●SUMMER VACATION 〜SOUL〜 7●
「あ…生理」
シドニーから帰国した翌日には、予定通り月のものがきた。
残念なようなホッとしたような…。
でも当然進藤は「あーあ」と、落胆の声を出していた。
「結構頑張ったのになー」
「こればかりは授かりものだからね。仕方ないよ」
「ちぇっ」
結局僕はちょうど学生の夏休みが終わるまで、今のCAの仕事を続けることになった。
日本にいる時はずっと進藤の部屋で過ごしている。
日中はひたすら打って、夜は恋人達がするようなことをして。
たまに昼夜逆転して、暑苦しい昼間に暑苦しいことをしたりする時もあるけど。
辞めることが決定し、棋士に戻ることも正式に決まったのに、相変わらず求めてくる彼に少し嬉しくなる。
これって本当の本当に本気ってことなの…かな。
キミの言葉、そろそろ本当に信じてもいいのかな…。
僕って疑いすぎ?
♪〜♪〜〜♪〜〜
「塔矢〜、携帯鳴ってる〜」
「分かった。すぐ行くよ」
昼食の支度を中断し、進藤のいるリビングに戻った。
「あれ?赤井川先輩だ。珍しいな…」
ピッと通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『塔矢さん?!』
「あ…はい」
先輩の声は何だかいつもと様子が違っていた。
「何かあったんですか?」
『どうもこうもないわよ!塔矢さん!!私にあの男の連絡先を教えなさい!!』
「え…?」
あの男って…誰?
とりあえず錯乱気味の先輩を落ち着かせて、詳しい話を聞いてみる。
「え?妊…娠…?」
『妊娠』という単語に、横にいた進藤がピクッと反応。
「本当に?……あ、はい。じゃあ私の方で何とかセッティング出来るよう聞いてみます。……はい。じゃあまた連絡します」
ピッ
携帯を切った後、進藤が僕を後ろから抱きしめてきた。
「誰?」
「同じCAの先輩。キミも会ったことあるよ。ほら、ロンドンで緒方さんと出かけてた人…」
「ああ、あのロングで長身美人のお姉さんな」
「…妊娠したんだって」
「…まさか緒方先生の子?」
「…みたい」
マジでー??と進藤が床にひっくり返った。
「緒方先生ずるすぎ!オレなんかこんなに頑張ってるのに出来ないのに!」
「でも緒方さん…何て言うかな。あの人結婚願望ないから…」
恐る恐る電話をかけてみた。
今日は家にいたのか、すぐに繋がる。
「あ、アキラです。こんにちは…」
『ああ、アキラ君か。何か用か?』
「あの………ロンドンの時の、赤井川先輩…覚えてますか?」
『?』
「ほら、緒方さんデートしてましたよね?ロングヘアーの僕の先輩と」
『ああ…そんなこともあったな』
そんなことも…あった?
その程度?
ものすごく言いづらい……
「塔矢塔矢、オレに電話代わって♪」
「え?でも…」
「いいから、いいから♪」
無理矢理進藤に電話を取られた。
「やっほー緒方先生♪」
『進藤か?まだアキラ君を監禁してるのか?』
「やだなぁ、人聞きの悪い。それよりセンセ、来年にはパパだそうですね!おめでとうございまーす!」
『…何の話だ?』
「言わなくても先生だったらもう薄々感づいてるでしょ?ついに年貢の納め時ですねー!」
『……アキラ君に代わってくれ』
緒方さん…どうするんだろう。
まさか先輩を見捨てたりしないよね…?
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