体…――










ピンポーン


チャイムを鳴らして待つこと10秒。

ゆっくりと開いたドアの先には――黒のワンピース姿の塔矢がいた。


「…やっぱり、ピッタリだ」

「え?」

「その服、このホテルのイメージにピッタリ」

「は?」

「や、こっちの話。で?話ってなに?」

「………入って」


すげー深刻そうな表情。

なに?

もしかしてあの夫と別れるとか、そういう相談か?



「…コーヒー飲む?」

「いいから、さっさと話せよ」

「……うん」


ソファーに腰掛けたオレ。

塔矢はどこに座るのかと思ったら――オレのすぐ隣に腰掛けてきた。


ととと塔矢?!



「病院に…行ってもらったんだ……あの人に」

「あの人って旦那?」

塔矢がコクンと頷いた。

「なに?やっぱり子供が出来ないのは旦那のせいだったって?」

「………」

「だから言ったろ?あんな夫とは別れろって」

「………」

「で?今日のは、どうやったら別れられるのか、とか。そういう相談か?」

「………違う」


既に半泣きの塔矢が……オレをゆっくりと見つめてきた。


「キミ…この前言ってたよね…?オレとすれば……って…」

「は…?」

「今日……僕…排卵日なんだ…」




は?




「え…、って…塔矢、それってもしかして…」

「うん…」

「いいの…か?それって浮気だぜ…?ていうか、浮気どころか…下手したら―――」

「あの人には、診断の結果はマル◎だったって…言ってある。今夜もするつもり…」

「でも不妊治療とか、よく知らねぇけど…今って結構発達してるんだろ?」

「駄目…なんだ。先天性の無精子症だから…精子自体が存在しないんだよ。確かに細胞を使って…の方法もあるけど、先生に可能性は1%以下って言われた。僕はそんな低い可能性にかけて、またこれから何ヶ月も…何年も治療するのは嫌だ」

「塔矢…」

「欲しいんだ…子供が。今すぐ…」

「………オレとの子供でいいのか?」

「キミがいいなら…」

「………」


そんなの、いいに…決まってる。

父親にはなれないかもしれないけど、塔矢との子供なんて……喉から手が出るほど欲しい――

浮気?

いや、これは人助けだろ。

困ってる塔矢を助けてあげるだけ。



そう自分に言い聞かせて―――オレは首を縦にふった。







「…いいよ」

















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