●SUMMER VACATION 〜SOUL〜 3●





「またのご搭乗をお待ちしております」



2時間40分のフライトはあっという間に終わり、仁川空港旅客ターミナルに到着した。

携帯の電源を入れた途端に届いた進藤からのメールには

『ホテルのロビーで待ち合わせな』

と書かれてあった。



「塔矢さんは、このまま明日シドニーに向かうんだっけ?」

「あ、はい」

「いいなー。私達は夜の便でとんぼ返りよ」

「お疲れ様です」

「お互いね。じゃあまた…」


他の大半のフライトメンバーと別れ、宿泊する市内のホテルへ向かった。


ロンドンでのホテルのことを思い出して、次第に胸が高鳴ってきてるのが分かる。

今夜もまた…進藤は僕の部屋に泊まるんだろうか。

抱かれるのかな…。

好きだから、もちろん嬉しい。

ソウルまで追っ掛けてきてくれたことも嬉しい。



この夢のような時間が一体いつまで続いてくれるんだろう…―――

















『チェックインお願いします』


60分後――ホテルに到着し、すぐさまフロントでチェックインにかかった。

チラッとロビーのラウンジを見ると、先に着いた進藤が永夏達と話している。

僕の視線に気付いた秀英が手を振ってくれた。

進藤は険しい顔のまま、永夏と話し続けている。

何を話してるのかなんて…考えるまでもないけど――






「なんで塔矢のこと教えてくれなかったんだよ!オレがアイツを探してたこと知ってただろ?」

『塔矢が隠したがってたみたいだから、教えなかった』

「……く」

『塔矢が辞めた原因は進藤なんだろ?恋愛沙汰だと聞いたが本当か?笑えるな』

「笑うなよ…こっちは必死なんだから」


「進藤、永夏。塔矢来たよ」

秀英の声で、二人が同時にこっちを向いた。


『塔矢、進藤に見つかったみたいだな』

『うん…』

『棋士に復帰するのか?』

『来シーズンからね』

『楽しみにしている』

『ありがとう』


「塔矢っ!」

進藤にぐいっと引っ張られ、永夏から離された。


「じゃあまたな!永夏、秀英」

『ああ』

「塔矢と仲良くね」


え…?


僕の手を掴んだまま、一直線にエレベーターを向かい始めた。


「進藤…永夏達と夕食食べに行くんじゃなかったのか?」

「そのつもりだったけど、やっぱやめた」

「……」

「今すっげームカついてるから、仲良くメシなんか食えるか」

「……」



エレベーターを下りて、連れていかれたのは彼の部屋。

少し乱暴にベッドに押し付けられる。


「痛っ……進ど――」


キスされて、強引に舌を捩込んできた。


「…ん…っ…ん――」


息が出来ないぐらいに激しいキス。

手首が彼の手で締め付けるように掴まれていて…かなり痛い。


「――んぁ…っ、はぁ…は…」

「塔矢…オマエはもうオレのものだからな…」

「……うん」

「逃げるなよ…。秘密もなしだからな。何でも一番にオレに話せよ」

「…嫉妬してるの?」

「ああ…すっげぇ悔しい。よりによって永夏なんかに…先越された」

「永夏だけじゃない…色んな人に見つかったよ。でも、キミ以外の人に見つかっても僕は何とも思わなかった。何を言われても棋士に復帰するつもりはなかったから」

「オレだけ特別?」

「特別というか…キミが原因だから」

「ああ…だからか。だから緒方さん…オマエを連れ戻せるのはオレしかいないって呟いてたのか」



キミに迎えにきて欲しかった。

この一年間…ずっと待ってた。


僕を見つけてくれるのを―――














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