●STAY NIGHT 3●
10時過ぎに対局を終えた後――進藤はお風呂を入りに浴室へ、僕は布団を敷きに客間に向かった。
いつもなら一つしか敷かないんだけど、今日は進藤と恋バナがしたいので二つ敷いてみたり。
「………」
何だか二つ並べてみると……夫婦の寝室みたいだな。
そう思うと一気に顔が真っ赤になった。
夫婦か〜。
いい響き♪
枕を抱き締めて布団の上でゴロゴロしてたら、お風呂から出てきた進藤がその様子を見て目を見開いた。
「あ、進藤」
「何で……二つ?」
あれ?少し頬を赤めてる?
「今夜はちょっと寝る前にキミに聞きたいことがあるんだ」
「へぇ…何だよ?」
「それはもっと遅い時間になってから。取りあえず僕もお風呂に入ってくるよ」
「う、うん…」
お風呂に浸かりながら、さっきの進藤の表情を思い出してみた。
赤くなっててすごく可愛かったな。
男の人に可愛いって言うのは褒め言葉じゃない気もするけど、実際彼は僕より断然可愛い顔をしてるからな。
目も大きいし。
「……ん?何か浮かんでる…?」
手に取ってみると金色の髪の毛だった。
途端にまた顔が真っ赤になる。
そ…そうか。
そうだよね。
進藤もさっきまでこのお湯に浸かってたんだもんね。
何か……急に恥ずかしくなってきた…。
まるで直接彼に肌を触られてるような…。
見られてるような…。
するとふと昨日、進藤と一緒にいた男の子達の会話を思い出してしまった。
『間違いとか起こんねぇわけ?』
『一つ屋根の下で寝てんだろ?』
『つか本当はもう一回ぐらいやっちゃってるんじゃねーの?』
ま、ま、間違い?!
やっちゃってる?!
今思うと何てことを言われてたんだ!
一体僕らを何だと思ってるんだ!
くそっ!
アイツらみてろよ!
今度手合いで当たったらコテンパンに……
「………」
……でも
別にそうなってもいいか…。
僕は進藤が好きだし、彼に抱かれるのは本望というやつだ。
でも進藤は……他に好きな子がいるんだよね…?
僕のことなんかただのライバルとしか思ってないんだよね…?
一つ屋根の下で寝てるのに何もしないのは……女として見られてないから…?
はぁ…。
何だか落ち込んできた…―
「進藤〜?」
「塔矢こっちー!」
お風呂から出て行くと、進藤は寝室…じゃなくて客間!ではなく居間にいた。
「ビール飲もうぜ♪」
「…僕も?」
「当たり前だろ。一人で飲んでも旨くねーし」
「仕方ないな…」
進藤に向かい合って座ると、早速グラスに注いでくれた。
だけど……
「もう!キミは下手だな!」
進藤から缶を奪って彼のグラスに注いだ。
「おー。綺麗な7:3。すげーな塔矢」
「伊達に何年もお酌係してないからね。新年会とか忘年会とか、門下で集まる度に僕はお酌に回らされてるんだ」
「へー」
じゃあ乾杯とグラスを合わせて飲み始めた。
「オマエって強いの?」
「さぁ?あんまり飲んだことないから分からない」
「でも飲めることは飲めるんだな」
「みたいだね。結構美味しいし」
進藤の方も美味しそうに一気飲みして、早から2杯目を注いでくれとせがんできた。
「もう空だ…」
「500mlじゃすぐなくなるよなー。塔矢もう一缶開けていい?」
「どうぞ?」
それから進藤は居間と冷蔵庫を一体何往復したんだろう。
何缶開けたんだろう。
僕の思考回路はだんだんおかしくなっていった気がした…――
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