●SAVING TABOO 4●





あかりと結婚してからのこの6年――もちろん浮気なんてしてない。

だけど男が浮気をした後に家に帰る時の気持ちが…今日はなんだか分かった気がした。

妻に申し訳ないっていうか…

夢の世界から一気に現実に戻った感じ?


でももしオレが浮気をするとしたら、やっぱり塔矢とだと思う。

結婚する前も、した後も、ずっと好きだから――














「あ、ヒカルお帰り」

「……ただいま」

「すぐご飯の用意するね」

「……うん」


玄関まで出迎えに来てくれたあかりが、お気に入りのチェックのエプロンをして、意気揚々とキッチンに向かって行った。

着替えが終わってオレの方もダイニングに行くと、お得意のイタリアンがメインの夕食がキレイに盛り付けられて並んでいた。


「あれ?アイツらは?」

「も〜、今朝も言ったでしょ?おじいちゃん家に泊まりに行くって」

「あ…そうか。そうだったな…」


こんな日に限って子供たちはじいちゃん家にお泊まりらしい。

今夜はあかりと二人きり…か。

余計気まずいぜ…。



「美味しい?」

「…うん」


そういうと――あかりが眉を傾けてきた。


「ヒカル、今日元気ないね。どうかしたの?」

「え?いや…別に、普通だけど…」

「今日負けたの?塔矢さんとだったんでしょ?」

「へ?」


塔矢の名前を出されて、思わず変な声を出しちまった。

な…何でコイツ、オレの対局相手知ってるんだよ。

オレ…言ったかな?

言ったかも知れない。

それか週刊碁でも見たか?


「あー…ご名答。負けたよ」

「そう…残念だったね」

「……」

「今日帰ってくるの遅かったけど、検討でもしてたの?」

「うん…、タイトルのリーグ戦だから他の人も交えて検討するんだ。だから結構長引いちまった…」

「ふーん…」


オレが塔矢のことを好きだったことを知ってるコイツは、今きっと心穏やかじゃないんだろうな…。

男って馬鹿だから、きっとごまかすために…浮気した晩は妻に優しくしたり、…抱いたりするんだと思う。

案の定オレも、風呂から出た後――まだドライヤーで髪を乾かしてる途中のあかりを…後ろから抱きしめた――


「きゃ…っ」

「…あかり…」

「ヒカル…」


夫婦の営みなんて既に月イチか数ヶ月に一回にまで減っちまってるオレら。

今夜は子供たちがいないってことで…コイツも少しは期待してたのかも?

事実、オレの抱擁にすぐに応じてきたあかりは――自分からキスしてきた――



「…ん…っ――」



一分ぐらい深いキスを続けた後――あかりが嬉しそうに…顔を火照らせてくる。


「キスするの…一ヶ月ぶりだね」

「そうだっけ…」


ベッドに移動したオレらは、お互いのパジャマを脱がしあいながら…体を少し触りあった。


「あ…お腹のあたりはダメ」

「何で?」

「だって…最近太った気がするんだもん」

「そうか?」

「あっ…もぉー」


意地悪く腹を集中攻撃するオレを、あかりが形ばかりの抵抗をして――


「……ぁ……――」


そのままベッドに横になったオレらは、夫婦の営みをスタートさせる。


一ヶ月ぶり…か。

もうそんなに経ったんだな。

どんどん減ってくる回数を、コイツはどう思ってるんだろ。

夫婦なんてこんなもんって既に諦めてる?

結婚するまでは狂ったようにヤってたのになぁ…。




『私を塔矢さんだと思って抱いていいよ』




そう言ってくれたから…本当に遠慮なく…塔矢の代わりにした。

エッチ中の名前も『アキラ』って…呼ばしてもらった。

今思うと最低。


でも……仕方なかったんだ。

それぐらい余裕がなかった。

塔矢の結婚で……どん底まで落ちてたから――



――もちろん、今は違うぜ?

ちゃんと『あかり』を抱いてる。

妻、を抱いてる。



「……なぁ、三人目…作ってもいい?」

「え…?」


次は挿入、ってところであかりに聞いてみた。

作ってもいい?ってことは、生でしていい?中に出してもいい?ってことだ。

あかりの答えはもちろん――



「…いいよ」

















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