●SAVING TABOO 2●



「…何が原因だったんだ?」

「………」

「言ってみてよ。オレだって一応人の夫だしさ、旦那側の意見の参考になるかもよ?」

「いいんだ…。僕の方が悪いんだよ…。僕が子供を産まないから……」

「子供?」


あ、そっか。

塔矢んとこにはいなかったんだっけ。


「オマエは欲しくねーの?」

「欲しいよ。でも出来ないんだ…」

「は?それって…もしかして、出来ないことがオマエのせいになってんのか?」

「うん…」

「何だよ。それって夫婦二人の問題だろ?どっちが悪いって話じゃねーよ」

「でもね…世間一般では女のせいになるんだ…」

「………」


そう…なのか?

いや、絶対に違う。



「…病院には行った?」

「ああ…。僕に問題はないって言われた…」

「旦那の方は?」

「僕の夫はそこまで子作りに積極的じゃないから…。絶対に病院になんか来てくれないよ。仕事もあるしね…」

「なんだよ!それなのに子供が出来ないって怒ってるわけ?矛盾してんじゃん!」

「そうだね…」


塔矢が小さな溜め息を吐いて、鞄の中から手帳を取り出した。

パラっと捲って…日付を追ってる。


「今日排卵日なんだ。一応は頑張ってみるよ」

「一応…?」

「うん。もうずいぶん前から狙ってるけど……さっぱりだから」

「あのさぁ…、そんなに頑張ってるオマエに原因がないんだったら……どう考えても旦那の責任じゃん」

「たぶんね。だから僕…昨日ついに逆ギレして言っちゃったんだ。だから殴られた」

「何て言ったんだ?」

「…『煩い種無し!僕に子供が出来ないのはアナタのせいだ!』…って」

「ぅわお。でもいい気味。だいたい子供ごときで煩せーんだよ!塔矢を抱けるだけでも有難がれって感じだぜ!」






…オレだって抱いたことねぇのに…――










「もう離婚すれば?」

「それは出来ない。それにね、子供のこと以外では何も問題はないし…僕的には今の生活で満足してるんだ。普段はすごく優しい人だしね」

「でもオマエ、子供欲しいんだろ?」

「…うん」

「今の夫とこのままし続けてもさ、きっと一生出来ないぜ。20代で無理だったんだから、30代でなんか皆無に等しいって」

「そうだけど…」

「な、だから別れろって」

「………」



その時オレは何故か…塔矢に離婚を勧めまくった。

塔矢を殴った旦那が許せなかった。

つーか、塔矢が誰かの妻ってこと自体…我慢出来ないことだった。


コイツが結婚して7年。

見合い結婚のくせに。

愛なんかねぇくせに!


普通2年出来なかったら不妊って言われてるんだぜ?

7年なんて絶対そうじゃん!

それなのに自分は病院にも行かず、妻にだけあたるなんて間違ってる。

健気に排卵日を狙ってる塔矢が可哀想だ。

オレだったら…絶対塔矢にこんな思いさせないのに。



オレだったら…――










「……オマエ、何で見合いなんかしたんだよ…」

「え…?」

「オレと結婚すれば良かったのに…」



7年間――ずっと心の中にあったモヤモヤが口から出た。


塔矢がクスって笑ってくる。

「あかりさんと理想の家庭を築いてるキミの台詞とは思えないな」

「別に。オマエが他の男と結婚しちまったから…適当に近くにいた奴から選んだだけだし」

「それ…絶対に彼女の前で言うなよ」

「………」


マジな顔してオレに忠告してきた塔矢。

…んだよ。

アイツは…んなこと最初から知ってるし。

オマエの結婚に落ち込んでたオレに……あかりは声をかけてきたんだ。





『私じゃ塔矢さんの代わりにならない?』



…って。




馬鹿だよな。

代わりになんかなるはずねーのに。


だけどオレは……アイツの優しさに飛び付いた。

慰めてくれたアイツに――手を出した。


知ってる?

実はオレら…出来ちゃった結婚なんだぜ?


だから仕方なく…

半分ヤケで…

もうどうにでもなれって感じで……





「…オレが手伝ってやろうか?」

「…は?」

「オマエ…排卵日なんだろ?オレとすれば……妊娠するかもよ?」

「何を馬鹿なこと…」

「子供欲しいんだろ?」

「夫との子供がね」

「………」

「同情してくれてありがとう。でもこれは…僕ら夫婦の問題だから」

「………」



同情…?

んなもんじゃねーよ…。



オマエを夫から…取り返したかっただけだ…――














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