●SUMMER VACATION 14●






ホテルのコンシェルジュが紹介してくれて、予約もしてくれたこのレストラン。

落ち着いていて…男女が特別な日を一緒に祝うのにピッタリだった。


フォーマル以外はお断りの三ツ星。

周りはこの国の上流階級の人達ばかりで、オレが聞いても美しいって分かるような綺麗な英語が飛び交う―――






「…わ。このワイン美味しい」

「へー。オマエ、アルコール飲めるようになったんだ」

「カクテルの練習でたくさん飲まされたから…いつのまにかね。でも元々スチュワーデスにはソムリエールも多いよ。チーフもそうだし…」

「ふーん、そうなんだ」


オレがニコニコ塔矢の顔をずっと眺めてると、恥ずかしそうに俯いてしまった。


「そ…そんなに見るな」

「いいじゃん。見てみろよ、向こうのテーブル」

「え…?」


塔矢に教えた先にはずっと見つめ合っててラブラブなカップルがいた。


「男の方、絶対に今夜プロポーズするな」

「………」

「塔矢もしてほしい?」

「ば…っ、いいからっ、さっさと食べようっ!」

「あ…指輪がないからダメか。指輪、後からでもいい?」

「………」


フォークとナイフを持ったまま固まってる彼女の手に手を伸ばした。

そっと握って……両手で包む。


「相変わらず細い手…。爪…まだ擦り減ってるな」

「一人で棋譜並べはよくするから…」

「つまんなくない?」

「………」

「いい加減意地張るなよ。帰ったらいっぱい打とうぜ」


塔矢の綺麗な指に口付けして、薬指の付け根をなぞる――


「塔矢、ここ…オレ予約してもいい?」

「本気…?」

「ああ」

「………考えておく」

「明日、成田に着いたら告白の返事くれるんだろ?一緒にこの返事もくれよ」

「自信満々て顔してるな…」

「自信じゃなくて、欲しいのは確信と確証だけどな」



せっかくのモダン・ブリティッシュのフルコースなのに、明日の結果ばかりが気になって正直食事どころじゃなかった。

食べるなら塔矢の方がいい。

ついさっきまで抱いていたはずなのに、また彼女のドレスの下が気になりだして……

今度はどういう体位でしようかな…とか

また中出ししたら怒るかな…とか(怒られてもするけど)

もしまだ塔矢の中で迷いがあるなら、それを消し去るぐらいに満足させてやらないとな…とか

エロいことで頭がいっぱい。




「美味しかったね。イギリス料理はまずいなんて絶対嘘だと思った」

「はは…ホントにな」


レストランから出る時、さりげなく肩に手を回してみた。

少し体を強張らせながらもオレに体を預けてくれる。


タクシーでホテルに戻って、部屋に入った途端に―――後ろから抱きしめた



「脱がせるのが勿体ないな…このドレス」

「じゃあ…やめておく?」

「まさか」


うなじにキスをして―――ドレスの上から胸を揉んだ。


「………ぁ…」



これで最後なんてことには絶対にしたくない。


オレのことまだ好きなんだよな?

自惚れじゃないよな?

じゃあ帰って来てくれるよな?


なぁ…塔矢―――














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