●SAVING TABOO 19●
息子が生まれて早4ヶ月。
ようやく外の陽射しが弱くなってきたので、最近は一緒に散歩に行くのが日課になっている。
ベビーカーに息子を乗せ、今日も出発した――
「今日は公園のあたりまで行ってみようか」
橋の向こうに見える大きな公園。
昼下がりの今頃はもちろん子供連れの親子で賑わっている。
「お友達がたくさんいるね」
といってもまだ喋れないし歩けない息子。
一緒に遊ぶのは到底無理な話だし、僕も友達を作るのは苦手な方。
遊具から少し離れた、木陰になったベンチに腰を下ろした。
―――そういえば
僕は重要なことを思い出した。
…この公園って、進藤の家の近くじゃなかったか…?
何年か前に、この住宅街の一角に家を建てたとか…彼が話してた気がする。
もちろん今日は地方で仕事の予定だから、会うことはまずないと思うけど。
でも……あかりさんとはもしかしたら―――
「あれ?塔矢さん?」
!!
聞き覚えのある可愛い声に恐る恐る振り返ると―――予想通りの人物が近付いてきた。
「わ〜、やっぱり塔矢さんだ」
「…こんにちは。藤崎さん」
「私のこと覚えててくれたんだ〜。嬉しいな♪」
当たり前。
進藤の奥さんだもん。
そして私が今一番謝らなくちゃいけない相手。
あかりさんの押してるベビーカーに自然と目が行く――
「可愛い…ね」
「今5ヶ月なんだ。塔矢さんの赤ちゃんは4ヶ月だったよね?」
「うん…」
男の子と女の子。
性別自体が違うから思いっきり似てるってことはないけど……それでもどことなく雰囲気は似てる気がする。
……どうしよう……
「塔矢さんも近くに住んでるの?」
「橋の向こうだから区も違うし、そんなに近くってことはないけど……歩いてはこれる距離かな」
「ふーん…残念」
「え?」
「だってせっかく同い年なんだから、小学校とか一緒だったらいいな〜って思って。でも区が違ったら無理だね…。というか、塔矢さんの子供なら私立に行くかな?」
「さぁ…どうだろ」
一瞬血の気が引いた気がした。
一緒の小学校だなんて……
でも…学校が例え違っても、これから先…こういう風にバッタリ会うこともあるかも…。
一緒に遊んだりするのかな…?
幼なじみみたいな関係になっちゃうのかな…。
――姉弟なのに――
進藤とあかりさんは幼なじみ同士の結婚。
もし子供達がそういうのに惹かれたら…――
「…そろそろ帰るね。夕飯の買い物にも行かなきゃいけないし…」
「え?きゃー!ホントだ!上の二人が帰ってくる時間だっ」
「じゃあ…またね」
「うん!今度またゆっくり話そうね!」
僕は早々と逃げるように立ち去った。
僕の中で……何かが危険信号を出してる。
やめておいた方がいい。
二人を…子供達を合わせない方がいい。
何となくそんな気がした―――
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