●SUMMER VACATION 9●





「あー気持ち良かったー。外国のバスタブって長くて広くて最高だよなー」



ご機嫌にバスルームから出てくると、先に入った塔矢が緊張な面持ちでこっちに顔を向けてきた。

そのバスローブ姿がものすごく色っぽくて、オレの下半身を熱くさせる。


「よいしょっと」

オレもベッドに腰掛けた。


「…一局打つか?」

「え?」

「どうせオマエのことだから、携帯碁ぐらい持ってきてるんだろ?」

「…でも最近誰とも対局してないんだ。不様な内容になるのが目に見えてるよ…」

「打ちたくない?じゃあエッチする?」

「なっ……」


たちまち茹蛸になる塔矢。


「キミがっ、緒方さんに帰ってくるなって言われたみたいだから泊まるのは許したけど、そんなことするだなんて一言も言ってないよっ」

「だよなー。オレ持ってきてないし出来ないよなー。な、こっちってどこに売ってるか知ってる?やっぱ薬局?サイズも外人サイズで超デカイのかなー」


オレが何の話をしてるのか分かったらしく、クッションを投げつけてきた。

また『ふざけるな』と言いたげな顔。


「もうキミなんて知らない!お休みっ!」

ガバッと勢いよくベッドの中に入ってしまった。


「…じゃ、オレも寝よ」

ゴソッ…とオレも中に入った。


いくらキングサイズのデカいベッドでも、大の大人が入れば例え端と端で寝ても間は僅か。

手を伸ばせば届く距離。

徐々に寄っていってみた――


「…塔矢…」


後ろから、包み込むようにお腹に手を回した――


「進藤…?」

「好きだ…」

「………」

「塔矢……好き」


向こうを向いていた彼女の体を転がし――天井に顔を向かせた。

上に跨がり……頬にキスをする――


「塔矢……ごめんな。オレ、オマエに酷いこと言った…」

「………」

「オマエが冗談で告るわけねぇのに…」

「………」

「ずっと後悔してた…」


泣き付くように上からぎゅっと抱きしめた――


「オマエがいないと…オレ…ダメだ」

「………」

「碁がつまんねぇし…張り合いがねぇし……何の為に打ってるのかさえ分からなくなってきて…」


これは本心だった。

ライバルを失って、オレはこれからどう神の一手を目指せばいいのか分からなくなっていた。

たぶん相手は緒方先生でも永夏でもダメだ。

塔矢でないと、塔矢がいないと―――



「……ん…っ――」


優しく…徐々に縋るように存在を確かめるように深くキスをした――

何も言わず、ただ…受け入れてくれている。

バスローブの紐を解いて直に体を触っても……


「…塔…矢…っ」

「――…ぁ…っ、…ぁ…あ…―」


一つになった体。

もう嘘か本当か分からない『好き』を、オレはずっと耳元で囁いていた―――















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