●SUKI 2●


は?

塔矢今…何て言った…?

オレを好き…?


「え…?オレ…?」

塔矢がコクンと頷いた。


「え…あの…えっと…塔矢さん、オレ男なんですけど…?」

「知ってるよ…」

あ、そうですか。

そりゃそうだよな、知ってるよな。

じゃあ塔矢が実は…

「オマエ女だった…とか?」

「まさか…」

ですよねー…。

じゃあ塔矢は同性のオレを好きって言ってるのか?

あー、そりゃさっきから言うの渋る訳だ。

言えねーよな。


って、待て自分。

他人事じゃねーぞ?

塔矢はオレを好きって言ってんだ。

このオレを!

な、何て答えればいいんだ??

これって告白なのか?!

そうだよな?!

オレも好きか嫌いかで答えとくべきだよな?!

えーと

えーと

塔矢ね、塔矢…。

まぁ…嫌いではないかな。

言い方は色々ムカつくこともあるけど、総合的な人としては嫌いじゃない。

じゃあ好きかって聞かれるとそれも違うような…。


「えーと…ゴメン。何て答えたらいいのか分かんねぇ…」

塔矢の目が少し笑った。

「いいんだ…今言ったことは忘れてくれ…」

検討しようか、と碁盤を挟んでオレの前に座った。


忘れる?

忘れてしまっていいのか?

じゃあお言葉に甘えて忘れさせてもらうか…。



―て、忘れれる訳ねーよ!

一度意識したらそれがずっと頭の片隅に残る!


「はぁ…」

思わず溜め息が出てしまった。

せめてこいつが女だったらな…。

付き合うの考えてもいいんだけど…。

結構美人だし。

気が利くし。

頭いいし。

碁も強いし。

でも男じゃなぁ…。

それ以前の問題っていうか…。

たとえ付き合ってもいつかは終わりがくるだろ。

この日本じゃ…。

どこの国だったかな…。

同性婚出来るとこあったよな…。

オランダ?

ベルギー?

確かその辺…。

アメリカでも州によったら出来るって何かに書いてたっけ…。

でも子供は絶対無理だよなー。

そういう人達って一体どうしてんだろ?

作らねぇのかな…。

それとも誰かに協力してもらって、片方だけの子供を二人の子供だと思って育てるとかか?



―でも


たぶん塔矢はそんなとこまで考えてないし、望んでないと思う。

ただ単にオレが好きなんだと思う…。

友達として好きっていうんならオレも大歓迎なんだけどなー。

やっぱり…別の意味も含まれてるんだろうか…。

抱きたい…とか、抱かれたい…とか。

どっちなんだろ…。


「あー…あのさ、もし仮に付き合うとするだろ?」

一手目から並べていた塔矢の手が止まって、視線をオレの方に向けた。

「その場合ってー…男同士だと、エッチの時やっぱどっちかが女役する訳じゃん?」

「……」

一度元に戻っていた塔矢の顔がまた赤くなった。

「あ、ごめん。そこまで考えてなかった?」

「いや…」

ゴホンと咳払いして、また続けた。

「その…オマエはー…どっちがやりてぇの?」

うわ、何聞いてんだオレ!

そんなもん聞いてどうすんだよ!

「あ…―」

塔矢も困ったように顔をまた下に向けた。

「…えっと、…抱いて欲しい…かな」

ちょっと震えぎみの小さな声で答えてくれた。


あ、そうなんだ?

下でいいんだ。

下でいいんならちょっと考えてもいいかも。

一般知識としてオレも男の抱き方ぐらい知ってるし。

女とまぁ…たいして変わらない。

胸はないけど。

入れるとこも違うけど。

でも貞操を無くなせるって面では同じだ。

こんなものさっさと捨てちまいたい。

気持ち良さもたいして変わらないって言うし…。

何より男だと妊娠する可能性はまずない。

それってよく考えたら最高じゃん?


―でも


気持ちがなぁ…。


きっと塔矢も自分に気持ちの向かないやつに抱かれても嬉しくないよな…。

でもオレのこと好きって言ったよな?

好きなやつに抱かれるんだったら、たとえその相手が何とも思ってなくても嬉しいもんだったりするんじゃねーの?

違うか?


「あのさ…付き合うことは出来ねぇけど、一度ぐらいだったら抱いてやってもいいぜ?」

「え…」

塔矢の顔が固まった。

あー、やっぱそういうのは嫌だったかな?

こいつ真面目だもんなぁ…。

「まぁ…嫌なら別にいいんだけど」

「いや、そんな…それで十分だよ…」

マジ?

それでいいんだ?

こんな捨て駒のような扱いで。


「じゃあ…今夜社が寝ちまったら、オマエの部屋に行くから」

「…うん」

塔矢の顔がちょっと嬉しそうに真っ赤になってる。

オレの頬もつられて少し赤くなってしまった。



オレ…今夜塔矢を抱くんだ―。





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