●SAVING TABOO 20●





「塔矢さんに会ったよ」

「……へ?」



地方の仕事から戻った夜――あかりが突然話し出した。

相変わらずコイツの口から塔矢の名前が出ると動揺してしまう。

ただの同僚、昔好きだった人、その関係を演じきる――



「塔矢さんの赤ちゃん、すごく可愛かったよ。ヒカルも見たことある?」

「あ…うん。産まれたばかりの時に緒方先生と見舞いに行ったから」

「ふーん」


あかりが子供のベビーベッドを覗いた。


「…私ね、この子と塔矢さんの赤ちゃんが上手くいったらいいのにって思っちゃった」

「は?」

「ヒカルが叶えられなかった夢をこの子が実現させたらな〜」

「何だよ…夢って?」

「塔矢さんとの結婚」

「……!」


夢…。

そうだな…夢だ。

夢だった。



――塔矢と結婚することが――



だからといって代わりに子供達が?

はは…すげぇ発想。

でも、ボツだな。

そんなのオレと塔矢が全力で阻止する。


オレらだけが知ってる禁忌だから――




「…バカ言ってんじゃねーよ。だいたい親がどうこう言う問題じゃないし。本人達の気持ちの問題だろ」

理屈っぽい一般論を言ってみた。


「それもそっか」

納得するあかり。


親はいつでも子供の幸せを願ってるものだ。

だから、本人達の気持ちを優先させてあげたいと思うのは普通。

恋愛も結婚も、学校も仕事も――やりたいようにすればいい。

だけど、これだけは絶対に譲れない。



『絶対に好きになるなよ…!』



そう念じながらオレもベビーベッドを覗いた―――

















「塔矢、昼メシ一緒に行かねぇ?」



――次の日

俺は昼休みに塔矢を昼食に誘ってみた。


「いいよ」


即答するコイツ。

昨日の今日だから、塔矢の方も何か話したいことがあるのかも?

近くのセルフカフェに入って、なるべく目立たない奥の隅の席に座った――



「…あのさ、あれからどう?オマエの子供…」

「ますますキミに似てきた」

ブハッと飲んでたアイスコーヒー思わずを吹き出しそうになってしまった。

「嘘だよ」

「はは…冗談きついって」

「でも…ね、昨日あかりさんに会ったんだけど、やっぱり雰囲気はどことなくキミらの子供に似てるなって思った」

「………そっか」


これは決して冗談じゃすまされない状況。

あかりと塔矢の旦那が疑ってないのが唯一の救いだけど…。


「もう会わせない方が…いいよね」

「オレもそう思う…」







そう思ったけど―――









「ヒカル、今日デパートで偶然塔矢さんに会ったよ♪メルアド交換しちゃった」


「今度一緒にショッピング行くんだ〜」


「クリスマスパーティーね、うちで一緒にしない?って話になったよ」



買い物だ、クリスマスだ、新年会だ、雛祭りだ、お花見だ、ドライブだ、キャンプだ、プールだ、誕生会だ―――


オレらの考えとは裏腹に、どんどん仲良し家族になってる進藤家と草薙家。


もちろん子供達もどんどん仲良くなっていって―――気がついたら遊びでキスとかする関係になっていた






………まずい………

















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